新型コロナウィルスの影響が日本国内で広がる中、すでに多くの飲食店の売上は激減、観光業への打撃もかつてない事態となっており各地で客足が著しく落ち込んでいる。中国に生産拠点を持つ多国籍企業への影響も深刻だ。新型コロナウィルスは各業界にどのような影を落としているのだろうか。
飲食業界への影響 51%以上で売上に影響
飲食・フード産業特化型の求人サイト「クックビズ」が2020年2月18日に発表した「全国の飲食店へ新型コロナウィルスについての実態調査」では、店舗の売上について「大きな影響が出ている」「多少の影響が出ている」と答えた飲食店が合わせて51.0%に上っている。また「今後、多少影響が出そうだ」と答えている店舗も20.0%である状況だ。
つまり約71%の店舗が「すでに影響が出ている」「今後何かしら影響が出そう」ということになる。一方「影響は出ていないし今後もなさそうだ」と回答した店舗はわずか12.4%だけに留まった。来店客数については特に外国人客の減少が顕著でインバウンドに頼っていた飲食店は厳しい局面を迎えている。
観光業は大打撃 経営破綻した旅館や訪日韓国人は40万人以上減少見込み
観光業への打撃も大きい。日本への渡航を自粛するよう促している国もある中、宿泊施設ではキャンセルが相次ぐ形となっており観光施設も閑古鳥が鳴く状態だ。特に韓国からの訪日観光客数は2020年1月時点で前年の同月に比べて46万2,583人(▲59.4%)下回っている。日本では訪日観光客数の伸びが続いていたことからインバウンド誘客に特に注力してきたホテルや旅館は多い。
東京商工リサーチは2020年2月25日、新型コロナウィルスの影響による初の経営破綻の事例を発表。初の経営破綻となったのは、インバウンドに力を入れていた岐阜県蒲郡市の観光旅館だった。もし新型コロナウィルスの影響で東京オリンピックの開催が中止されたり無観客での実施となったりした場合、飲食業や観光業へのインパクトはさらに甚大なものとなるだろう。
採用領域にも衝撃 マイナビの合同説明会中止で20万人以上の学生に影響
観光業や飲食業を含む日本企業への影響が甚大なものになりつつあるが、その影響は売上減だけに留まらない。企業の採用活動にも支障が出てきた。就職情報サイト大手マイナビは2020年2月26日、同年3月1~15日に開催予定だった合同企業説明会の中止を発表している。「リクナビ」を運営するリクルートキャリアも同様の対応だ。
企業が個別に行う就職説明会や就職試験なども今後、延期・中止となる可能性が高くなっている。
グローバル企業への影響も深刻化 アップル、日産など
米アップルや自動車メーカー日産などの多国籍企業への影響もすでに表面化している。多くの企業が生産拠点を構える中国では、従業員への感染拡大防止などに向けて工場の生産をストップさせる例が相次いでいるのが現状だ。アップルはiPhone製造の遅れの影響で今後の業績予測を下方修正するにまで至った。中国での生産停止が及ぼす影響はどこまで続くのだろうか。
2020年2月末時点でトヨタは中国・成都の工場をすでに再開して生産体制を半分程度まで戻しているがフル稼働には程遠い状態だ。感染の終息宣言がされるまでは「世界の工場」と呼ばれる中国での生産への影響は今後も続いていくだろう。また中国以外の国での感染拡大がより大きくなれば東南アジアにサプライチェーンを持つ他の企業への影響も広がっていくことになりそうだ。
金融市場にも大影響 日経平均は一時1,000円超下げ幅
新型コロナウィルスの感染拡大によりさまざまな企業が影響を受けており、その影響は株式市場にも直撃した。アメリカではダウ工業30種平均が2020年2月25日に前日比879米ドル安と急落。2日間で過去最大の下げ幅1,911米ドルを記録。日経平均も同年2月27日大引時点で4日間続落し2月25日には一時1,000円超の下げ幅となった。
今後の経済の見通しは?SARSケースではどうだったのか
厳しい状況が続く日本だが今後は一体どうなるのだろうか?観光業にフォーカスして見ると過去に感染が広がった「SARS」の場合、感染が終息したあと急速に航空需要は元の水準まで戻った。航空需要が戻るということは、人の往来も戻ってくるということで需要の回復には期待が持てるだろう。ただし新型コロナウィルスへの日本の対応のまずさが露呈していくと話は別だ。
危機管理視点から「日本」という観光ブランドの低下にもつながる。その結果、日本への観光客や渡航者が少なくなる懸念はもちろん日本という国自体にも重大な影響を与えてしまう可能性もあるだろう。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)/MONEY TIMES
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