「Lead the self」――自分自身を導こう
金融、物流、マーケティング、さらには教育と、まったく異なる分野でキャリアを重ね、グロービス経営大学院客員教授として教壇にも立つ伊藤羊一氏。著書『1分で話せ』は35万部のベストセラーになった。そんな伊藤氏は、モヤモヤを抱えているビジネスパーソンは、まず過去の人生を振り返ることが大切だと話す。
※本稿は、伊藤羊一著『やりたいことなんて、なくていい。』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
未来に悩む前に「過去の自分」を振り返ってみよ
キャリアを築く上で大事なことは、自分の中にある信念や、譲れない想いは何かを知る、ということです。
私も最初は仕事力はボロボロでしたし、失敗したことも迷ったことも苦しんだこともいっぱいありました。「人生をかけてこれをやり遂げる!」という唯一無二の何かがあったわけでもありません。
でも、何かたしかな軸を自分の中に見出せば、大丈夫。
そしてそれは、目の前のことを一生懸命やっていれば必ず見えてくる。
それが私の一番言いたいことなのかもしれません。
一言で表すとすれば、「Lead the self =自分自身を導くこと」。
私が尊敬する野田智義氏が、『リーダーシップの旅』(金井壽宏氏との共著、光文社新書)の中でおっしゃっている言葉です。
自分を知り、自分を目覚めさせて解放させ、自分をリードしよう─―これに尽きます。
そして、自分をリードしたその先に、他人をリードするリーダーシップがついてくるのです。
考えてみてください。「自分は全然やる気がないけど、上がやれって言うからやるんだよ」なんていうリーダーがいたら、誰もついていこうとは思わないですよね。
「Lead the self」は、現在私がYahoo!アカデミアで行っているリーダー育成プログラムの根本にある考え方でもあります。
過去の経験を通じて、自分の譲れない想いを知る
20代後半から30代前半を中心として、「自分はこのままでいいのだろうか?」と悩んでいるビジネスパーソンは多いと思います。
今の仕事にやりがいが感じられないけれど、続けていっていいのだろうか。
なかなか仕事の成果が出ない。どうすればいいだろうか。
一応うまくいっているけれど、この状況に安穏としているのは正しいのか……。
そんなモヤモヤした危機感とも不安ともつかないものを抱きながら、しかしどうしたらいいのかわからない。
そういう「モヤモヤしている人」を対象に、「Lead the self」、自分をリードするきっかけを提供していきたいと考え、私は活動しています。
では、自分をリードするというのはどういうことか。
まず大切なのは、「自分の譲れない想い(信念)」とは何かを知る、ということです。
そして、自分の譲れない想いは、過去の人生の経験によって生まれている。
ということは、過去の人生を振り返ることによって、「なぜ自分はそういう想いを持っているんだっけ?」という理由をより深く知ることができます。
だから私は、自分の過去を振り返り、現在の譲れない想いを知ることを、「Lead the self」の最初のステップとしています。
私の場合でいうと、メンタル不調で苦しんでいた20代から今に至るまで、ビジネスパーソンとして別人かと思うほどに変わった、という経験をしています。
そのビフォー・アフターは、相当すごい落差があるのではないかと思います。
だから私には、譲れない想い=信念として「人は変われる」という想いがある。
「俺だって変われたんだから、大丈夫」「あなたも変われる。人は皆変われるはずだ」という信念があるわけです。
これまで歩んできた人生は人それぞれですから、持っている信念も人それぞれです。
「正しさ」や「フェアネス」が大事だという人もいるでしょう。「誠意」が大事だという人もいるでしょう。
持っている信念は人それぞれですが、その自分が大事にする信念に従って仕事をすることができれば幸福だし、120%の力を発揮することができるはずです。
だから、自分の信念に基づいた仕事こそが、自分を最大限リードし、活かす道であるはずです。それは、最高に幸せな働き方でもあります。
だから、まずは自分の譲れない想い=信念を知るということが大切なのです。