日本人の平均貯金額を調べると平均値と一緒に「中央値」という単語を見かけますが、普段あまり使うことがないため、中央値の意味や、なぜ中央値が平均値とは別に表示されているのかわからないという人も多いのではないでしょうか。実は貯金額や収入などお金の分野では、平均値より中央値の方が実態を表していることも多いのです。今回はその理由と日本人のリアルな貯蓄額をご紹介します。
中央値が貯蓄額の実態に近い理由
中央値ってなに?平均値との違いは?
中央値とは、あるデータを小さい順から並べた時、中央にある値のことです。ただし、データが偶数個ある場合は中央にある値は2つになるため、中央値はその平均になります。平均値はみなさんご存知の通り、データをすべて足してデータ数で割ると求めることができます。
例えば、次のような6人の身長の平均値と中央値はいくらになるでしょうか。
{141cm、155cm、158cm、162cm、163cm、175cm}
答えは、
平均値=(141cm+155cm+158cm+162cm+163cm+175cm)÷6=159cm
中央値=(158cm+162cm)÷2=160cm
です。
お金の分野で中央値が使われる理由
年収が次のような8人のグループを考えてみましょう。
{300万円、400万円、400万円、500万円、500万円、500万円、600万円、800万円}
このグループの年収の平均値は500万円、中央値も500万円です。
同じグループに、今は無職で収入が0円の人と、サッカーのスーパースターで年収が20億円の人の2人を加えて10人のグループにします。
{0円、300万円、400万円、400万円、500万円、500万円、500万円、600万円、800万円、20億円}
新しい10人のグループの年収の中央値は500万円のままですが、平均値は2億400万円になります。
年収が極端に低い人と極端に高い人2人を加えたところ、残り8人の年収は変わっていないのに平均年収は2億を超えてしまいました。しかし、この10人の平均年収が2億超と言われても実態を表していると感じる人はいないのではないでしょうか。
身長のように、どんなに大きくても240cmまででほぼ同じ範囲の中でおさまるデータであれば、平均値はとても役に立つのですが、お金の分野のように文字通り桁違いのデータが入ると、一部の富裕層に平均値が引っ張られて実態とかけ離れてしまうことがよくあります。
上の例のような誤解を避けるためにも、「普通の人の収入」の目安として中央値が使われるのです。
20代から60代までのリアルな貯蓄額は?
単身者の貯蓄額
では、ここからは金融広報中央委員会発表の「家計の金融行動に関する世論調査」から各年代のリアルな貯蓄額を見ていきましょう。まずは独身の方の貯蓄額です。
表1. 年代別金融資産保有額(単身世帯)
年代 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60代 |
---|---|---|---|---|---|
平均値 | 106万円 | 359万円 | 564万円 | 926万円 | 1,335万円 |
中央値 | 5万円 | 77万円 | 50万円 | 54万円 | 300万円 |
独身の間は貯蓄をするモチベーションが上がらないのか、20代から50代までの貯蓄額の中央値は100万円に届いていないという結果でした。しかし、貯蓄の平均値は年代が上がるごとに増えています。これは、一般的な人は貯蓄がないにもかかわらず、貯蓄をする少数の人は貯蓄額を大きく伸ばしているということです。
既婚者の貯蓄額
次に、既婚者の方の貯蓄額です。
表2. 年代別金融資産保有額(二人以上世帯)
年代 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60代 |
---|---|---|---|---|---|
平均値 | 165万円 | 529万円 | 694万円 | 1,194万円 | 1,635万円 |
中央値 | 71万円 | 240万円 | 365万円 | 600万円 | 650万円 |
二人以上の世帯ということで、共働きの家庭は収入が2人分あり、単純に独身者の方と比較はできないのですが、それでも世帯を持つと貯蓄の額が大幅に増えていることがわかります。独身者の方に比べて平均値と中央値の差が少ないことにも注目してください。既婚者では少数が飛び抜けて貯蓄するのではなく、みんながそれなりに貯蓄をする傾向があることがわかります。
なにが貯蓄に含まれるのか?
貯金と貯蓄を同じ意味で使っている方も多いと思いますが、貯金は単純にみなさんが想像する銀行の預金やゆうちょ銀行などの貯金であるのに対し、ここでいう貯蓄はそのほかの株や投資信託、財形貯蓄などを含めた「金融資産」の意味で使われています。
具体的に貯蓄に含まれるものには、(a)預貯金、(b)金銭信託、(c)生保・損保の積立型保険商品、(d)個人年金保険、(e)株式・債券、(f)投資信託(MRF、MMR、REITなどを含む)、(g)財形貯蓄、(h)その他の金融商品(金貯蓄口座、金派生商品など)などがあります。
「貯金」が全然ないと思っている人でも、保険に加入していたり財形貯蓄をしていたりと、「貯蓄」ならある人もいるでしょう。一度、自分がどれだけ金融商品を持っているかチェックしてから、上で紹介した統計値と比べてみましょう。
周りの貯蓄額を参考に自分のペースで貯蓄を増やそう
日本人の貯蓄額の平均は1,000万円を超えているなどのニュースが流れ、「自分はそんなにない」と不安を感じていた人もいるかもしれませんが、お金の分野で「普通の人」の目安を知りたいのなら平均値より中央値をみた方が実態に近い金額がわかります。今回紹介した統計値を参考に、周りより貯蓄額が少ない人は頑張って、多い人も油断せず、自分のペースで貯蓄を増やしていきましょう。
文・松岡紀史(ファイナンシャル・プランナー、ライツワードFP事務所)/fuelle
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