令和元年となった2019年は「働き方改革」「老後2000万円問題」といったキーワードが世間を賑わせた。こうした単語が表現しているように現代では、働き方が多様化し、将来への不安も増しつつある。
こうした時代をサバイブしていくためには、自分という人間の持つ、能力や時間といった「資本」を最大限活用し、リターンを獲得していく投資家的な視点が不可欠だ。
この「投資家的な視点」について、9月に「投資家みたいに生きろ -将来の不安を打ち破る人生戦略-」(ダイヤモンド社)を上梓した、投資家・ファンドマネジャーの藤野英人氏に話を聞いた。第1回目は、現代の日本人の投資に対するスタンスと若者の考え方の変化について。
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金融マンは「タンス」に負けている
――藤野さんは、これまでの著書でも様々な形で投資への関心を持つように読者に促してきました。今年は、「老後2000万円問題」なども話題になりましたが、社会の投資に対する意識は高まっていると思いますか?
現在、ひふみ投信はアジアで最大規模の株式型投信になっているので、そうした点においては順調にやってきたと思っていました。
一方で、個人として社会的責任を果たしきれたかというと敗北感もあるんです。
最も敗北を感じているのは、本の出版や講演といった様々な活動をしてきたにもかかわらず、いまだに「タンス預金」が多いことです。第一生命経済研究所の調査によると、2年前までタンス預金は43兆円でした。
そのため、私はよく銀行マンや証券マンにハッパをかけてきたんです。「俺らは、タンスより信頼されてないぜ」と。私たちの最大のライバルは、銀行でも証券会社でも外資系金融機関でもない。タンスなのです。だから、金融マンによく「タンスを見て、お前には負けたくないと思うくらいじゃないとダメだぞ」なんていう話を半分冗談でしていました。
しかし、このタンス預金が2019年1月に、なんと50兆円になっていたのです。つまり7兆円も増えている。いまどき7兆円も増えることってありますか?それもタンスですよ!だから金融マンは、タンスに敗北し続けているという状態なのです。
タンスに預金していても何も価値を生み出しません。現状が、こうした状況だからこそ、私は「もっと挑戦する」「今のお金を動かして何かにチャレンジする」といったことに対して、前向きな人たちを増やさなければいけないという思いがあるのです。
これは自分だけの力ではできませんが、今50兆円あるタンス預金が、40兆円になり30兆円台になってきたら個人としても少しは成功したと思うことができます。今回の「投資家みたいに生きろ」という本も、そうした危機感が、執筆の一番の理由です。