よく、「落ち込んでも現実は変えられない」という。これはある意味では正しく、ある意味では間違っている。現実は変えられなくても、変えられるものがある――それは、現実をとらえる「解釈」だ。

今回は、自分や部下の悩みを解決する方法として、ABC理論を紹介する。自然とやってしまいがちな「解釈の誤り」についても解説するので、ぜひ参考にしてみてほしい。

ABC理論は、リーダーを目指すすべての人が活用できる手法だ。問題の本質を見抜く「洞察力」と「思考力」を身につければ、自然と人がついてきてくれるようになるだろう。

ケーススタディ(4)――問題の本質の所在

成功心理学 #4
(画像=rudall30/shutterstock.com,ZUU online)

人材コンサルティング会社で働く及川圭佑(37)は、大きく伸びをしてから時計を見た。お昼休憩まであと5分。資料作成もひとくぎりついたので、どこでお昼を食べようかと思い巡らせる。

ふと、及川の目に同僚の大野の姿が飛び込んできた。何かうまくいっていないことがあるのか、表情がひどく暗い。そういえば昨日、部長に呼び出されていた。及川はそのあとすぐ外回りに行ったので、その後の詳細は知らなかった。

「大野、一緒に飯どうだ?」

12時を回ったタイミングで、及川は声をかけた。オフィスから少し歩いた先の中華料理屋に入り、ランチセットを頼む。店内は混んでいたが、ここには会社の人間はあまりこない。どう切り出そうか及川が考えていると、大野がちらりと微笑を浮かべて言った。

「お前は本当によく見てるよな」

どうやら、大野の様子がおかしいことに気づいた声をかけたことが、バレていたらしい。それなら話は早い。

「同期のよしみだ、愚痴ならいくらでも聞くよ」

及川の言葉に、大野は堰を切ったように話し始めた。

大野は最近、とあるプロジェクトのリーダーに任命された。しかし、メンバーのモチベーションも低く、上司との調整もうまくいかず、プロジェクトは難航している。昨日は進捗のことで上司に呼び出され、メンバーの一人は不満を言って、プロジェクトから抜けたいと言い出した。

「プロジェクトの進捗が遅れてるのは俺のせいだ。俺がリーダーでうまくいくはずないし、最初は断ったのに、適任者がいないとかで。まとめ役として、別の人間をリーダーにした方がいいと思う。俺は指示されて手を動かす方が向いている」

成功心理学
(画像=Lana Iva/Shutterstock.com)

大野は完全に自信喪失している様子だ。どう言ったものかなと及川は考え、大野にクイズを出すことにした。

「大野、この間コミュニケーションのクイズ出したろ? 別のクイズもやってみないか?」

落ち込んでいた様子の大野は、興味を引かれたようだった。

「仕事ができるAくんは出世街道を歩んでいたが、致命的な失敗をしてしまう。Aくんはひどく落ち込んでしまった。
Aくんが落ち込んだ原因は?」

(1) 仕事で失敗したという出来事そのもの。
(2) 失敗する人間は評価されないという考え方。

仕事で致命的なミス! その原因は?

「選択肢を聞くまで、(1)だと思ってたけど……。(2)のような捉え方もできるのか」

大野はそう言って考え込んだ。及川は続ける。