資本金、従業員数、売上高‥企業を評価する際には、様々な指標がある。これらに加えて、現在新たな指標として注目を集めているのが「オープネス」だ。これは、社員のクチコミデータによって「職場の空気」を数値化したものだという。
昨年、「OPENNESS 職場の『空気』が結果を決める」を上梓し、「オープネス」と業績の関係や、組織改善の在り方を解き明かした北野唯我氏に話を聞いた。
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財務・経営にインパクトを与える「開放性」
―まず「オープネス」とは、どのような概念なのか教えてください。
「オープネス」は一言で言うと、長期、短期共に財務、経営にインパクトのある開放性だと考えています。そして、今回の本の中では、「オープネス」を構成する具体的な3つの要素として経営開放性、情報開放性、自己開示性を挙げています。
身近な視点でいうと、「この職場は空気が重いな、意見しにくいな」「逆にここは雰囲気がいいな、意見しやすいな」といったことは誰しもが、感じたことがあると思います。
こうした人間の心理や感情は、周囲の環境に大きく作用されますが、その環境、雰囲気を規定しているのが、「経営開放性」「情報開放性」「自己開示性」の3つであるという整理が、わかりやすいでしょう。
――今後、企業を評価していく上で、「オープネス」が重要な指標であると考えるのは何故でしょうか。
この本の冒頭にも書いたのですが、私はずっと「株価当てゲーム」というものをしていました。これは、企業情報から、その企業の上場時の時価総額を当てるというゲームです。
このゲームをする際に私は財務情報に加えて、その企業の社長のインタビュー記事や動画、さらにオープンワーク株式会社が提供している企業のクチコミのデータベースを見ながら予測を立てていました。すると、これが結構な割合で当たるのです。そして、このゲームをする際に私が必ずチェックしていたのが、「職場の環境データ」でした。
当然のことですが、株価というのは、「これからその企業がどれだけ伸びていくか」という予測に基づいて決まります。株価を決める要因には、ビジネスモデルや事業ドメインなど様々な要素がありますが、「従業員がどれだけ高い意欲を持って働いているか」も非常に重要なのです。
実際に、世界中で知られている外資系ファンドなどが、オープンワークの社員クチコミデータをAI分析にかけて株価を予測するといったこともやっているそうです。自分自身でクチコミデータをチェックしていた際に、企業の不祥事が発覚する数年前から、急に「社内の雰囲気が悪くなった」というクチコミが目立ち始めるといった事例もありました。
これは私自身も経験したことがありますし、皆さんもおそらくあると思うのですが、社内で問題が表出するケースでは、その少し前から「なんとなく雲行きが怪しい」といったモヤモヤがあると思います。そして、それがある日、いきなり爆発するといった構造になっている。
このように、非常に見えづらいのですが、従業員の士気、職場の空気というのは、業績を含めた会社の未来を予測する上で、極めて重要なデータになりうるのです。
――経営者にとっても「オープネス」は重要な指標となるのでしょうか?