増税後の景気を見る上で消費関連統計への注目度は極めて高い。ここでは、公表の早い自動車販売と百貨店販売の結果を紹介する。

どちらも前年比での減少幅は縮小、前月比では増加という結果になったが、ともに10月の大幅な落ち込みに比べて反発が弱い印象を受ける。10月は駆け込み需要の反動減に加え、台風の影響で下押しされた部分が大きかったとの評価が多かったが、11月もあまり戻らないとなると話は難しくなる。11月の反発力の鈍さには、駆け込み需要の反動が残存していることの影響があると考えられるが、それ以外にも、増税による実質購買力の減少と節約志向の強まりによって、そもそもの消費レベルが下方シフトしてしまった可能性も否定できない。

財布事情
(画像=PIXTA)

自動車は前月比で増加も、戻りが弱い

19年11月の乗用車販売台数(普通・小型乗用車販売台数と軽乗用車販売台数の合計)は前年比▲11.6%となった。10 月の前年比▲25.1%から減少幅は縮小し、季節調整値(筆者試算)でも前月比+16.7%と増加している。もっとも、10月に前月比▲29.3%もの落ち込みをみせた後の戻りとしては物足りない。

前回10月分が急減した際には、10月は台風19号の影響で店舗休業等も多くあったことに加え、一部メーカーで生産・出荷を停止したことによって実力以上に大きく下振れているとの説明がなされることが多く、筆者も同様の見解を示していた。もっとも、仮に10月の落ち込みに台風要因が大きく影響したのであれば、それが解消された11月には明確なリバウンドが生じてもおかしくないはずである。だが11月の戻りは限定的なものにとどまっていることから考えて、10月の落ち込みは駆け込み需要の反動や台風による下押しだけでなく、そもそもの自動車購入意欲が弱まっていたことの影響も大きかったことが示唆される結果といえるだろう。

自動車と百貨店からみた増税後の個人消費
(画像=第一生命経済研究所)

なお、10、11月平均の乗用車販売台数の水準(季節調整値)は7-9月期を▲20.9%も下回っている。ちなみに14 年4-5月平均の水準は14年1-3月期対比▲15.7%であり、落ち込み幅は前回増税時よりも大きい。また、19年11月の水準は駆け込み需要発生前の19年4-6月期を▲11.8%下回っている。10-12月期の乗用車販売は大幅減が必至の情勢である。

1ヶ月前のレポートで筆者は「仮に台風要因が大きいのであれば、11月は水準を大きく戻すはずであり、その可能性も十分ある。だが、もし戻りが弱いようであれば、増税による悪影響が予想以上に大きいとの評価も出てくるだろう。」と述べた。まだ断言はできないが、後者のシナリオが徐々に現実味を帯びてきたように思える。

百貨店も戻りは限定的

百貨店売上も冴えない結果に終わった。12月2日に主要百貨店5社が11月の売上高(速報)を公表した。これを元に11月の全国百貨店売上高(既存店ベース)を試算すると前年比▲6.5%程度となる。10月の同▲17.5%から減少幅は縮小する形だが、まだ大きなマイナスとなっている。また、これに季節調整をかけたところ、11月の前月比は+8.0%となった。増加ではあるものの、10月の前月比▲31.2%からの戻りとしては弱いものにとどまる。10月は駆け込み需要の反動に加え、台風襲来に備えて多くの店舗が営業時間の短縮や臨時休業を行ったことで実力以上に下押しされていたため、11月にはある程度はっきりした反発が出るはずだったが、戻りは鈍い印象を受ける。駆け込みやその反動、台風といった特殊要因はさておき、そもそもの消費の基調が弱いのではとの懸念を強める結果といえるだろう。

なお、10、11月平均の水準(季節調整値)は7-9月期を▲16.9%下回っており、10-12月期の大幅減は確実な情勢である(7-9月期:前期比+6.6%)。ちなみに14年4-5月平均の水準は14年1-3月期を▲16.3%下回っていた。また、19年9月が前年比+23.1%、10月が▲17.5%、11月が▲6.5%(筆者予測)であるのに対し、14年3月が前年比+25.4%、4月が▲12.0%、5月が▲4.2%だった。今のところ、百貨店売上の反動減は前回増税時対比で同等もしくはやや大きめということになる。(提供:第一生命経済研究所

自動車と百貨店からみた増税後の個人消費
(画像=第一生命経済研究所)

第一生命経済研究所 調査研究本部 経済調査部
主席エコノミスト 新家 義貴