強みを伸ばす指導が弱みも克服させた

また、選手たちとのコミュニケーションでは、「ウィークネス(弱み)ばかりを指摘しないよう心がけてきた」と話す。

「攻撃のセンスはあるのに、守備に苦手意識がある選手がいたとします。この選手に『もっと守備を頑張れ』としつこく弱みばかりを責めると、相手は『この人と一緒にサッカーをしたくない』と思い、こちらをシャットアウトするようになります。

実は私自身、男子のユースを指導していた頃に、まさにそんな失敗をしたことがあります。守備が物足りない選手に『もっと守備をちゃんとやれ』と言い続けたら、その子は練習に来なくなってしまったのです」

この苦い体験から、選手のウィークネスを指摘するのではなく、いいところを評価したうえで、「その長所を最大限に活かすにはどうすればいいか」を伝えるように切り替えた。

「例えば岩渕真奈選手は、まさに攻撃は素晴らしいが守備はなかなか頑張れないタイプでした。そこで私はこう言い続けました。『君のドリブルと攻撃力をもっと活かしたいし、できるだけ長く試合に出てほしい。でもチームプレーで誰か一人が守備を休んでしまうと、君が得意な攻撃にもなかなかつながらない。だから守備も頑張ろう』と。

すると岩渕選手は、全体練習のあとで自分から守備の練習をするようになったのです。長所や強みを認めてあげることが、これほど選手のモチベーションを高めるのかと実感しました」