(本記事は、阪井裕樹氏の著書『世界のトップは身につけている1分で相手の心をつかめ』株式会社コスミック出版の中から一部を抜粋・編集しています)
実は、個人にも当てはめることができる。
ここまでは企業の例をとって「ストーリー」について見てきたが、実は「ストーリー」は僕たち個人も、もちろん持っている。
ここからは「個人のストーリーのつくり方」について一緒に見ていこう。
ストーリーは、「考え方(哲学)」+「行動、経験してきたこと」で構成されるということは先ほど述べた。
僕たち個人も、企業と同じように「考え方(哲学)」+「行動、経験してきたこと」はそれぞれ持っている。
そう、「人生」だ。
そもそも僕たちの「人生」自体が「考え方(哲学)」+「行動、経験してきたこと」から成り立っているので、全員持っている「ストーリー」は異なってくる。
実際に、身近な例で、見ていこう。
たとえば、僕たちの生活ではなくてはならない豆腐。
〈なぜ豆腐を例にとったかというと、阪井が豆腐好きだから。笑〉
以下の例だと、どちらがその豆腐を食べたい!
と思えるだろうか。
例①国内産の大豆を使った絹ごし豆腐一丁100円。
例② 豆腐職人である鈴木さんが専門に提携している農場から直接買い付けた北海道産大豆を、さらに目視で一つひとつ確認し、厳選した大豆を使用。
さらに鈴木さんは、毎朝早朝3時から仕込みを始め、仕込み水は豆腐店の敷地内から湧き出る、常に温度が5℃を保っている湧き水を贅沢に使用。
そんな姿を見て、鈴木さんの息子さんの太郎くんは小学校5年生ながら、すでに将来は「お父さんの後を継ぎたい!」と言っていて、毎朝早起きをして豆腐づくりを手伝っている。
鈴木さんは普段は寡黙であまり自分のことを話さない。しかし、太郎くんが豆腐づくりを手伝っているその姿を見ている鈴木さんは、どこか誇らしげで嬉しそうだ。
そんな鈴木さんと息子さんが1秒たりとも目を離さずに手作業で一つひとつ仕上げた豆腐、一丁100円。
この事例は、阪井が勝手につくったものだが、どちらの豆腐を食べてみたいと思えただろうか。
おそらく、例②のほうではないだろうか。
例①は通常スーパーでみかけるキャッチコピー。
それに対して例②は二つのポイントを入れてみた。
一つめが、大豆と水という、豆腐の材料が持つストーリー。
そしてもう一つが、作り手である「鈴木さん」の『人間性』や『家族像』のストーリーだ。
この二つのストーリー、あなたは特にどちらのストーリーに惹ひかれただろうか。
後者の「鈴木さん」の『人間性』や『家族像』のストーリーではないだろうか。
そう、実は前半の豆腐の材料のストーリーは、大豆や水の産地や特徴といった「商品特性」の説明でしかない。
一方、「鈴木さん」の『人間性』や『家族像』のストーリーは、鈴木さんしか持っていない「考え方(哲学)」と「経験」に基づいたストーリーだ。
ひとくくりに「ストーリー」といっても、商品・サービスの持つストーリーはあくまでも「商品特性」でしかなく、それだけで相手の心を動かすということはない。「ストーリー」は、話し手のストーリー、つまり僕たちが一人ひとり持っている「人生ストーリー」こそ最も大事であり、顧客はこの「人生ストーリー」に共感して何らかの行動を起こす。
商品やサービスが売れない人は「商品特性」の話をしている場合が多く、話し手である「自分」に焦点を当てていない場合が多い。
そもそも「自分」に焦点を当てないと、顧客は「なぜこの人から買うのか」という理由が明らかにならないので、実はその商品・サービスを買うことにはならない。
なぜ自分じゃないといけないのかを明らかにする
僕は独立するまで、サービス業における営業をやってきた。
サービスを営業するということは、つまり「カタチがない商品」をなんとかして買ってもらわないといけないということ。
カタチがある商品を扱っていれば、実際にそれを見て、触ってもらうことができるので、「売り手」「顧客」ともに同じストーリーを共有しやすい。
しかし、カタチがない商品、たとえば保険や旅行などは、実際に見て、触ってもらうことができないので、同じストーリーを共有することが非常に難しい。
そんな状態で、「商品特性」のストーリーを顧客に話したとしても、顧客からの「共感」を得ることはとても難しいので、結果的に「売れない」ということになってしまう。
このように考えていくと、やはり僕たち一人ひとりが持っている「人生に紐付いたストーリー」が「伝わる」ためには大事だということがお分かりいただけると思う。
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