「やる気のない部下を、どうマネジメントすればいい?」
「どうすれば、従業員が生き生きと働ける職場になるだろう?」

そんな悩みを抱く経営者や管理職は後を絶たない。

今回は、ハーバード・ビジネス・レビューに掲載され、世界的に注目を集めたモチベーション理論に関する研究を紹介する。

モチベーションを制する者はビジネスを制する。モチベーションを正しく管理し、部下や従業員を導くことができれば、事業は大きく成長するだろう。

ケーススタディ(2)――仕事に満足・不満足をもたらすもの

成功心理学 #2
(画像=rudall30/shutterstock.com,ZUU online)

人材コンサルティング会社で働く及川圭佑(37)は、都内のコワーキングスペースを訪れた。今日会う顧客は、及川と同年代の若手起業家・相澤だ。会議室に入ると、相澤は朗らかな笑顔で出迎えてくれた。

「及川さん、お待ちしてましたよ」

3回目の打ち合わせということもあり、雑談を交わしてから仕事の話に入る。相澤は新卒で入った会社を5年で辞め、IT事業を立ち上げて成功した。現在も売り上げは伸び続けており、人材採用に注力したいという想いから、及川を頼ってくれた。

同年代ということもあり、及川はなんとか相澤の力になりたいと意気込んでいた。最近の採用市場の動向について、分析資料をもとに詳しく説明する。しかし途中で、相澤の表情がどこか曇っていることに気づいた。

及川が突然言葉を途切らせたので、相澤は不思議そうな視線を及川に向けてきた。ためらった後、及川は相澤に直接聞いてみることにする。

「……相澤さん、何かあったんですか?」

相澤は驚いたような表情になったあと、苦笑して首を左右に振った。

「そんな顔に出てましたか。いや、及川さんが鋭いんでしょうね、きっと」

成功心理学 #2
(画像=Salivanchuk Semen/Shutterstock.com)

相澤は観念した様子で、及川に打ち明け話をしてくれた。

現在、相澤はリモートワーカーを含め50人近いスタッフを束ねている。しかし、その中でも実力者であった2人が、数日前に突然辞めてしまったという。

「うちは成果給を導入しています。実力も実績も十分な2人には、売り上げのうちかなりの額を渡していました。正直、何が不満だったのか……」

相澤は及川に気を遣ってか笑みを絶やさないが、相当まいっている様子がうかがえた。おそらく、抜けた2人の穴埋めにも追われているのだろう。

「相澤さん、従業員のモチベーションに関して、1つ興味深い研究があるんです。それは、満足と不満足にはそれぞれ別の要因があるという研究です」

及川の言葉に、相澤は興味を持ったようだった。及川は、満足と不満足の要因について、相澤にクイズを出した。

あなたならどちらを選ぶ?

(1)「人間関係」「給与」が満足の要因となり、「責任」「承認」が不満足の要因となる。
(2)「達成」「責任」が満足の要因となり、「給与」「監督」が不満足の要因となる。

相乗効果で成長していける職場と不満が渦巻く職場、何が違う?

相澤は迷った挙句、(1)を選んだ。

「給与が上がれば従業員はうれしいはずだし、責任を好む従業員はいないと思う。選ぶなら(1)かな……」

及川はほほ笑んで首を振った。