2020年の新年に当たり「今年こそマイホームを」と考えている人もいるだろう。気になるのが2020年の住宅取得環境だ。2019年10月の消費増税による影響、2020年の供給動向、価格動向、そして住宅ローンの金利動向の4つの視点から住宅ジャーナリストが考察する。

住宅は消費増税後にむしろ買いやすくなっている

住宅ローン
(画像=FrankHH/Shutterstock.com)

2019年10月から消費税が10%に引き上げられた。住宅に関して言えば、土地は非課税だが、建物は課税対象だ。たとえば土地・建物2,000万円ずつの4,000万円の新築マンションなら、建物部分の2,000万円が課税対象になる。税率8%なら160万円の税負担、10%なら200万円になり、増税前に比べ40万円の負担増だ。

税負担だけを考えると住宅購入を躊躇してしまうかもしれないが、増税と同時に4つの住宅取得支援策が実施されていることを忘れてはいけない。

住宅取得支援策のひとつである住宅ローン減税が拡充されたことで、減税額が増え、この消費増税分を相殺できるようになっている。そのうえ、すまい給付金によって最大50万円の給付、次世代住宅ポイント制度によって新築は1戸当たり最大35万ポイントが付与される。さらに、両親などから贈与を受けられる場合、贈与税の非課税枠が拡大されている。

結果、増税後のほうが増税前よりも総負担額が軽減され、家が買いやすくなっていると言えるのだ。

新築マンションの発売戸数は前年並みか増加見込み

住宅の供給動向をみてみよう。新築マンションの2020年の供給戸数は、首都圏が前年比2.2%、近畿圏が1.2%の増加が見込まれる(※株式会社不動産経済研究所の2019年12月「不動産経済 マンションデータ・ニュース」より)。

首都圏では年初から大型の複合開発物件の供給が相次ぐが、夏にはスポーツイベントのためにモデルルームなどを休業しなければならないことも想定され、場合によっては前年並みに落ち着くこともありそうだ。

一方、供給が増加しているのが中古マンションだ。特に首都圏では年間の新築マンション販売戸数より、年間の中古マンション成約件数のほうが多くなっており、市場の主役は中古マンションになっている。

一戸建て市場は新築、中古ともに安定しており、2019年同様の安定した供給が続くことになりそうだ。

新築マンションの価格は高止まりの横ばいか

価格動向に関しては、特に首都圏の新築マンションがこの数年急速に上昇してきた。2019年にはそろそろ頭打ちかと思われたが、11月までの平均価格は6,006万円で、前年同期比2.3%のアップと依然として上昇が続いている(※株式会社不動産経済研究所の2019年12月「不動産経済 マンションデータ・ニュース」より)。

近畿圏は比較的安定していて、2019年1月~11月の平均価格は3,781万円で、前年同期比では1.6%の下落である。下落とはいえ、さほど大きな落ち込みではなく、横ばいと言っていいレベルであり、市場は安定していると言える。

土地の仕入れ値、建築費などは上昇が続いているが、特に首都圏ではいま以上に値上げすると、いよいよ買い手がついていけなくなるだろう。経費削減などの企業努力や、面積の縮小、仕様・設備の引き下げなどによって、2020年の価格は、2019年とさほど変わらないレベルで高止まりの横ばいになるのではないだろうか。

住宅ローン金利はやや上昇も低水準が続く可能性

最後に住宅ローンの金利はどうか。2019年末から世界的に長期金利にやや上昇傾向がみられるものの、日本銀行の大規模緩和策は継続される方向で、当面は低金利が続きそうだ。

変動金利型なら、ネット銀行で0.4%台から、大手都市銀行で0.6%台からで、長期の全期間固定金利型で1%台の前半といった水準で推移するとみられる。

かつての金利水準からみれば、まだまだ超低金利と言っていいレベルのため、住宅ローン面では買いやすい環境が続くはずだ。

2020年はマイホームを手に入れるチャンス

2020年は税制面で有利な環境にあり、価格は若干高めで推移するにしても、供給は前年並みかそれ以上に安定している。住宅ローン金利は低水準が続くため、2020年は総合的に判断しても買い時と言っていい好環境が続くだろう。

文・山下和之(住宅ジャーナリスト)/MONEY TIMES

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