商品市況上昇を主因に前月比で上昇も、先行きは新型肺炎の影響長期化が懸念材料

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(画像=PIXTA)

国内企業物価は商品市況の上昇を主因に前月比で+0.2%の上昇

2020年1月の企業物価指数は、前月比+0.2%(コンセンサス:同0.0%、レンジ:同▲0.6%~+0.4%)、前年比+1.7%(コンセンサス:同+1.5%、レンジ:同+0.9%~+1.9%)とコンセンサスを上回る結果となった。また、消費税の影響を除いた場合では、前年比+0.1%と19 年5月以来の前年比プラスとなった。

企業物価指数(2020 年1月)
(画像=第一生命経済研究所)

前月比で内訳をみると、1月中旬にかけての商品市況上昇を受け、石油・石炭製品が前月比+2.9%(寄与度+0.20%pt)、化学製品が同+0.3%(同+0.03%pt)、非鉄金属が同+0.8%(同+0.02%pt)となり、国内企業物価の上昇に寄与した。一方、台風19 号の影響により値上がりしていた鶏卵価格などの下落を受けて、農林水産物が同▲2.5%(同▲0.10%pt)と下落した。1月の国内企業物価は12 月に引き続き商品市況上昇を主因に前月比で上昇した。もっとも、足元で新型肺炎の感染拡大によって世界経済の先行き不透明感が強まっており、商品市況が下落に転じている。先行きの国内企業物価は下振れる可能性が高い。

輸入物価指数は、契約通貨ベースでは前月比+0.7%(前年比▲0.9%)、円ベースでは前月比+0.7%(前年比▲0.7%)となった。石油・石炭・天然ガスが契約通貨ベースで前月比+3.1%(寄与度+0.87%pt)となり、輸入物価指数についても商品市況の改善を主因に契約通貨ベース、円ベースともに前月比で上昇、前年比でも低下幅が縮小した。一方で、電気・電子機器が契約通貨ベースで同▲1.8%(同▲0.30%pt)と下落している。来月については、足元の商品市況の低迷を受けて下振れる可能性が高い。

需要段階別・用途別指数は前年比で低下幅を縮める結果に

需要段階別・用途別指数(国内品+輸入品)をみると、素原材料は前月比+1.3%(前年比+0.8%)、中間財は同+0.3%(同▲0.4%)、最終財は同+0.1%(同0.0%)となった。また、消費者物価との関連の深い消費財の国内品は同0.0%(同+0.8%)となった。商品市況の改善を背景に、素原材料を中心に上昇が続いている。一方で足元の商品市況は低迷をみせており、来月以降下振れる可能性がある。

1月は商品市況の改善が上昇をけん引も、先行きは新型肺炎の影響長期化が懸念材料

1月の国内企業物価は商品市況の改善を主因に前月比で上昇、消費税を除いた前年比もプラスに転じた。米中貿易交渉が第一段階の合意を迎えたことなどを受けて、先行きに対する懸念が後退し、1月中旬にかけて原油価格をはじめとする商品市況価格は上昇した。しかし、新型肺炎の感染拡大により状況は一変し、世界経済の先行き不透明感が強まっている。一時は60ドル台後半まで上昇した原油価格(ドバイ)も足元では50ドル台前半で推移しており、2月以降この影響が出るだろう。また、中国では工場の稼働が休止されるなど影響は製造業にも及ぶとみられ、世界的な半導体サイクルの改善を受けて持ち直すとみられていた輸出に悪材料となり得る。更なる感染拡大など影響が長期化することとなれば、国内企業物価は下振れる可能性が高い。(提供:第一生命経済研究所

企業物価指数(2020 年1月)
企業物価指数(2020 年1月)
(画像=第一生命経済研究所)

第一生命経済研究所 調査研究本部 経済調査部
エコノミスト 奥脇 健史