(本記事は、教養総研 (著)『すぐに真似できる 天才たちの習慣100』KADOKAWAの中から一部を抜粋・編集しています)

「今日が人生最後の日なら?」と毎朝、鏡の自分に問う

スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)
(1955〜2011)アメリカの実業家で、アップル(前アップルコンピュータ)の共同設立者の1人。1976年、最初のコンピュータ「アップルⅠ」、翌年に「アップルⅡ」を発売、革命的なパーソナル・コンピューターとの評価を得る。85年に退社後は同社と距離を置いたが、2000年、再び同社のCEOに就任。以後はiPod、iPhone、MacBook Air、iPad など、新製品を次々に市場へ投入。09年、経済誌「フォーチュン」から「過去10年間のもっとも優れたCEO」に選出。11年、膵臓がんにより死去した(享年56)。

この天才の名言

「宇宙に衝撃を与えることが僕らの仕事だ。」

「本当に情熱を注ぎ込めるものを見つけるまでは、皿洗いか何かの仕事をやったほうがいい。」

「洗練を突き詰めると簡潔になる。」(レオナルド・ダ・ヴィンチの言葉を引用して)

「貪欲であれ。愚直であれ。」

「もし今日が人生最後の日なら?」を指針にしたジョブズ

衝撃をもって伝えられたその死からまもなく10年が経とうとしているにもかかわらず、仕事術や思考術の分野で「スティーブ・ジョブズ」の名前を見る機会はいまだに多くあります。

2005年6月、アメリカのスタンフォード大学の卒業式で行なったスピーチは、自らの不遇な生い立ちや闘病生活が語られ、彼の人生観が分かる内容となっています。締めの言葉となった「Stay Hungry. Stay Foolish.(貪欲であれ。愚直であれ。)」という言葉は、いまでもその時のスピーチを象徴するものであると同時に、思想家としてのジョブズを印象付けた言葉となりました。

彼を取り上げた本がいまだに出版され続けている要因も、そのようなところにあるのでしょう。

スタンフォード大学でのスピーチにおいて、彼は、独特な死生観とともに自身の毎日の習慣について披露しています。

それは、「もし今日が人生最後の日なら、自分は何をするだろうか?」ということを、毎朝、鏡に映る自分に問いかけるということです。

ジョブズは17歳の時、「毎日を、それが人生最後の1日だと思って生きれば、その通りになる」という言葉にどこかで出会いました。それは彼にとってとても印象的な言葉に映り、その日を境に彼は毎朝、「もし今日が最後の日だとしても、いまからやろうとしていたことをするだろうか?」と、鏡に映る自分に問いかけるようにしていたといいます。

そして、鏡の中の自分にそのように問いかけてみて、もしも「違う」という答えが何日も続くようであれば、「少し生き方を見直せ」といわれていると捉えていました

また、彼はそんな言葉に続いて、自分はまもなく死ぬという認識が、重大な決断を下す時に一番役立つとも述べています。

それは、希望やプライド、失敗する不安などといったことは、「死」という人生最後の出来事の前では取るに足らないものであり、何の意味もなさないと感じていたからです。

スピーチの前年、ジョブズは膵臓がんと診断されていました。一時は死を宣告され、独り暗闇の中で泣いていたといいます。そのような追い詰められた状況にあって、彼はたくさんの聴衆を前に、自分が長年抱き続けてきた死生観を伝えたくなったのかもしれません。

ジョブズは「死」について、聴衆に再び語りかけます。

あなたがたの時間は限られています。だから、本意でない人生を生きて時間を無駄にしないで下さい。(中略)他人の考えに溺れるあまり、あなたがたの内なる声がかき消されないように。そして何より大事なのは、自分の心と直感に従う勇気を持つことです。あなたがたの心や直感は、自分が本当に何をしたいのかもう知っているはず。他のことは二の次で構わないのです」[※1]

[※1]「日本経済新聞」(2011年10月9日付)

なぜジョブズは黒いタートルネックしか着なかったのか?

