米航空宇宙局(NASA)によって打ち上げられたハッブル宇宙望遠鏡が宇宙の観測を開始してから2019年で30年が経過しました。ハッブルによって撮影された画像に刺激を受けて壮大な宇宙の様子をモチーフにするアーティストは数多くいます。また、宇宙の研究者にとってもなくてはならない存在となりました。ハッブルの功績と今後を見ていきましょう。

1990年に打ち上げ、上空550キロに浮かぶ望遠鏡

ハッブル宇宙望遠鏡,仕事
(画像=Vadim Sadovski/Shutterstock.com)

ハッブル宇宙望遠鏡は1990年4月24日、スペースシャトル「ディスカバリー」によって宇宙へと打ち上げられました。翌日、ハッブルは宇宙空間へと投入され、広大な未知の世界の探求を開始します。ハッブルが浮かんでいるのは地上から約550キロの上空。時速2万7,300キロで移動しており、約95分ごとに地球を一周している計算になります。

ハッブルという名前は、著名な天文学者のエドウィン・ハッブル(1889~1953年)に由来します。銀河が地球から遠く離れるほど互いが遠ざかる速度も速くなるという法則を1929年に発表しました。この発見が、後のビッグバン理論のもととなりました。

大気の影響を受けず宇宙の観察が可能に

ハッブルが宇宙空間に浮かんでいる理由は大気による光のゆがみを逃れるためです。大気はまた、紫外線を吸収したりもします。このため、宇宙の様子をきちんと正確に観測するには大気の影響を受けない宇宙空間で行う必要があるのです。

ハッブルには反射望遠鏡が収められており、主鏡の直径は2.4メートル。広視野カメラ3(WFC3)や掃天観測用高性能カメラ(ACS)、宇宙望遠鏡撮像分光器(STIS)などの機器も搭載されており、これらを活用して観測データを収集したりさまざまな画像を撮影したりします。

ただ、打ち上げから順調に観測や撮影が行えたわけではありませんでした。打ち上げ後、主鏡にゆがみが生じていることが判明しました。対象物からの光を一点に集めることができず、観測物の周囲にぼんやりとした後光が現れてしまったそうです。

この不具合を修正するため、1993年にサービスミッションが行われました。スペースシャトル「エンデバー」でハッブルを訪れた宇宙飛行士がゆがんだ主鏡を補正するための装置を取り付け画質は改善。新しい太陽光パネルも設置するなどハッブル自体のバージョンアップも図られました。その後もハッブルには1997年、1999年、2002年、2009年と計5回にわたってサービスミッションが行われ、ハッブルの修理や、新しい機器の導入が行われました。

「暗黒エネルギー」の発見に貢献、彗星が木星に衝突する様子を撮影

30年にわたる観測のなかで、ハッブルは「暗黒エネルギー」の発見や宇宙の「年齢」についてのより正確な計算で重要な役割を果たしました。また、彗星が木星に衝突する様子をとらえるなど、これまで観測できなかった星々の活動の様子を地上に送り届けることに成功しています。

後継機ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は2021年に打ち上げを予定

宇宙に打ち上げられて30年が経過したハッブルですが、すでに後継機の準備が進められています。ハッブルの後継として開発が進められているのがジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で、2021年の打ち上げが予定されています。名前はNASAの長官を務めたジェイムズ・ウェッブにちなんでいます。

赤外線望遠鏡で主鏡の直径は6.5メートルとハッブルの2倍以上の大きさです。鏡は18個のセグメントに分かれており、とても軽量なベリリウム製。打ち上げ後、宇宙空間で展開して大きな一枚の鏡となるように調整されます。特徴的なのは5層の「日よけ」で太陽からの熱を大幅に抑制できるそうです。

ジェイムズ・ウェッブはハッブルよりも長い波長にも対応することができ、感度も大幅に向上しました。初期の宇宙で形成された最初の銀河などの観測も行えるのではないかと期待が寄せられています。

退役も視野に入ったハッブルですが、これからも宇宙の神秘を地上に送り続けてほしいものです。(提供:JPRIME


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