中小企業では、知財はまだまだ必要ないと思われる企業も多いだろう。しかしこれからの時代、知財は大いなるビジネスチャンスを秘めており、知らないことは大きな損失である。その点について、弁理士であり「貧乏モーツァルトと金持ちプッチーニ」「知財マネタイズ入門」(どちらもサンライズパブリッシングより出版)の著者・正林 真之氏に、知財の基本と心構えを伺った。
※画像をクリックするとAmazonに飛びます
成功しているプッチーニ型企業は?
ーープッチーニ側の企業で成功しているところはありますか。サントリーや日清などは著書に書かれていましたけれども、先生から見てうまくやっている企業とはどのようなところでしょうか?
日本で今それをやっているのは、半導体エネルギー研究所ですね。そこは昔で言うとエジソンみたいな会社です。社内で発明したのを特許化して、その特許から収益を得るだけで自分たちでは製品化はしないのですよ。要は、新たな発明をして特許を取り、それらの特許のライセンス料によって収益をあげているのです。
その方式は、エジソンとまったく同じ。エジソンは基本的に自分が発明して、特許を取ってライセンスしてお金を取って、自分の研究費にしていたのです。エジソンは電球を作ったけれど、エジソンが電球を量産したって話は聞かないでしょう? エジソンはただ発明しただけ。特許を取って誰かに渡していたのです。GEがエジソンの発明を製品化していた会社ですよね。
特許ビジネスというと嫌われる理由
ーーエジソンが特許ビジネスをしていたとは、心強いですね。
しかし特許を取って、誰かに渡して儲けるという話をすると、あんまりみんないい顔をしないですよね。エジソンのような、発明だけ先にして、企業からお金をせしめるというビジネスをしている連中のことを、「パテントトロール」と言いますが、「トロール」っていうのは「ならずもの」って意味です。それは産業の発達によくないっていうことで嫌われていますよね。
商標も同じで、商標で儲けようというやつは、商標トロールっていわれています。悪用したやつがいたのですよ。たとえばヨーロッパの各地を回って、これから日本に入りそうなブランドの名前の商標権を、その企業より先に取ってしまい、そのブランドが日本に入るためにみかじめ料を取るという。例えばブルガリなんかがそうです。ブルガリというブランド、今は有名ですが、50年前は日本国内では誰も知らなかったですよ。ルイ・ヴィトンは有名でしたけどね。ブルガリなんて、日本では全然有名じゃなかった。