先週、グローバルで大きく話題をさらった事項の一つが「中国による使い捨てプラスティックの禁止」である。かつて中国は世界中からプラスティックを含む産業廃棄物を購入し、それを原料として(再)利用・加工するというビジネスを行なってきたのだった。それが一昨年(2018年)に輸入を禁止したのだった。そうした最中で中国が次なるプランとしてプラスティック禁止措置を取り始めたのである。  

中国,プラスティック
(画像=Teerasak Ladnongkhun/Shutterstock.com)

グローバルではマイクロ・プラスティックが取り沙汰されてきた訳であって、その文脈において一国が動いたという程度に過ぎないようにも見える。しかし世界第二位の経済規模を誇る中国が後5年で使い捨てプラスティックの30パーセントを削減すると言っているのである。これが大きな話であることは言うまでもない。そもそもこれの代替として何を用いるのかも大きなテーマであると言える。そこで本稿は中国におけるプラスティック規制について何が起きているのか、そして今後どうなるのかを考えることとする。

去る2018年1月に禁止するまで中国は世界で流通する廃プラスティックの7割を取引する有数のプラスティック輸入国であった。下掲する図表1のように世界各国から廃プラスティックを輸入してきたのであり、特に我が国や米国、更にはドイツや英国から多く輸入してきたのだった。

(図表1 プラスティック輸入禁止以前における中国のプラスティック輸入状況)

プラスティック輸入禁止以前における中国のプラスティック輸入状況
(出典:Science)

それが急遽輸入禁止となったのであった。その上、今年になって使い捨てプラスティックの使用が禁止されたのであった。どのような措置を取ることになったのか。公開情報を基にまとめるならばこうなる:

●環境に悪影響を与え得るプラスティックの生産及び使用に対して今後5年間で禁止または厳重な制限を掛ける。具体的には、2025年までに4つの措置を取る:(1)プラスティック排気量をコントロールし、(2)主要都市での廃棄物における廃プラスティックの量を大きく削減する。そして(3)完全なプラスティック管理システムを確立し、(4)代替物の開発を推進する
●使い捨てプラスティック製のテーブルウェアやプラスティック製の綿棒の生産と販売が今年末までに禁止される。マイクロビーズを含んだ日用化学製品においては生産が今年中に禁止になる一方で販売は来る2022年までに停止することとなっている
●また薄いビニール袋やポリエチレン製の農業用フィルムの生産と利用も医療廃棄物におけるプラスティック製品の生産やプラスティック廃棄物の輸入も禁止することとなっている
●次の5年間における使い捨てプラスティックや生分解性の無いプラスティック、梱包の使用量を減らすための段階的なタイムラインはこうなる:
―たとえば生分解性の無い使い捨てプラスティック・ストローは今年末までに禁止となる一方で生分解性の無い使い捨てテーブルウェアは都市部におけるフォーマルな食事処から禁止となり、2022年末までに全国規模にまで拡大させる
―2025年末までにテイクアウト用途の生分解性の無い使い捨てテーブルウェアは都市部での使用量を30パーセント削減するべきとされている。更にあらゆるホテルやゲストハウスは同年末までにあらゆる使い捨てプラスティック製のウェアの利用を禁止すべきとされている一方で郵便や宅急便サーヴィスにおける使い捨てプラスティック製の包装やプラスティック製のテープなどの利用を控えていくべきだとしている
●他方で非プラスティック製品や生分解性のある買い物バッグといった代替製品の利用やリサイクルやプラスティック廃棄物の投棄を削減する努力をすべきである

段階的な措置が取られているとはいえ、中国という巨大マーケットが動く以上、相当な努力が必要なことは言うまでもない。他方で、では代替製品として一体何が存在するのか。

容易に想定出来るのは紙袋である。バイオプラスティックと競合するためひとえにそうなるとは言い難いものの、少なくともこの1-2年の間ではグローバルで紙袋マーケットは成長を続けている。しかし競合商品が存在すること、何よりも紙自体、リサイクルが当然視されているとはいえ、熱帯雨林といった森林の伐採を伴うことから、廃プラスティックの削減が目的の一つとしているSDGsの実現という意味では、紙製品への移行は全くもって本末転倒であると言わざるを得ないのだ。実際、中国における古紙輸入量は2018年ベースで減少しているのである。

他方でバイオプラスティックは大きくそのマーケット規模を拡大させていくと言われているのである。実際、2017年から2022年までの5年間でマーケット規模が1.5倍にまでなるという。我が国ではバイオプラスティック製造に強みをもつ企業が多い。新たな中国マーケット開拓になるのか。またバイオプラスティックを製造するためにコーンなどの作物需要が徐々に転換していくことも忘れてはならない。

株式会社原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)
元キャリア外交官である原田武夫が2007年に設立登記(本社:東京・丸の内)。グローバル・マクロ(国際的な資金循環)と地政学リスクの分析をベースとした予測分析シナリオを定量分析と定性分析による独自の手法で作成・公表している。それに基づく調査分析レポートはトムソン・ロイターで配信され、国内外の有力機関投資家等から定評を得ている。「パックス・ジャポニカ」の実現を掲げた独立系シンクタンクとしての活動の他、国内外有力企業に対する経営コンサルティングや社会貢献活動にも積極的に取り組んでいる。

大和田克 (おおわだ・すぐる)
株式会社原田武夫国際戦略情報研究所グローバル・インテリジェンス・ユニット リサーチャー。2014年早稲田大学基幹理工学研究科数学応用数理専攻修士課程修了。同年4月に2017年3月まで株式会社みずほフィナンシャルグループにて勤務。同期間中、みずほ第一フィナンシャルテクノロジーに出向。2017年より現職。