社会的な成功を収め、余生を送るのに十分な資産がある富裕層の中には、ある程度の年齢に達したら「リタイアすべきか」「現役を続けるべきか」と迷うことがあるかもしれません。この選択の参考として、老後も働き続ける大富豪の目的を考察します。

大富豪が働き続けるのはお金のためではない

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(画像=Vitaliy Karimov/Shutterstock.com)

高齢になっても仕事をし稼ぎ続ける大富豪に対して、「十分お金持ちなのに、歳を取っても稼ぎ続けるのはお金への欲があるからだろう」と語る声もあるかもしれません。しかし、5年間で約1兆6,000億円もの金額を寄付しているウォーレン・バフェットを例にすれば、その見方は視野の狭いものであると気づかされるのではないでしょうか。

フォーブズ社は調査会社シュック・リサーチと協力して、2014~2018年における大富豪たちの寄付額の調査を行い、2020年1月に記事として掲載しています。
寄付額の第1位はウォーレン・バフェット。2020年3月時点で89歳になってもビジネスの最前線で活躍する、いわずとしれた大富豪であり投資家です。彼の5年間の総寄付額は約147億米ドル(1米ドル=109円換算で約1兆6,023億円)となっています。

バフェットは大富豪でありながら質素な生活を送っていることで有名です。1958年に3万1,500米ドルで買った、庶民と変わらない家に現在も住み続け、ファーストフード好きで知られます。
庶民と同じようなライフスタイルを貫き通し、稼いだお金を寄付し続ける……。バフェットと同じように、大富豪になっても質素な生活をしながら、なおも稼ぎ続ける人は多くいます。この理由については、さまざまな見解があります。

ひとつの例として、アドラー心理学を日本に広めた名著『嫌われる勇気』(岸見一郎・古賀史健著, ダイヤモンド社)の解説から、この答えを紐解いてみましょう。

富豪が稼ぎ続けるのは「他者貢献」のため

『嫌われる勇気』の中で、アドラー心理学を理解するためのキーワードになるのは「自己受容」「他者信頼」「他者貢献」の3つとされています。
このうち、潤沢なお金があっても稼ぎ続ける大富豪は「他者貢献」を目的にしていると同書では述べています。

「他者貢献」を分かりやすくいえば「ここにいてもいいんだ」という「所属感」を確認することです。
「他者貢献」をすることで何かのために役立っていると実感でき、「自己受容(ありのままの自分を受け入れられる状態)」が味わえる。それによって、人から裏切られることを恐れずに「他者信頼」ができるのです。このように「自己受容」「他者信頼」「他者貢献」というキーワードをループさせることで人生の満足度を高められるとするのがアドラー心理学のエッセンスといえるでしょう。

アドラー心理学の見解を借りるならば、リタイアすることなくお金を稼ぎ続ける大富豪の目的はお金そのものではなく、一言でいえば「自分の人生の満足度を高めること」といえるのではないでしょうか。

一生かけて大きな目標を達成するために働き続ける

『嫌われる勇気』以外にも大富豪・富裕層が稼ぎ続ける理由に触れた記述は数多く見られます。その中でよく見られる意見は、「お金持ちほど理想や目標が大きく、達成するために働き続ける」というものです。

お金だけが目的であれば、目標額に到達すれば早々にリタイアを考えても不思議ではありません。しかし老後も働き続ける大富豪や富裕層は、お金では買えない、一生をかけても達することが困難な目標があるとも考えられます。

「どのように他者貢献するのか」をイメージする

資産規模にかかわりなく老後も仕事を続けること、リタイアして悠々自適な生活を送ること、どちらも間違いではありません。

大切なことは「老後に訪れる長い時間を、どのように社会や周囲とかかわって他者貢献していけるか」ではないでしょうか。このイメージが欠けていると、いくら財産を残しても、最後に自分の人生を振り返ったときに満足度の低い人生だったと嘆くことになりかねません。

「老後も仕事を続けることが他者貢献になる」のか、「リタイアしても他者貢献を十分していける」のか。
自分の人生の在り方について、一度じっくりと立ち止まって考えてみてはいかがでしょうか。(提供:Wealth Lounge


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