要旨
- 2019年の経済成長率は実質で前年比6.1%増と前年の同6.7%増を0.6ポイント下回り、2年連続の減速となった。リーマンショック後の中国経済は、大型景気対策の効果で10年には前年比10.6%増まで回復したものの、そこで抱えた過剰設備・債務が足かせとなり、回復は長続きしなくなってきた。需要別に見ると最終消費の寄与が57.8%で最大だった(下左図)。
- 個人消費の代表的な指標である小売売上高の動きを見ると、19年は前年比8.0%増の約41兆元で、日本円に換算すると約650兆円(1元=15.8円)だった。18年の同9.0%増を1.0ポイント下回った。19年はネットセールとその前の買い控えや反動減などで乱高下したものの、基本的には緩やかな減速傾向を示している。
- 投資の代表的な指標である固定資産投資の動きを見ると、19年は前年比5.4%増の約55兆元で、日本円に換算すると約870兆円だった。18年の同5.9%増を0.5ポイント下回った。19年は製造業の投資が前年比3.1%増と18年の同9.5%増を大幅に下回ることとなったが、10月をボトムに、11月は同5.2%増、12月は同7.6%増と2ヵ月連続で持ち直してきた。
- 他方、消費・投資と並ぶ第3の柱である輸出を見ると、19年は前年比0.5%増の約2.5兆ドルとなり、18年の同9.9%増から大幅に伸びが鈍化した。19年は±0%を挟んで一進一退を繰り返していたが、12月には前年比7.0%増と持ち直し、輸出の先行指標となる新規輸出受注指数も19ヵ月ぶりに拡張・収縮の境界(50%)を上回った。
- 今後の注目点としては、ITサイクル持ち直しで注目される「インターネット+先進製造業」の行方、米中貿易協議で第一段階合意に至った「中国による輸入拡大」の影響、今秋開催の5中全会に向けて議論が進む「第14次5ヵ年計画の具体的な内容(成長率目標の水準、財政・金融政策の方向性など)」、武漢で発生した「新型ウイルス肺炎の影響」を挙げた(下右図)。