この会見は「最初の一手」に過ぎない

ひょっとすると、「今は騒いでいるが、しばらくたてばみな忘れてしまうだろう」と思っているのかもしれないが、それは甘い考えだ。

経営者としてのゴーン氏の特徴は、常に戦略を長期で描き、それを確実に実行するところにある。日産をV字回復させた「日産リバイバルプラン」がまさにそうだった。当初から数年先までのロードマップを描き、目標に対して「コミットメント」を誓い、それを実現してみせた。

そんなゴーン氏が、自身の「リバイバルプラン」を描いていないわけがない。

今回の会見はあくまでその「始まり」に過ぎないだろう。

今後も順次、PR会社などを活用し、より効果的な方法で発信を続けていくことは確実だと思われる。

書籍の発刊なども視野に入れているだろう。

そして、その後はアドバイザーやコンサルタント的な仕事を請け負い、やがて一線に返り咲く……どんなプランかは不明だが、彼の頭の中にすでに「復活のシナリオ」が描かれていることは確実だ。

そして、ゴーン氏の復活はとりもなおさず、日本政府の信用の失墜となる。

安倍晋三首相はこの問題について、「本来、日産のなかで片付けてもらいたかった」と言ったというが、これはもう日産の問題ではなく、日本政府の問題だとして、適切な対応を心掛けてほしいと願う。

法木秀雄
早稲田大学ビジネススクール元教授
(『THE21オンライン』2020年01月10日 公開)

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