(本記事は、三木 雄信氏の著書『孫社長のYESを10秒で連発した 瞬速プレゼン』すばる舎の中から一部を抜粋・編集しています)
コミュニケーションが遅いと組織は停滞する
コミュニケーションとは、「組織の目標を達成するためのアクションを引き出すこと」である。
これが、私の考えるコミュニケーションの定義です。
いくら会議や報連相をしても、アクションにつながらなければ意味がありません。
私が孫社長の秘書をしていたときも、常に「このコミュニケーションは、次の行動につながるか」を考えていました。
私が一生懸命に説明したところで、孫社長に「これでは情報が足りない!」と書類を突き返されたら、サインはもらえません。
経営トップの了承が得られなければ、現場の仕事も進みません。つまり、次のアクションに移れないということです。
だから私はいつも「一発でゴーサインをもらう」ために必死でした。
ソフトバンクの会議で「検討します」がNGワードなのも、同じ理由です。
会議をするのは、孫社長が次のアクションを意思決定するためです。
にもかかわらず、意思決定に必要な情報をその場で提供できず、「持ち帰って調べます」などと言うことは許されません。
ソフトバンクが急拡大を続けてきたのは、「意思決定→アクション」のプロセスを高速化しているからです。
ビジネスにおいて、次のアクションが決まらないコミュニケーションは、すべて無駄だと考えるべきです。
コミュニケーションが遅い組織は、生き残れない。
それを証明する事例を紹介しましょう。
いまや「ロボット掃除機」と言えば、iRobot社のルンバです。
2002年の発売以来、この分野で圧倒的シェアを誇っています
実は日本のメーカーも、それ以前からロボット掃除機のアイデアと技術はすでに持っていました。
それが発売に至らなかったのは、社内の意思決定が遅かったからです。「ロボット掃除機がものにぶつかって壊したらどうする」「内部に詰まったホコリから発火したら、誰が責任をとるんだ」
そんな議論が繰り返され、誰も「発売する」という意思決定をしませんでした。
そうこうするうちに外資系のiRobot社がルンバを発売し、一強の座をあっさり奪ってしまったのです。
それからあとになって、日本のメーカーも、東芝、シャープと続きましたが、時すでに遅しでした。
お気づきでしょうが、この2社はその後いずれも経営危機に陥っています。
「コミュニケーションが遅い組織は生き残れない」という法則を、私たちは目の当たりにしているのです。
対照的なのが、ソフトバンクグループのヤフーです。
同社の検索サイトが今なお国内ナンバーワンであり、それに付随するサービスで業績を伸ばし続けている理由は、社内のコミュニケーションが速いからです。
ヤフーは2012年に社内の体制を一新し、経営陣も一気に若返りました。
きっかけは、若手社員が孫社長に対しておこなったプレゼンです。
「今のままでは、10年後にはヤフージャパンは存在しない」
その社員は、こう言い放ちました。
当時はちょうど、パソコンからスマートフォンやタブレットへと、ITツールの主流が移行しつつある時期でした。その流れをいち早く肌身で感じていた若手社員が、「このままでは生き残れない」と危機感を訴えたのです。
それを受けて、孫社長や旧経営陣はすぐに「組織の体制を変える」と意思決定を下しました。もしこの判断がなかったら、今のヤフーはなかったでしょう。
「瞬速プレゼン」は会社を生き残らせるための条件でもある
もう一つ、ヤフーの事例から学ぶべきことがあります。
それは、「会社を強くするには、下が上に情報を伝えて、意思決定させなくてはいけない」ということです。
立場が上になるほど、現場から距離が離れます。要するに、世の中の変化や新しい動きから一番遠いところにいるのが〝エラい人たち〟なのです。
上の人がみずから時代を先読みして、会社が生き残るための意思決定をしてくれることは、ほとんどあり得ないと思っていいでしょう。
現場に近い社員たちが「このままではマズい」と感じたら、その情報を上に伝えない限り、経営者が正しい判断をすることはありません。
下が上を動かし、自分たちが望む通りに次のアクションを引き出す。「瞬速プレゼン」は、そのためのスキルでもあります。
社員たちが「上の言う通りにすればいい」と思っていたら、あっという間に会社はなくなります。会社が生き残れなければ、そこで働く個人も生き残れません。
自分のビジネスは、自分で回す。
個人がその意志を持つことが、「瞬速プレゼン」の大前提です。
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