住宅ローンを組むときに迷うのが、変動金利と固定金利のどちらを選択するかだ。分譲マンションを買った人のうち「ローンあり」は68.1%(国土交通省「平成30年度住宅市場動向調査報告書」より)。回答があった人だけでみると、ほぼ8割の人が住宅ローンを利用していることになるわけだが、どの金利タイプが得なのか。

住宅ローンの金利には3つのタイプがある

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(画像=Tero Vesalainen/Shutterstock.com)

住宅ローンには「変動金利型」「固定期間選択型」「全期間固定金利型」の3つのタイプがある。

変動金利型……金利水準がもっとも低い

変動金利型というのは、市中の金利動向に応じて適用金利が変わる住宅ローンのこと。金利水準が3つの金利タイプのなかでももっとも低くなっているのが最大のメリットだ。

2019年10月の最優遇金利をみると、ネット銀行などでは0.4%台もあり、比較的高いところでも0.6%台のところが多い。この金利以下になる余地は小さいものの、それでも市中の借入後に金利が下がれば、適用金利も下がって返済負担がより軽くなる。

しかし、反対に借入後に金利が上がると適用金利も上昇、返済額が増えるリスクがあるというデメリットに留意しておく必要がある。金利が大幅に上がると5年後には最大25%まで返済額が増えることになるのだ。

固定期間選択型……特約期間が短いほど金利が低い

固定期間選択型というのは、2年、3年、5年、7年、10年などの特約期間中は金利が固定している住宅ローンのこと。特約期間後にはその時点の金利で再び固定期間選択型にするか、変動金利型に切り換えるかを選択する。

特約期間が短いほど金利が低く、2年固定、3年固定などは金融機関によって変動金利型並みに低い金利が設定されていて、0.4%台、0.5%台などがある。反対に10年固定は金融機関によって0.6%台から1.0%台などとやや高くなるが、長期間金利が固定されているため安心感がある。

つまり、固定期間の短いタイプは変動金利型並みの低金利で利用できるのが大きなメリットだが、そのぶん固定期間が短いので借入後の金利上昇による返済額が増額するリスクがある。一方、10年固定などの固定期間が長いタイプは長期間金利が固定されるメリットはあるもののやや金利が高くなる。

全期間固定金利型……変動金利型、固定期間選択型より金利が高い

全期間固定金利型というのは、完済時までの金利があらかじめ固定されているローンで、借入後に金利が上がっても、当初の金利が変わらないローンのこと。完済まで返済額が変わらないので安心して資金計画を立てることができる。

ただ、他の2つの金利タイプと比べてやや金利が高くなるのと、借入後に市中の金利が下がっても適用金利は下がらないといったデメリットがある。その場合、返済負担を軽くするためには、他の金融機関などに借り換える必要が出てくる。

この全期間固定金利型の金利は、返済期間が15年、20年などの比較的短い場合には金利1.0%以下もあるものの、多くは1.0%台前半だ。全期間固定金利型の代表格である住宅金融支援機構のフラット35の金利をみると、返済期間15年~20年で1.06%、21年~35年で1.11%となっている(2019年10月時点)。

住宅ローンの変動金利型は6割前後の人たちが利用している

この数年は6割ほどの人が変動金利型を選択し、次いで固定期間選択型、そして全期間固定金利型と続く(国土交通省「平成30年住宅市場動向調査報告書」より)。

変動金利型の利用者が多い理由としては、金利水準が低いからにほかならない。例えば3,000万円の借入額で、35年元利均等・ボーナス返済なしの条件で月々の返済額を比較すると以下の通りだ。

0.5%の変動金利型……7万7,875円
0.6%の固定期間選択型3年固定……7万9,208円
0.8%の固定期間選択型10年固定……8万1,918円
1.1%の全期間固定金利型……8万6,091円

変動金利型と全期間固定金利型を比べると月8,216円の違いがあり、年間にすれば10万円近い差が出る。これだけ違っていると変動金利型を利用したくなるのも当然だろう。

金利が上昇すると変動金利型のメリットが帳消しになる場合も

しかし変動金利型を利用していて、5年後に金利が上がった場合には関係は逆転することがある。

変動金利型の金利が5年後に上昇したときの返済額

下の図表にあるように、変動金利型の当初の返済額は7万7,875円だが、5年後に金利が0.5%上がったときには、8万3,912円に、1.0%上がったときには9万235円になる。

5年後の金利 6年目からの毎月返済額
0.5% 7万7,875円
0.6% 7万9,060円
0.7% 8万255円
0.8% 8万1,436円
0.9% 8万2,682円
1.0% 8万3,912円
1.1% 8万5,154円
1.2% 8万6,407円
1.3% 8万7,672円
1.4% 8万8,947円
1.5% 9万235円

※筆者作成

設定条件:借入額3,000万円、35年元利均等・ボーナス返済なし
当初の金利0.5%、毎月返済額7万7,875円

また、下のグラフでもわかるように、0.4%上がって0.9%になると、固定期間選択型の10年固定より返済額が増え、0.7%上がって1.2%になったときには、全期間固定金利型よりも返済額が多くなる。

5年後に変動金利型の金利が上がったときの返済額の他の金利タイプとの比較

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※筆者作成

収入や支払う期間によって住宅ローンのタイプを選択することが大事

いまは超低金利が続いており、日本銀行は当面現在の金融緩和策を継続する方針といわれている。そのため、住宅ローン金利もこの1年、2年などの範囲でみると、さほどの変化はなく、超低金利が継続されるものとみられる。

しかし、住宅ローンの返済は20年、30年の長期にわたる。その間には、0.5%や1.0%程度の上昇は避けられず、経済が好転すればそれ以上の上昇もありえる。そうなると変動金利型の優位は崩れてしまう。

中長期的な見通しからすればどの金利タイプがいいのか、また現在の年収と返済額との関係からどの金利タイプがいいのかなど考え方はいろいろだ。最後にどんな人にどの金利タイプが向いているのかを整理したので参考にしてもらいたい。

変動金利型に向いている人

・金利見通しに自信があって当面金利は上がらないと考える人
・返済にゆとりがあって金利が上がって多少返済額が増えても問題のない人
・金利動向に敏感に対応でき金利上昇時には固定金利型に借換えできる人
・繰り上げ返済で15年、20年程度に短縮できる人

全期間固定金利型に向いている人

・多少金利が高くなっても返済額が変わらないのが安心という人
・比較的年収が高く金利が若干高くても資金計画に無理がでない人
・比較的若くて最長返済期間を利用してじっくりと返済したいと考えている人
・いずれは住宅ローン金利が上昇すると考えている人

どちらともいえないという人は、変動金利型と全期間固定金利型の中間的な存在で、両者のいいとこどりともいえる固定期間選択型を選択するのが無難かもしれない。

文・山下和之(住宅ジャーナリスト)/MONEY TIMES

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