底入れを探る週に 配当利回り上昇で期末の配当取りも相場の支えに
今週は17~18日に米連邦公開市場委員会(FOMC)、18~19日に日銀の金融政策決定会合が予定されている。FOMCでは0.5%の追加利下げが見込まれていたが、日本時間早朝にFRBは1%の緊急利下げと量的緩和の再開を決定した。
決定直後の時間外取引では日経平均先物が大幅高となったが、その後、米株先物の下落を受けて下げに転じた。だが、この時間帯の参加者は限定的でこの先物のリアクションは参考にならない。NZ連銀も緊急利下げに踏み切りQEも視野に入れている。中央銀行の協調体制が迅速で強力だ。初期反応は鈍くても株高要因には間違いない。繰り返すがDo not fight with FED である。
日銀については既に報じられている通り、CP・社債の購入拡大とETF購入の増額だろう。日銀の政策だけをみれば新味に欠け迫力不足で、世界の中銀が一斉に金融緩和に動いているなか愚鈍に映る。市場にサプライズを与えるアクションを日銀に求めたい。
今週はさすがに底入れとなるだろう。ただ、ここまで相場が大きく崩れてしまうと市場の動揺はそう簡単には収まらない。まだまだ波乱の展開が続くと覚悟しよう。それでもいったんは底入れを探る展開になるだろう。ひとつの根拠は3月のメジャーSQを通過した需給的な要因。需給でいえば3月期末接近で配当取りの動きが本格化してくることも下げ止まりの材料だ。特に今はこれだけ株価が下げているので配当利回りが驚くほど高くなっている。PERなど利益をベースにした尺度は業績の不透明感が高い時には信頼性が低いが、配当はよほどのことがない限り減配のリスクは少ない。配当狙いで買うには絶好のチャンスである。
もうひとつの安心材料は為替が円安ドル高に動いていることだ。FRBの緊急利下げを受けて円高に振れなおしたが、それでもまだ105~106円台だ。
今回の相場変調の中でドル円はしっかりで、突っ込んだ円高局面でも1ドル100円の節目を割らなかった。日経平均が次々に節目を破って下げていくのと対照的だった。そのドル円は週末の海外市場で一時108円をつけた。下げ幅の61.8%戻しをクリアした。週末終値で見ても半値戻しは達成している。
株価も為替を追いかけるように、半値戻しを目指す展開か。下げ局面では値を飛ばしながら下げてきたので、戻りは真空地帯、売り圧力は大きくない。半値戻しの前に、まずは2万円の大台回復が先だ。日経平均は先週1週間で3,300円余り下げた。その8割弱の2,500円余り戻せば2万円回復である。年度内には戻すだろう。
リスク要因は五輪中止の可能性が高まることだ。同時に延期の可能性も示されれば、期待と需要が後ずれするだけなので問題はないが、「中止」だけが独り歩きするのが一番困るシナリオだ。
今週の予想レンジは16,000円~20,000円とする。
広木 隆(ひろき・たかし)マネックス証券 チーフ・ストラテジスト
上智大学外国語学部卒業。国内銀行系投資顧問。外資系運用会社、ヘッジファンドなど様々な運用機関でファンドマネージャー等を歴任。長期かつ幅広い運用の経験と知識に基づいた多角的な分析に強み。2010年より現職。著書『9割の負け組から脱出する投資の思考法』『ストラテジストにさよならを』『勝てるROE投資術』
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