中小企業では、知財はまだまだ必要ないと思われる企業も多いだろう。しかしこれからの時代、知財は大いなるビジネスチャンスを秘めており、知らないことは大きな損失である。その点について、弁理士であり「貧乏モーツァルトと金持ちプッチーニ」「知財マネタイズ入門」(どちらもサンライズパブリッシングより出版)の著者・正林 真之氏に、知財の基本と心構えを伺った。
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99%の中小企業の現実
ーー まず正林さんは、中小企業のオーナー社長とは、普段どれくらい接点があるのでしょうか。
あると言えばある、ないと言えばないですね。たとえば、大企業のサラリーマンとは特許の関係で、知財部の人と話よく話をします。あとスタートアップの社長などは、これからやりたいこと、または目指すところがあるということで、話す機会がありますね。
しかし意外に中小企業の社長には、縁がないのですよ。なぜなら、上場企業というのはほとんど特許出願しています。していないのはその中の1%くらいですが、それでもいずれもれなく出願するでしょう。ところが中規模企業で構成されるマザーズ上場企業では、半分くらいが特許出願をしてないですよね。
更にいうと、2019年の時点で約360万社ある中小企業のうち、特許出願をまともにしているのは2万社、つまり1%以下なのです。だから仕事のうえでは、99%の中小企業の社長とは、基本的には縁がありません。もちろん経営者クラブなど、別の会合で会うことはありますが。仕事のつながりというより、そっちのほうが実際には多いですよね。
ご質問の趣旨は、そういった企業の方々から、知財経営などの相談をうけるかということでしょうが、ほとんどないですよ。そのような状況をなんとかしたいということで、2冊の本を書きました。
何のために知財権が必要か?
ーー99%の中小企業をなんとかしたいというお気持ちがあるとおっしゃいましたけど、どういった思いで、この2つの書籍の枠組みをたてられたのでしょうか?
2つあります。ひとつは、今言ったように99%の中小企業をなんとかしたい。知財というのは、勉強と同じなのです。
なんのために知財権を取るかというと、将来成功したときのリスクなのです。成功したときのリスクというのは、うまくいくとみんながあやかってきて、それがあっという間にコモディティ化して、競争力がなくなるということです。それを避けるために知財権を取るのです。