元テレ朝アナウンサーが教える「噛まないトークの下準備」

どんなに緊張してもうまく話せる!
(画像=DDRockstar/Adobe stock)

プレゼンをはじめとするビジネストークから愛の告白まで、話のなかの「ここぞ」という場面で噛んでしまい、あとで恥ずかしさに悶える人は数多くいます。噛むのを防ぐには滑舌をよくするのが一番ですが、どうすればいいのでしょうか。元テレ朝アナウンサー・渡辺由佳さんの著書から見てみましょう(参考文献:『どんなに緊張してもうまく話せる!』)

話すときに噛んでしまうのは、「緊張からくるストレス」のせいだと思っていませんか? じつは、そうではありません。「舌の筋肉が半分寝ている」ことが原因なのです。そこで話し出す前に、ウォーミングアップをして舌の筋肉を動かしましょう。そうすれば、噛まなくなります。

噛んでしまうのは「緊張」のせいではない

「舌の筋肉が半分寝ている」とは、どのような状態でしょうか? その説明の前に、一度、「東京特許許可局(とうきょうとっきょきょかきょく)」と口に出してみてください。

噛まずに言えましたか? 「東京特許許可局」と話そうとすると、あなたの脳から舌には、「『東京特許許可局』と話せ」という命令が届きます。そのとき舌のコンディションがうまく整っている状態であれば、命令どおりに発音できます。「東京特許許可局」を噛まずに言えたのだとしたら、それまでに話すことなどを通じて十分舌の筋肉を動かしていたからだといえます。

一方、しばらく話していないときの舌の筋肉は、温かく湿った口のなかで「気持ちいい」と、半分寝ている状態だとイメージしてください。そのため脳からいきなり早口言葉のような言いにくい言葉を発音するように命令が届いても、その命令どおりに発音できません。「とうきょうきょっきょ……」などと噛んだのだとしたら、それはあなたの「舌の筋肉が半分寝ている」せいなのです。

たとえるなら、寝ている舌の筋肉に命令を届けることは、ウォーミングアップしていない陸上選手に「いますぐ100メートルを走りなさい」と言っているようなものです。しかし、陸上選手が本番で速く走るためには、ウォーミングアップが必要になります。

それと同じように、しゃべりのプロであるアナウンサーでも、半分寝ている舌の筋肉に「そろそろ本番だから起きて」と知らせるためのウォーミングアップを行ないます。そうしなければ、舌をうまく動かせずに噛んでしまうこともあるからです。

たった1分間の練習で「実力以上の発音」ができる

舌の筋肉を起こすウォーミングアップは、話し出す前に「ラ行」の音を練習するだけです。ここで、「ラレリルレロラロ」を繰り返し30秒間言ってみてください。

舌の動きはどうなりましたか? 舌が上あごに触れては離れるのがわかったのではないでしょうか。

「ラ行」の音は日本語のなかでも、舌の筋肉を最も大きく動かす音です。ラ行の一音一音を発音しようとすると、舌が上アゴに触れ、弾きます。そのように舌の筋肉がよく動くため、ラ行の音を練習すると滑舌がよくなるのです。

プレゼンやスピーチ、面接などの本番5~15分前には、「ラレリルレロラロ」の音を30秒間、さらに「レロレロレロ」という音を30秒間、合計1分間の発音練習をしましょう。そうすれば、たった1分間の練習で自分の舌とは思えないくらい、なめらかに発音できるはずです。

その1分間で実力以上の動きをしてくれるのですから、舌の筋肉はトレーニングする価値のある筋肉なのです。

本番でしゃべる前には「あくび」がおすすめ

どんなに緊張してもうまく話せる!
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顔の筋肉が緊張したまま話そうとしても、口元がなめらかに動かず、なかなかうまく話せません。それは口の形をほとんど変えることができず、発音が悪くなるからです。そうならないためにも、本番前に「ラ行の発音練習」をして口元の緊張をほぐしましょう。

また、目元の強ばった表情筋を動かすためには、聞き手と目を合わせながら、笑顔をつくることです。本番中は、にこやかな表情を保ち、口元を動かすことも意識して話してください。そうすれば、緊張で強ばった顔の筋肉がほぐれて話しやすくなります。

緊張すると、「声がかすれてしまう」という人がいますが、それは緊張でのどが締まるためです。そんなときは、締まった部分をゆるめてあげましょう。そのために発音練習の前は首を回したり、肩を回したりしてください。そうすると、首と肩の無駄な力が抜けて、のどもゆるみ、よい声を出しやすくなります。

のどをゆるませる一番の方法は「あくび」です。あくびをするときのように、口を大きく開けて、息を思い切り吸いこんでみましょう。すると、のどに冷たい息が当たります。その冷たい息が当たったのどの位置が締まっているために声が出しにくいのです。

あくびをすれば、のどの入り口が一気に開きます。そして、のどに冷たい息が当たった瞬間、締まっていた部分はゆるみ、声を出しやすくなるのです。

電話応対の前に発音力を上げる

ラ行の発音練習は、スピーチや面接、発表会などの幅広い場面で活用できます。とくに、発音力を上げる必要がある「電話応対が多い人」にもおすすめです。

電話で聞きとりやすいかどうかは、「発音力」が決め手となります。うまく発音できず、聞きとってもらえなければ、言いたいことが相手に伝わりません。だからこそ、朝一番にウォーミングアップを行ない、電話応対での発音力を上げましょう。

それ以外の人でも、だれかと会う前にウォーミングアップしておけば、朝のあいさつをしたときなどに、声がはっきり出て好印象を持ってもらえるはずです。

人前で話す機会が多い人は、1日1分間の発音練習の習慣を身につけると、なにもしないときよりも、ずっとなめらかに発声できるようになります。噛まないようになれば、聞き手の耳に言いたいことをはっきりと届けられるのです。

(提供:日本実業出版社)

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