百貨店やファッション業界ではいま「改革」が求められている。ECを含む多様な業態に対する対応力の強化や事業コストの抑制など、大胆な構造改革も必要となる問題だ。三越伊勢丹ホールディングスも例外ではない。このほど発表した「特別損失約67億円」はその状況を物語る。

第3四半期決算で特別損失約67億円を計上へ

三越伊勢丹,特別損失
(画像=TK Kurikawa/Shutterstock.com)

三越伊勢丹ホールディングスは2020年1月末に2020年3月期の第3四半期(2019年10〜12月)の連結決算を発表する予定だ。その発表に先立ち、年の瀬が迫った2019年12月23日、特別損失として約67億円を計上することを発表している。

この特別損失の計上は、同社が2017年度から2019年度までを実施期間として進めていた「ネクストキャリア制度」の拡充などによるものだ。ネクストキャリア制度の拡充は退職金を以前よりも積み増し、対象年齢も拡大するという取り組みである。

また報道発表では、2020年3月に新潟三越を閉店させることに伴い、希望退職支援制度を2019年度に実施したことも発表している。同社によると、今回の特別損失の約67億円の計上は、ネクストキャリア制度の拡充とこの新潟三越における退職支援制度の実施の両方によるものだという。

バブル入社組も対象のリストラ計画

三越伊勢丹ホールディングスの「リストラ計画」は2017年ごろから注目を集め始めた。同年11月に対象年齢を「48歳以上」まで引き下げたことでバブル期に入社した社員たちもリストラの対象となったことが話題となったのだ。

同社はバブル期に通常より多い人員を採用しており、このためにバブル入社組が社内で極端に多い状況となっていた。そのためリストラ計画によって社員の年齢構成を適正化するとともに、事業コストにおける人件費を抑制しようという狙いもあると考えられた。

報道によれば2017年にはネクストキャリア制度に180人弱の応募があり、3年間の退職者数の見込みとして「800〜1200人」という数字を掲げていることも明らかになっている。

改革が求められる中、「若返り」は重要なテーマ

百貨店業界やファッション業界はいま、これまでの販売形態にとらわれない新たな業態への挑戦などが求められている。インターネットの普及は消費者の購買行動を大きく変化させ、百貨店が確立してきた店頭販売・店頭PRの手法を強化するだけではもはや消費者の購買意欲を取り込みにくい。

そんな状況の中で企業の「若返り」は重要なテーマの1つとなる。デジタルネイティブ世代の社員の比率を増やしていくためには、必然的に年齢層の高い従業員を減らしていく必要もある。

三越伊勢丹ホールディングスの今後の事業計画を見るとやはり鍵を握るのは若い世代であると言える。同社はサイトやアプリ、ポイントサービスを強化し、2021年度には「デジタル会員300万人」を掲げている。

もちろん基幹店や地方店における店頭販売も引き続き重要で、訪日観光客が増える中でインバウンド対応に長けた人材の育成も求められる。

三越伊勢丹HD、新時代において盤石な体制を築けるか

三越伊勢丹ホールディングスの過去の業績は中期的に良いとも悪いとも断言しにくい状況が続いている。売上高は10年間で見れば横ばい、5年間で見れば微減傾向が続いているが、営業利益は2010年を起点にすれば大きく持ち直している。

組織の若返りは新たな挑戦だが、うまく進めば新時代において盤石な体制を築いていける。三越伊勢丹ホールディングスの今後の取り組みに引き続き注目だ。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)/MONEY TIMES

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