一方、スティーブ・ジョブズのルーティンでよく知られているのが、「いつも同じ服を着る」ということです。

ジョブズは、三宅一生(ISSEY MIYAKE)がデザインした黒のタートルネックとリーバイスのジーンズ、そしてニューバランスのスニーカーというスタイルで通していました。

それらは同じものが何着もあり、着回していたといいます。

タートルネックにいたっては、彼の肩や腕の長さを測ってつくられた特注品で、最初にオーダーされた数は50枚とも100枚ともいわれています。

なぜ三宅一生の服を着ているのかというと、アップルのユニフォームを製作するためのデザインを発注したことがきっかけです。

ジョブズが日本のソニーの工場を訪問した時、従業員が三宅のデザインしたジャケットを着ているのを目にした彼は、アップルにもユニフォームが必要だと感じ、三宅にデザインを依頼することになったといいます(アップルでユニフォームが採用されることは結局ありませんでした)。

では、なぜジョブズは毎日同じ服しか着なかったのでしょうか?

彼自身の言葉を借りるならば、「『今日は何を身に付けるのか?』という選択に頭を使いたくなかったから」です。

ジョブズはグローバル企業のトップですから、言わずもがな、身綺麗にしておく必要はあります。しかし、毎朝「どんな服を着て行こうかな?」と悩むのは時間の無駄で、そんな「些細な決断」であっても脳に負担がかかっています。脳に負担がかかるということは、判断力が鈍ることを意味します。

だからこそ、脳への負担を少しでも減らすために、「服を選ぶ」という判断を削除したのです。ジョブズ以外にも、成功者の中にはいつも同じ服を着ている人が多いようです。

スティーブ・ジョブズ流「プレゼンで緊張しない方法」

スティーブ・ジョブズを語る時に持ち出されるのが「禅」です。

実際、彼は10代の時にインドで仏教と出会い、大学時代から禅と接しました。そして、当時カリフォルニア州で活動していた曹洞宗(そうとうしゅう)の僧侶である乙川弘文(おとがわこうぶん)師と出会ったことによってますます禅の世界へ導かれていきます。乙川師はジョブズの会社NeXTの宗教指導者に任命され、ジョブズの結婚式を仏式で執り行なったのも乙川師でした。一時期、ジョブズは永平寺で修行したいとも語っていたそうです。

そのような理由から、アップルの製品には禅の教えからインスパイアされたような洗練さが含まれ、ジョブズもプレゼンテーション前には瞑想して心を落ち着かせていたとされています。

しかし、ジョブズが素晴らしいプレゼンを何度もできたのは、ひとえに「しっかり準備をしていた」からに他なりません。

実は、ジョブズはプレゼン前、体にすべて覚えこませるように、何度も練習を繰り返し、自信をつけることによって緊張しないようにしていたのです。

たとえば、iMacの発表時、リハーサル会場でのジョブズは照明を点けるタイミングにとてもこだわっていました。4度目でようやくジョブズのOKが出たそのタイミングによって、本番でiMacは世界中の誰もがほしくなる製品となっていたのです。

ジョブズに限らず、世界的に有名な企業のトップでも、プレゼン前は緊張するといいます。人前で話すのに緊張しない人などいません。しかし、彼らは入念に準備をして自分に自信を持たせることにより、「上手く話せる」ような姿に変身しているのです。

すぐに真似できる 天才たちの習慣100
(画像=すぐに真似できる 天才たちの習慣100)
プラスα ザッカーバーグも同じ服を着回していた
フェイスブックのマーク・ザッカーバーグも、同じTシャツを25枚も持っていました。また、特殊相対性理論で知られるアルベルト・アインシュタインも、同じスーツを何着も揃えていたと伝えられています。ザッカーバーグもアインシュタインも、彼らの「本業」に自分自身を100%注ぎ込むため、服装には固定したものを用意していたのだと想像されます。
すぐに真似できる 天才たちの習慣100
教養総研
今ではレアとなった古説・珍説の類から、広く一般に普及しているライフハックまで、知識・知恵など「教養」に関するさまざまなトピックスをわかりやすい形で世に発信する小集団。
古今を問わず、東の『論語』や西の『道は開ける』(D・カーネギー)など、これまで世に出た優れた教養・自己啓発書を日々物色し続けている。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます