つみたてNISAで買い付けた投資信託はどのタイミングで解約すればいいのだろうか。また解約する際に手数料の負担はあるのか。つみたてNISAで買い付けた投資信託の解約(売却)や口座の解約(廃止)について、手数料や解約するケースや注意点などを解説する。

つみたてNISA(積立NISA)の投資信託は解約(売却)時に手数料がかかることもある

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(画像=GOLFX/Shutterstock.com)

つみたてNISAの口座開設、維持、解約手数料は無料であり、つみたてNISAの対象商品である投資信託の購入時手数料も無料(ETFを除く)である。

つみたてNISAの手数料で気にしたいのは、投資信託の保有中に負担する「信託報酬」だ。投資信託によっては「信託財産留保額」という解約(売却)時に負担する手数料もあるので注意が必要である。

つみたてNISA(積立NISA)の投資信託は原則としていつでも解約(売却)できる

つみたてNISAで保有している投資信託の解約は原則としていつでも可能である。急に資金が必要になった時でも、つみたてNISAの投資信託を換金できる。ただし投資信託では、解約から入金まで少なくとも数日を要する。また投資信託の解約禁止期間とされる「クローズド期間」のある投資信託はすぐに解約できないことがある。

つみたてNISAで買い付けた投資信託は、その年に解約しても非課税枠を再利用することはできない。例えば、その年に30万円分の投資信託を買い付けて年末までにそれを解約したとする。その場合でも年内に利用できる非課税枠は年間上限40万円からその30万円を引いた残り10万円であり、解約しても残りの非課税枠は変わらない。

つみたてNISAの口座解約(廃止)を申請するには、つみたてNISAの積立購入の設定をクリアして、保有している投資信託を特定・一般口座へ払い出すか全て解約すれば可能だ。

つみたてNISA(積立NISA)の投資信託を解約(売却)するための手数料と期間

投資信託を解約する際には、手数料として「信託財産留保額」を負担する銘柄がある。投資信託の運用会社は、投資信託の解約に対して保有資産の株式や債権などを売却して換金し、投資家へ支払っている。その際の手数料などの費用負担分が信託財産留保額である。信託財産留保額の負担があるかは投資信託により異なるため、投資信託の購入前に「投資信託説明書」などで確認しておきたい。

投資信託の解約を申込んでから入金されるまでは期間を要する。その期間は銘柄によって異なるが、通常は解約申込日の3営業日以降に入金される。投資信託によってはこれより日数を要することがある。解約申込から入金までの正確な日数を知りたいときは「投資信託説明書」などで確認しておくといいだろう。

つみたてNISA(積立NISA)の投資信託の解約(売却)や口座の解約(廃止)では税金の負担はない

投資信託の解約時に買い付け時より基準価額が上昇していれば売却益を得ることになる。つみたてNISAの非課税枠で買い付けた投資信託は売却益を得ても非課税だ。

一方、投資信託の解約により損失が出ても、損益通算や損失の繰越控除はできない。損益通算とは特定・一般口座で得た利益との相殺であり、損益の繰越控除とは特定・一般口座で可能な最長3年間の損失繰越による控除のことだ。つみたてNISAは非課税というメリットを得る代わりに、損益通算や損失の繰越控除ができないデメリットがある。

つみたてNISAの口座の解約(廃止)の際に利益が出ることはないため、税金の負担はない。

つみたてNISA(積立NISA)の投資信託を解約(売却)する5つのケースを考える

つみたてNISAで保有している投資信託を解約するのはどんなときか。5つのケースを紹介しよう。

投資信託を解約するケース1……積立金の支払いが困難な場合は積立金減額を検討

家計が苦しいなどの理由で積立金の支払いが困難になった場合、つみたてNISAで保有する投資信託の解約を考えるかもしれない。しかし投資信託の全てや大部分を解約すると、つみたてNISAの長期投資が終わってしまう。

つみたてNISAの積立金を支払うのが困難な場合には、投資信託の解約の前に積立金額を減らすかゼロにすることを検討したい。そうすれば新たな買付は減るかなくなりはするが、長期投資は継続される。

投資信託を解約するケース2……資金が必要な場合は時期が分かっていれば計画的に

まとまった資金が必要になった場合には、つみたてNISAで買い付けた投資信託を解約して資金をつくることができる。

もし資金が必要になるタイミングが事前に分かっていれば、準備して解約を進められる。例えば、子供の大学進学資金などは用意する時期が事前に分かる。投資信託の解約の時期を相場が上昇したタイミングにするなど、計画して行えるのだ。

投資信託を解約するケース3……利益の確定をいつ行うかの判断は難しい

つみたてNISAの投資期間は最大20年だが、基準価額は投資信託を購入してから20年後に最も高くなるとは限らない。基準価額がある程度上昇したら利益を確定するために解約してもいいだろう。

解約するタイミングの判断は各自が行うが、いつ解約するかを決めるのは難しいものである。基準価額がもう上がらないと思っても、さらに上昇することもある。解約するタイミングを決めるには、例えば元本の2倍など、自分なりの基準を決めて行うことが必要だ。

投資信託を解約するケース4……保有する投資信託の成績が良くない

保有する投資信託の運用成績が良くない場合には解約を検討するかもしれない。その場合には主に2つの原因が考えられる。

・資産クラスの相場が下落傾向である
相場が下落傾向であっても積立投資では相場の値動きに翻弄されないことが望ましい。積立投資では、相場が下落すれば投資信託を安く購入できるチャンスになる。どうしても相場の下落が気になるのであれば投資信託の一部の解約を考えてもいいが、長期的な視点で判断を行いたい。

・投資信託の運用成績が指標(インデックス)より劣っている
投資信託の運用成績が指標より劣っている場合には、同じ資産クラスで類似の投資信託のうち、運用成績が指標に劣らない銘柄への変更を検討すべきであろう。今まで積立購入してきた投資信託の解約は、投資信託の変更後に運用成績などを確認して判断したい。

投資信託を解約するケース5……投資信託の純資産総額が減少し続けている

投資信託の純資産総額が減少し続けている場合には、投資家による解約が続いている可能性がある。純資産総額が少なくなると投資信託の運用に支障が出ることや、場合によっては運用が途中で終了される「繰上償還」のリスクがある。純資産総額が中長期で減少し続けているならば、別の投資信託への変更を検討すべきだ。

変更する投資信託は同じ資産クラスで類似の投資信託から選び、つみたてNISAの積立設定を変更する。今まで積立購入してきた投資信託の解約については、運用成績や「投資信託説明書」に純資産総額に関する繰上償還の条件があるか、などを確認して判断したい。

つみたてNISA(積立NISA)の投資信託を解約(売却)する前に考えたい3つのこと

つみたてNISAは長期投資を支援する制度であり、相場の短期下落などで簡単に解約を考えることなく長期視点での投資を考えたい。解約する前に考えたい3つのことを紹介しよう。

投資信託を解約する前に考えたいこと1……解約の時間分散による下振れリスク低減

投資信託の解約は、時間分散することで相場の下振れリスクの低減を期待できる。

つみたてNISAの買い付けが積立購入により時間分散になっているのと同様に、解約の時期を複数回に分けて行うことで時間分散になる。相場が上昇したタイミングを見計らい、複数回に分けて換金しておくとリスク分散になるだろう。

投資信託を解約する前に考えたいこと2……投資信託の変更

投資信託の運用成績が指標に比べて良くない場合や純資産総額が減り続けている場合などは、投資信託を解約する前に投資信託の変更を考えたい。

変更する候補としては、同じ資産クラスで類似の投資信託のうち、運用成績が指標に劣らずに純資産総額が増加傾向の銘柄を絞り込んで検討する。今まで購入してきた投資信託の解約は、積立購入する投資信託を変更してから検討すればいいだろう。

投資信託を解約する前に考えたいこと3……金融機関の変更

上述した「投資信託を解約する前に考えたいこと2」にて、利用している金融機関が取り扱う投資信託に良い商品がない場合には金融機関の変更を考えたい。

金融機関を変更しても、前の金融機関のつみたてNISAで買い付けた投資信託は、最長20年間は保有し続けられる。

なお、つみたてNISAの買い付けをその年に既に行っていれば、変更後の金融期間でつみたてNISAの買い付けができるのは翌年からになるため注意したい。

つみたてNISA(積立NISA)の口座の解約(廃止)の手続き

つみたてNISAを全く利用しないのであれば、金融機関に「非課税口座廃止届出書」を提出することで解約ができる。

ネット証券では、つみたてNISAの口座を解約するにはコールセンターへ連絡し、説明を受けた後に必要書類を送付してもらう。対面系証券や銀行では、取扱店やコールセンターへ連絡して手続きの指示を仰ぐのが一般的だ。

つみたてNISAの口座の具体的な解約手続きは、各金融機関のホームページなどを参照したい。

つみたてNISA(積立NISA)の口座を解約(廃止)するときの注意点

つみたてNISAの口座を一旦解約しても、再び口座を開設することが可能だ。ただし、つみたてNISAで買い付けした年に口座を解約すると、再び口座を開設できるのは最短で翌年からである。

また、つみたてNISAの口座を廃止すると、金融機関から「非課税口座廃止通知書」が交付される。口座の再開時には「非課税口座廃止通知書」が必要なため、きちんと保管しておきたい。

つみたてNISA(積立NISA)の投資信託の解約(売却)や口座の解約(廃止)は計画的に行う

つみたてNISAは長期投資を支援する制度である。投資信託を解約すると、その分のつみたてNISA非課税枠の利用は終了してしまう。仮に投資信託の解約後に基準価額が上昇し続ければ、上昇分の非課税メリットを活かせなくなる。

投資信託やつみたてNISAの口座は、相場に翻弄されるなどによる思いつきで解約するのではなく、長期視点でしっかりと検討して計画的に行いたい。

松本雄一(ビジネス・金融アドバイザー)/MONEY TIMES

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