部下とコミュニケーションをとるべきだと思いますが、仲良し・友達関係になってはいけないと思います。線引きはどうすべきでしょうか?

何のためにコミュニケーションをとるのか

「仲良し・友達関係になってはいけない」という懸念は、部下とのコミュニケーションは「仲良くなるための要素」であって、「成果を出すための要素」としては重要ではないという考えから生まれているのでしょう。

職場におけるコミュニケーションの目的は、「部下との関係性を良好なものにすることで、部下に仕事を円滑に進めてもらって、成果を出してもらう」ことです。

「部下に好かれるため」でも、「単に楽しい職場にするため」でもありません。そこを履き違えると、「なあなあな関係」に堕落します。

私はさまざまな会社のコンサルティングに入るので、「上司に対する部下のフィードバックコメント」を拝見することがあります。

雰囲気が明るく、社員も上司もニコニコして働いているのに、業績が振るわない会社のフィードバックコメントには、次のような文言が並びます。

  • 優しさだけでは解決できない厳しい事業環境下にある。みんなが一丸となって成果をあげられるチームにするため、毅然たる行動指針の明示と、メンバーの状況に応じたさらなる育成を期待する
  • 能力があるのに実行しないメンバーには、ときには厳しく指導したり、アドバイスしたりといったアプローチがあってもいいのではないか
  • メンバーに遠慮せず、リードしてほしい

一方、同じように雰囲気が明るく活気にあふれ、さらに業績もよい会社のフィードバックコメントには、次の文言が目につきます。

  • 「成果をあげるためにやるべきこと」を共有しようと、具体的な話をしてくれる
  • 求める成果のために一緒に汗をかき、ともに行動してくれる中でのコミュニケーションには説得力があり、やる気が出る

「部下ととるべきコミュニケーション」とは?

前者はまさに「なあなあな関係」に堕落してしまっている会社。

後者はコミュニケーションが「成果を出すための要素」として円滑に機能している会社だといえます。

違いは、「何のためにコミュニケーションをとるのか」が明確なことです。

仕事では成果をあげることが求められます。ならばコミュニケーションも「成果をあげるため」に行われるべきです。

成果をあげるコミュニケーションとは、突き詰めれば次の3つに集約されます。

①うまくいっていない原因の確認と共有
②うまくいっている原因の確認と共有
③メンバーの背中を押す励まし

成果に直接結びつかないコミュニケーション(趣味の話題や家族の話など)は人間関係の土台を築くうえで大切ですが、こちらに偏りすぎてはいけません。

あなたは普段、どんなコミュニケーションを部下ととっていますか。自分のことは意外とわからないものです。時間をとって、じっくり振り返ってみてください。

1万人のリーダーが悩んでいること
浅井 浩一
1958年生まれ。大学卒業後、JT(日本たばこ産業)に就職。「勤務地域限定」の地方採用として入社。日本一小さな工場勤務での、きめ細かなコミュニケーションを通じた働きぶりを買われ、本社勤務に。職場再建のプロと称され、次々と任された組織を活性化させ、歴代最年少の支店長に大抜擢。2001年より自らも現場でマネジメントを行いながら、公益財団法人日本生産性本部・経営アカデミーなどのビジネススクールで多くの企業幹部、管理職、リーダーを指導。これまで指導してきたリーダーの数は1万人を超え、お互いを信頼し助け合える組織作りを信条とし、「意識と行動を変える超実践派」の第一人者として高い評価を得ている。著書に『はじめてリーダーになる君へ』(ダイヤモンド社)、『目標を「達成するリーダー」と「達成しないリーダー」の習慣』(明日香出版社)がある。

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