大塚駅北口一帯を再開発する「baプロジェクト」とは?
2018年5月、東京・豊島区にあるJR山手線・大塚駅の北口に「星野リゾートOMO5 東京大塚」が開業した。同時に、都電荒川線の線路を挟んだ場所に「東京大塚のれん街」も開業。それまで、隣駅の池袋駅などと比べて地味な印象だった大塚駅前が、にわかに活気づいている。これらの再開発の仕掛人は、大手デベロッパーではなく、実は地元の老舗不動産会社。代表取締役CEOの武藤浩司氏に、大塚駅前を再開発する「ba(ビーエー)プロジェクト」について聞いた。
「インパクトのあるホテルを誘致したい」から始まった
――baプロジェクトは、どのようにして始まったのでしょうか?
武藤 もともとbaプロジェクトという構想があったわけではなくて、新たに組んだ〔株〕竹中工務店の営業担当者と、インバウンド需要もあるし、アクセスも良いので、ホテルを誘致したいという話をしたのが最初です。それも、普通のビジネスホテルではなくて、大塚の街が変わるほどのインパクトがあるホテルを誘致したいと話しました。
大塚の街を変えたいと思ったのは、「どこに住んでいるの?」と聞かれて「大塚」と答えても、誰も知らないような街だったからです。「田町の隣でしょ」と大崎と間違えられたり、池袋のほうだと言うと「あぁ、池袋に住んでるのね」と言われて、「それも違うな」と思ったりする経験を何度もしていました。
すると、タイミング良く、星野リゾートが都市型ホテルを始めようとしていて、その場所を探しているようだという情報を入手しました。そこで、その第1号を絶対に大塚に作ってほしいとお願いしました。内装や賃料など、厳しい交渉がありましたが、長期にわたって一緒に手をつないでいきましょうということで、着地点を見出すことができました。
――そのときは、baプロジェクトの一環という位置づけではなかったわけですね。
武藤 baプロジェクトというものは、まったくありませんでした。
星野リゾートに来ていただけることになってから、建物の名前をどうしようかという話になったとき、近くに同じく竹中工務店に建てていただいている賃貸マンションがあったので、星野リゾートのほうを「トマルバ(泊まる場)」、マンションのほうを「スマウバ(住まう場)」と呼ぶのはどうかと発案したんです。そして、これから建てるビルはすべて「〇〇バ」という名前にしようと思ったのですが、やっぱりダサいかも、と考え直して、最終的に「ba」というブランド名にしました。being & associationという意味を持たせています。
そうして、星野リゾートの建物を「ba01」、マンションの建物を「ba03」と名づけたところから、baプロジェクトが始まりました。既存の建物もbaブランドにふさわしいものは改名して、飲食店などが入居している大塚駅北口近くのビルを「ba06」、当社も入居しているオフィスビルを「ba07」としました。
――星野リゾートの進出は、実際に街を変えましたか?
武藤 星野リゾートを誘致したことは豊島区長にも喜んでいただけましたし、大塚駅前の再開発も進んで、思ってもみなかった変化が起きました。大塚駅の乗降客数も増えているそうです。
今は、大塚の街を変えることが自分の使命だと考えるようになりました。当社が動かないと、大塚の街は沈んでいくかもしれない。誇りある街にしていかなくてはならないと思っています。