12月の短観が13日に発表される予定である。その結果は、12月18・19日の政策決定会合にも影響を及ぼす。今のところ、業況判断DIの悪化幅は、大企業・製造業で前回比▲1ポイント。非製造業で同▲5ポイントとなると予測する。果たして、12月会合における追加緩和の予想はどのように変わるだろうか。
反動減を織り込む
12月13日に短観が発表される。今回は、10月に消費税率が上がって初めての調査となり、反動減による業況悪化がどこまで進むのかが注目される。しかも、12月19日には政策決定会合を控えている。これまで、躊躇なく追加緩和を唱えてきた黒田総裁が、短観の結果を見て、決断するのかどうかも、短観次第となるだろう。
さて、その短観予想だが、大企業・製造業は業況判断DI が前回比で▲1ポイント悪化となるとみている(図表1、2、3)。ロイターやQUICKの月次調査では下げ止まりの兆しがある。大企業・非製造業のDI は、前回比▲5ポイントと悪化幅はより広がりそうだ。そして、先行きの予測は▲3ポイントと悪化を見込むだろう。
反動減と言えば、非製造業に集中するのだが、鉱工業生産の10月データを見る限り、製造業の生産活動にも大きく響いている。台風19号の被害という一時的要因がそこに加わっている。それでもIT関連の持ち直しが製造業のDI悪化をかなり減殺させるだろう。非製造業でも、増税要因だけでなく、訪日外国人が鈍化している変化もある。ラグビーワールドカップが終了して、韓国からの観光客の大幅減少をカバーできなくなっていることが、小売・飲食サービスなどの業況悪化につながる可能性はある。
今までよりも年度計画の変化に注目
業況の変化もさることながら、注目したいのは2019年度の売上・経常利益計画の修正状況である。事前に予想していた駆け込みと反動減であれば、年度を通じた売上計画の下方修正幅は大きくない。逆に事前予想を上回って売上減を見込むのであれば、下方修正幅は大きくなる。そこが見所である。
おそらく、経常利益計画の修正幅の方が大きくなると、増税のインパクトは後々尾を引くということになる。10月の増税に対して、値引きで応じた企業が増えると、経常利益へのダメージが大きくなる。売上減少を食い止めるために、値引きしたことが、かえって利益減少へと響くのである。
また、設備投資計画は、これまでの底堅さを確認する材料になる。筆者は、大きな変化を予想していないが、実際に企業が2019年度上期の決算を織り込んで大きく設備投資を削るかどうかには一応注意しておきたい(図表4)。
短観で追加緩和はあるか
12月19日の決定会合は、その直前にある短観を重視することだろう。黒田総裁は今まで増税インパクトは小さいと評価していた。一方、政府は景気下振れリスクを理由にして、経済対策を打ち出し、2019年度補正を上積みしている。短観の結果は、日銀だけでなく、政府の判断にも影響を与えることになる。すると、政府の対応に歩調を合わせる形で、日銀が追加緩和に動くこともあり得る。
筆者は、為替レートが厳しい円高になっておらず、FRBも利下げの打ち止めを表明するとみられる中では、日銀の追加緩和は見送られると考えている。これは、企業のマインドを大きく脅かす要因を、日銀が敢えて封じる必要性が今は乏しいとみているからだ。12月13日の短観は、そうした筆者の見方を覆すようなネガティブ・サプライズをもたらすのだろうか。
揺れる米中貿易協議の行方や日韓関係の悪化が実際に企業マインドにどのくらいのインパクトを与えているのかを確認することも、この12月の短観を通じてみてみたい。(提供:第一生命経済研究所)
第一生命経済研究所 調査研究本部 経済調査部 首席エコノミスト 熊野 英生