要旨
- 近年の消費行動で見られるモノの「所有から利用へ」という消費行動には、(1)モノを「買えなくなった」、(2)モノを「買わなくてもすむようになった」、(3)モノよりも「サービス(コト)を買うようになった」という3つの要素がある。
- モノを「買えなくなった」背景には若い世代の厳しい経済環境があげられる。非正規雇用者が増え、正規雇用者でも収入が伸びにくくなっている。また、少子高齢化による将来の社会保障不安もあるだろう。さらに、昨年は消費増税に加えて、「老後資金2千万円不足問題」が大きな話題となることで、生活防衛意識を高めた消費者が増えたのではないか。
- モノを「買わなくてもすむようになった」背景には、技術革新が進み、成熟した消費社会では安くて品質の高いモノがあふれ、お金を使わなくても消費生活が楽しめることがあげられる。所有欲が低下し、社会貢献意識が高まる中で、ミニマリストを良しとする風潮もある。さらに、サブスク等に見られる消費のデジタル化が拍車をかける。
- また、消費者が興味関心を持つ対象が変わり、お金の使い道が変わった。モノよりも通信サービスやレジャー、イベントなどの「サービス(コト)を買うようになった」。子育て世帯では子どもの教育関連サービスの人気も過熱気味だ。また、音楽CDなど、モノがデジタル化された結果、自ずとサービスを買うようになったという状況もある。
- 今後、「所有から利用へ」という流れは、2つ目や3つ目の要素によって加速するだろう。シニアのスマートフォン利用が増えることで、サブスク等の消費のデジタル化が幅広い層に広がっていく。また、日本では単身高齢世帯や共働き世帯が増え、生活上のちょっとした困りごとを解決するサービス需要も高まるだろう。
- 従来のモノづくり企業はどうすべきか。ヒントの1つに「モノ消費に見えてコト消費」という考え方をあげたい。今の消費者は所有することによるステイタスではなく、モノを使うコトで得られる経験に価値を置く。豊かな体験(コト)を得るために利用するモノという、いわば逆転とも言える発想の転換が必要な時代なのかもしれない。