今後の経営を考える上で、重要なキーワードになるであろう「オープネス」。経営者はオープネスをどのように企業経営に取り入れていくべきだろうか。前回に引き続き、北野唯我氏に話を聞いた。
「オープネス」の高さには企業によって様々な形がある
――著書の中では、日本において「オープネスが高い」企業として、リクルート、ファーストリテイリング(ユニクロ)、ソフトバンクといった企業の名前が挙がっています。
名前の挙がった3社の中でも、それぞれの「オープネス」には違いがあると思います。
たとえばリクルートホールディングスは、おそらくほぼすべての項目において、開放性が高い会社でしょう。同社で使われている「Will Can Must」というフレームワークに代表されるように、非常に高い自己開示性が求められる文化もあります。
一方で、ソフトバンクはトップである孫さんが、SNS上でコミニュケーションしていることなどに代表されるように、非常に経営開放性が高い会社だと言えるでしょう。また、ファーストリテイリングは人事評価や人事制度がグローバルでフラットであるという点において情報開放性が高いと言えます。
――ひと言で「オープネス」と言っても、構成する3つの要素のどれが高いのかは企業によって異なるということですね。一方で、多くの日本企業は「オープネス」が低いという指摘もありましたが、それは日本の雇用形態などが影響しているのでしょうか。
影響はあると思いますね。歴史的な背景を見ても、いわゆる村社会的な閉鎖社会だった部分があります。
もうひとつガバナンスの観点から見ると、資本市場からのプレッシャーがあまり強くなかったという部分も大きいと思います。経営に対する株主からの「情報を公開しろ」というプレッシャーもそれほど強くなかったため、クローズドでも許されていたという背景はあるでしょう。
――経営者はどのように「オープネス」を高めていくべきでしょうか。
オープネスは高すぎても、それほど意味はありません。
たとえば、「情報開放性を高めよう」という文脈で、「全員の給料を公開します」と言われたら、さすがに抵抗がありますよね。「会議室を全部ガラス張りにしましょう」と急に言われても、それが良いのか悪いのか判断しづらい部分があると思います。
一方で、自分が中途入社組だったとして、過去自分と同じ部署の人が使った資料や提案書がすべて検索できるようになったという話であれば、素直にありがたいと思うでしょう。
つまり、「オープネスは重要である」と言っても、やりすぎは問題なわけです。日本のこれまでのカルチャーともマッチしない部分も多いでしょう。現状よりは、高めたほうがいいとは思いますが、必ずしもすべてをオープンにする必要はないと思います。
本音はコミュニケーションの中で引き出す
――オープネスの裏付けになっているのは、オープンワーク社のクチコミデータです。現状でも企業はアンケートなど様々な形で従業員の声を吸い上げようとしていますが、こうした施策との違いはあるのでしょうか?
大前提として、人間はあまり本音を言いません。特に日本人は本音を言わない。