スティーブ・ジョブズの早すぎた死から10年近く経とうとしている。発表のたびに世界中を驚かせてきたAppleの製品はもとより、彼自身の影響力は今なお色あせることがない。稀代の“天才”かつ“変人”であったジョブズのこだわりエピソードを5つ紹介する。

トレードマーク 黒タートルの秘密

スティーブ・ジョブズ
(画像=Castleski/Shutterstock.com)

衝撃をもって伝えられたその死からまもなく10年が経とうとしているにもかかわらず、仕事術や思考術の分野で「スティーブ・ジョブズ」の名前を見る機会はいまだに多くあります。

2005年6月、アメリカのスタンフォード大学の卒業式で行なったスピーチは、自らの不遇な生い立ちや闘病生活が語られ、彼の人生観が分かる内容となっています。締めの言葉となった「Stay Hungry. Stay Foolish.(貪欲であれ。愚直であれ。)」という言葉は、いまでもその時のスピーチを象徴するものであると同時に、思想家としてのジョブズを印象付けた言葉となりました。

(中略)

一方、スティーブ・ジョブズのルーティンでよく知られているのが、「いつも同じ服を着る」ということです。ジョブズは、三宅一生(ISSEY MIYAKE)がデザインした黒のタートルネックとリーバイスのジーンズ、そしてニューバランスのスニーカーというスタイルで通していました。それらは同じものが何着もあり、着回していたといいます。タートルネックにいたっては、彼の肩や腕の長さを測ってつくられた特注品で、最初にオーダーされた数は50枚とも100枚ともいわれています。

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スティーブ・ジョブズが黒いタートルネックしか着なかった理由(2019/11/13公開)

主食は社名でもあるあのフルーツ

世界のビジネスをリードする著名人たちは、忙しい毎日の中でも体に気を遣い、健康を保てるよう努力をしているものです。しかし次のように個性的な食生活を送る人もいます。

(中略)

アップル社の共同設立者で今は亡きスティーブ・ジョブズ氏は、菜食主義でした。しかも果実にこだわる果実食主義者でリンゴを主に食べていたといいます。夫婦ともに究極の菜食主義と呼ばれるヴィーガン主義者であったため、肉や魚をはじめ卵や乳製品など動物が関連する食物の摂取を避けていました。

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トップランナーは意外に質素な食習慣!ジョブズ、ゲイツ、オバマに星野リゾート代表まで(2019/10/23公開)

オフィスのトイレにこだわる理由

スティーブ・ジョブズはシンプルさや近代的な直線美を愛し、大衆に好まれる製品をつくる才能に恵まれていた。ジョブズは30年以上にわたり、一流デザイナーに厳しい要求をし、コンピューターやスマートフォン、タブレットなどの他に類を見ないほど美しい工業製品を次々とつくり出した。

『トイ・ストーリー』などの映画を制作したアニメーションスタジオ、ピクサー社の大株主だったジョブズは、同社のビルも設計している。ジョブズは健康で仕事も順調だった時代、ピクサーの本社ビルの設計に並々ならぬ意欲を燃やした。

(中略)

偶然の出会いがもたらす力に魅了されていたジョブズは、社員同士が本社ビル内で偶然に顔を合わせやすくするために、トイレをメインロビー付近の一カ所のみに設置するという妙案を思いついた。生理的欲求を満たすためには誰もがロビーに向かわなければならなくなるので、そこで見知らぬ社員と出会ったり、しばらく顔を見ていなかった社員と会ったりしやすくなるはずだ、と。

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なぜジョブズは「オフィスのトイレは1つしか作らない」ことにこだわったのか(2018/12/01公開)

禅宗に傾倒 京都にお忍び旅行も

西芳寺
(画像=i6k/Shutterstock.com)

京都を愛したスティーブ・ジョブズが、足繁く通ったのは、苔寺としても有名な西芳寺。禅僧に帰依した彼はこの庭から何を学びとったのか。マインドフルネスの原点はここに。

(中略)

スティーブは、インドへも旅しました。インドの田舎で7ヶ月を過ごし、田舎にいる人々の直感力の鋭さに気付きます。自分を静観し時間をかけて気持ちを落ち着かせると、とらえにくいものの声が聞け、直感が花開き、物事がクリアに見え、現状が把握できたそうです。今まで見えなかったものが見えるようになるのが修養であり、そのためには修行が必要だと気付きます。スティーブは、帰国後両親の住むロスアルトス市に戻り、サンフランシスコにある曹洞宗、鈴木俊隆の禅センターに通い始めます。

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スティーブ・ジョブズが「お忍び訪問」していた日本庭園(2020/01/25公開)

生み出したいのは顧客の幸せ

「ハングリーであれ。愚か者であれ」(Stay hungry. Stay foolish.)これは米アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズ氏の言葉です。1955年生まれのジョブズ氏は、若くしてホームコンピューターを開発し、後にビジネスの世界で大成功します。ジョブズ氏は若い頃音楽や禅に夢中になり、ヒッピー・カルチャーに傾倒した時期もあるなど、独特の哲学を持ち、事業でもその思想が生かされてきました。

「ハングリーであれ。愚か者であれ」と言い切るジョブズ氏は、その言葉通り、「儲け主義」とは一線を画す独創的な製品づくりや事業を展開してきました。アップルは、単なるモノだけではなく、アイデアや思考、さらには「アップルという世界」さえも創り出してきたと言えるでしょう。

アップル製品の利用者の中には、ジョブズ氏の言葉にあるような独自の哲学から生み出されたオリジナル製品をこよなく愛する人が少なくありません。

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世界の創業経営者3人が残した名言(2018/11/18公開)

ジョブズが残してくれたもの

ジョブズのこだわりの中には、常人がまねできないものもあれば、エッセンスを取り入れることなら容易なものもある。独創的なアイデアから生まれた数々のApple製品は、人々のライフスタイルを変え、私たちの生活になくてはならないものとなっている。彼がもし今も生きていれば、この混沌とした世の中にどのような驚きを与えてくれたのだろうか。