住宅購入は総額で数千万円にのぼる人生最大の買い物だ。だからこそ家を買う際には、事前に必要資金をある程度見積もってから契約に臨みたい。では年収500万円の人はどのくらいの住宅ローンや資金が適正なのだろうか。物件価格以外の要素も含めて適正な借入額について検討してみよう。

住宅ローン以外に諸費用なども準備する

年収500万円,住宅ローン
(画像=Denphumi/Shutterstock.com)

物件価格以外に必ず必要なのが諸費用だ。諸費用には様々なお金が含まれるが、新築だと物件価格の3〜7%程度、中古だと物件価格の6〜10%程度となる。主にかかる諸費用には以下がある。

・登録免許税
・司法書士報酬
・不動産取得税
・固定資産税清算金
・住宅ローン手数料
・住宅ローン保証料
・適合証明手数料
・火災保険料
・地震保険料
・印紙税
・抵当権設定費用

例えば4,000万円の住宅を契約して5%の諸費用が増えると、それだけで200万円の追加資金が必要だ。

物件の購入費用に充当する資金として頭金を入れる人も多い。首都圏では物件価格に対して平均20%弱の自己資金を用意する人が多いという(株式会社リクルート住まいカンパニー『2018年首都圏新築マンション契約者動向調査』より)。

そのほかに新居への引越し費用も忘れてはならない。繁忙期にぶつかると料金が跳ね上がることもあるため、意識しておこう。

住宅ローンなど住宅購入資金に充てられる金額の目安

住宅は購入すれば終わりではなく、その後の返済が最も大切だ。貯蓄をすべて諸費用などに充ててしまうと、病気やケガ、リストラなどで一時的に収入が途絶えてしまった時に住宅ローンの返済に困る。住宅ローンの延滞率はフラット35で0.78%と決して高くはないが、有事に備えて、ある程度の資金は手元に残しておきたい(住宅金融支援機構『平成30年度リスク管理債権』より)。

実際に住宅購入資金として使えるお金は以下の金額だ。この資金から諸費用や頭金などの費用を捻出できることが理想だろう。

貯蓄額-緊急資金=住宅購入資金

緊急資金は生活費の3~6ヵ月分程度が目安となる。もちろん手元に置いておく資金が多ければ多いほど安心だ。

頭金を入れることで住宅ローン金利が優遇されることもある

住宅購入の際に頭金は必ず必要ではない。頭金を入れる目的は住宅ローンの返済負担を軽減することだからだ。無理のない返済額なら頭金は不要だが、住宅ローンの借入額が少なくなり総返済額を減らせるのはメリットである。

頭金を入れることで借入金利が優遇されることもある。代表例としてフラット35では1割超の頭金を入れた場合とそうでない場合では、0.26%の差がつくこともある(2019年11月時点)。100万円につき約5万円の差額となり、4,000万円借りればおよそ200万円の差だ。条件で優遇がある時はなるべく頭金を用意するほうがいいだろう。

年収500万円で借りられる住宅ローン金額は借入金利によって違う

年収ごとに借り入れできる住宅ローンの金額は金融機関により多少のばらつきがある。ただし「返済負担率」はある程度、共通している。返済負担率とは年収に占める住宅ローンの年間返済額の割合のことであり、一般的には35%以内が目安にされている。フラット35では年収400万円未満なら30%以下、年収400万円以上なら35%以下である。

借り入れできる住宅ローン金額は条件によって変わるが、固定金利1%、返済期間35年の場合、シミュレーションした結果は約5,100万円だ。借入可能額は金利で増減し、変動金利のように低金利の場合はさらに借り入れできる金額が増加する。変動金利0.6%として借りるなら、約5,500万円が上限になる。

選ぶ金利によって借入可能額が大きく変わるため、固定金利や変動金利、固定金利期間選択型など事前に住宅ローンの金利タイプを絞っておくと予算を決めやすくなるだろう。

年収500万円の人の適正な住宅ローン金額をシミュレーション

住宅ローンの借入可能額は金利以外に返済期間によっても決まる。返済期間が長いほど借り入れできる住宅ローン金額も多くなっていく。上記と同じく、固定金利1%の場合と変動金利0.6%の場合で返済期間ごとにどのくらい借入可能額が異なるのかシミュレーションしてみよう。

返済期間 年収500万円の借入可能額
金利1% 金利0.6%
35年 5,166万円 5,523万円
30年 4,534万円 4,803万円
25年 3,869万円 4,061万円
20年 3,171万円 3,297万円

(※住宅金融支援機構のシミュレーションツールより筆者作成)

同じ年収や金利でも返済期間が35年と20年では、住宅ローンの借入可能額に約2,000万円もの差が出る。いずれ住宅の購入を決めているのなら、なるべく早くから資金準備をして長い返済期間で借りることで購入できる住宅の幅も広がるだろう。

住宅ローンの返済負担率が25%を超えると返済不能の割合が高まる

適正な住宅ローンの金額として目安にしたいのは、返済負担率25%だ。一般的に住宅ローンの返済額が返済負担率25%以下に収まっていれば、家計への負担が少ないと言われている。返済負担率が25%を超えると返済不能になる人がそれ以下の人より2倍近くに上昇するという報告もある(三井住友トラスト基礎研究所『住宅購入価格は年収の「5倍」が一般的に』より)。

年収500万円の人の適正な住宅ローン返済額は月々8.6万円

住宅ローンの適正な返済額は返済負担率25%をもとにして考えれば、年収500万円の場合は約10万4,000円が無理のない返済額の目安だ。

年収500万円×25%÷12ヵ月=10万4,166円

この金額は住宅ローンの返済額しか考慮していない。実際に住宅を購入すると、その後も継続的にかかる費用がある。例えば、固定資産税や修繕積立金などだ。購入する住宅によって金額は異なるが、月換算で平均1万8,000円程度かかるとすれば、適正な返済額は約8万6,000円になる。

10万4,000円-1万8,000円=8万6,000円

住宅購入では、住宅価格だけに注目するのではなく、ランニングコストがどのくらいになるのかもしっかり把握することが重要だ。

年収500万円の人の適正な住宅ローン金額

仮に返済額は8万6,000円の場合、適正な借入額がいくらなのかもシミュレーションする。試算は固定金利1%と変動金利0.6%で行うものとする。

返済期間 年収500万円の適正な住宅ローン金額
金利1% 金利0.6%
35年 3,046万円 3,257万円
30年 2,673万円 2,832万円
25年 2,281万円 2,395万円
20年 1,869万円 1,944万円

(住宅金融支援機構のシミュレーションツールより筆者作成)

頭金や諸費用のことも考慮し、上記それぞれの金額以内に住宅ローンが収まっていれば基本的に返済は問題ないだろう。正確にはその時の借入条件をもとに適正な住宅ローン金額を計算してほしい。

住宅ローン控除は2020年末までに入居開始すれば適用される

消費税10%増税に伴って、政府は住宅ローン控除の期間を通常10年間から13年間までに延長した。住宅ローン控除期間の延長が適用されるためには、2020年12月31日までに入居を開始する必要がある。それ以降は通常の10年間が適用されてしまうので、今すぐに住宅を購入しようと考えている場合は、2020年末までに購入から入居までを済ませておくと良い。

住宅は金額が大きいので、たった2%でも数十万円以上の差になる。直近で住宅の購入予定があるなら意識しておいて損はないだろう。

文・國村功志(資産形成FP)/MONEY TIMES

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