血行が悪くなり、疲労物質が溜まることが原因
肩こりや腰痛に悩まされているビジネスパーソンは多い。整形外科医の小橋大恵氏は、ほとんどの場合、その原因は姿勢が悪いことにあると言う。どういうことなのか、話を聞いた。
腰痛には、椎間板ヘルニアなどの病気によるものもありますが、特に椅子に座っている時間が長いホワイトカラーの場合、ほとんどは姿勢が悪いことが原因です。姿勢が悪いと、血行が悪くなり、疲労物質が溜まってしまいます。それが腰痛を引き起こすのです。肩こりも同様です。
ですから、腰痛や肩こりを防ぐためには、筋肉を動かして血行を良くすることが大切なのですが、仕事でどうしても座っている時間が長くなるのなら、筋肉への負担が少ない姿勢で座ること。そして、50分間座り続けたら、10分間、肩を上下させたり、左右の肩甲骨を引き寄せたりといった軽い体操をするなど、身体を動かすのがいいでしょう。
筋肉への負担が少ない姿勢とは、ラクな姿勢ではありません。筋肉が本来あるべき位置や形になるような姿勢です。
具体的には、頭と脚、腕の位置に注意して座ってください。
頭については、視線が上にも下にも向きすぎないよう、PCのディスプレイの上辺が目の高さに合うようにしてください。また、ディスプレイに頭を近づけすぎると前傾姿勢になって腰に負担がかかりますし、逆に遠ざけすぎると首に負担がかかりますから、背筋をまっすぐにしてください。
脚は、かかとがしっかりと地面につき、膝の角度が90度になるよう、椅子の高さを調整してください。椅子が高すぎると腰椎の弯曲(わんきょく)が崩れて腰痛を引き起こしますし、低すぎると腕の位置が高くなって肩こりを引き起こします。
そして、腕の位置が低すぎると、首への負担が大きくなります。
猫背も腰痛や肩こりの原因になりますから、左右の肩甲骨を引き寄せて、猫背にならないようにしましょう。
このように正しい姿勢で座ると、初めは違和感があるかもしれませんが、そのうちに慣れてきます。習慣になるまで、意識して続けてください。
通勤電車の中などで立っているときも、正しい姿勢を取るように気をつけましょう。特にスマホの画面を観るときには視線を下に向けがちです。目の高さに持ち上げて使うようにしてください。猫背にも要注意です。
そして、脊椎の弯曲が本来のS字カーブになるように、クッション性があり、きちんと接地する靴底の靴を履いてください。ヒールの高い靴を履くと、身体のバランスを取るために腰に負担がかかるので、ヒールは高くても数センチまでにしてください。
重い荷物を片方の肩にかけるのも姿勢を悪くし、肩こりや頭痛につながります。左右交互にかけたり、リュックサック型の鞄やキャリーバッグを使ったりするのがいいでしょう。
また、腹筋が衰えているために、腰椎が前弯(前に弯曲)し、慢性腰痛を引き起こすケースもあります。その場合は腹筋を鍛えることが必要です。以前は背筋も鍛えることが推奨されていましたが、パーソナルトレーナーをつけるならともかく、むやみに鍛えようとするとむしろ腰痛を悪化させるので、お勧めしません。
寝るときは、仰向けなら、枕は低いほうがいい。バスタオルをたたんで枕にすれば十分です。腰への負担を減らすには横向きに寝るほうがいいのですが、その場合は、頭と脊椎がまっすぐになる高さの枕を使ってください。横向きに寝ると脚の位置が気になってしまう人は、脚の間に抱き枕を挟むといいでしょう。
腰痛や肩こりに悩んでいて、整体に通っている人も多いと思います。整体は、血行を良くするので、確かに一時的に痛みが取れます。しかし、根本的な解決にはなりません。ここでご紹介したように、正しい姿勢で日々を過ごすことが重要です。
また、痛みが続くようであれば、整形外科を受診してみるのもいいでしょう。痛み止めや筋弛緩剤を処方してもらえますし、病気が見つかる可能性もあります。例えば、頸椎の骨が変形することで起こる肩こりもあります。これは老化によるもので、50歳くらいでなる人もいます。腰部脊柱管狭窄症によって腰痛のような症状が出ることもあります。
なお、四十肩や五十肩は、姿勢が悪いこととはまったく別の原因で起こります。症状が出たら、整形外科を受診してください。
ぎっくり腰については、なぜ起こるのか、メカニズムが明確ではありません。中腰でモノを持ち上げようとしたときに起こることが多いので、モノを持ち上げるときは、膝から身体を落として持ち上げるようにするのが予防法の一つです。
小橋大恵(こばし・ひろえ)
医療法人社団天太会 チームメディカルクリニック理事長
1980年、群馬県生まれ。2005年に群馬大学卒業後、前橋赤十字病院、聖隷浜松病院、鶴岡市立荘内病院、池上総合病院などを経て、14年より現職。(『THE21オンライン』2020年01月31日 公開)
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