結果の概要:個人所得は市場予想を上回る一方、個人消費は市場予想に一致

米国,個人所得・消費支出
(画像=PIXTA)

3月27日、米商務省の経済分析局(BEA)は2月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.6%(前月:+0.6%)となり、前月に一致、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.4%を上回った(図表1)。個人消費支出は前月比+0.2%(前月:+0.2%)と、こちらは前月、市場予想(+0.2%)に一致した。また、価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は+0.1%(前月:+0.1%)と、こちらは前月に一致した一方、市場予想(+0.2%)は下回った(図表5)。貯蓄率(1)は8.2%(前月:7.9%)と、前月から+0.3%ポイント上昇した。

価格指数は、総合指数が前月比+0.1%(前月:+0.1%)と前月、市場予想(+0.1%)に一致した。また、変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数も+0.2%(前月改定値:+0.2%)と+0.1%から上方修正された前月値、市場予想(+0.2%)に一致した(図表6)。前年同月比では、総合指数が+1.8%(前月改定値:+1.8%)と+1.7%から上方修正された前月に一致した一方、市場予想(+1.7%)を上回った。コア指数は+1.8%(前月値改訂値:+1.7%)とこちらも+1.6%から上方修正された前月を上回ったほか、市場予想(+1.7%)も上回った(図表7)。

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(1)可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

結果の評価:2ヵ月連続で消費の伸びが所得を下回る。3月の消費は大幅に減少する見通し

個人所得(前月比)が2ヵ月連続で19年2月(+0.6%)以来の高い伸びを維持する一方、個人消費は2ヵ月連続で個人所得を下回る+0.2%の伸びに留まった。

米国,個人所得・消費支出
(画像=ニッセイ基礎研究所)

この結果、貯蓄率は19年12月の7.5%から+0.6%ポイント上昇し、19年3月以来の水準となるなど、所得対比で消費余力を残す結果となった。

もっとも、3月に入り米国内で新型コロナウイルスの感染者数が急増する中で、全米で3分の1以上の州で外出制限が課されており、消費への影響が懸念される。また、株式市場が不安定化しているほか、3月のミシガン大学消費者信頼感指数が前月から急落し、1ヵ月の低下幅が08年10月以来となるなど、個人消費を取り巻く環境も急速に悪化しており、3月の個人消費は前月からの大幅な減少が不可避の状況となっている。

一方、FRBが物価指標としているPCE価格指数(前年同月比)は、総合指数、コア指数ともに19年11月から反発がみられる。もっとも、原油価格は3月に入ってから40ドル台半ばから足元で20ドル台前半までおよそ半分に急落していることから、3月の総合指数は大幅な低下が見込まれる。

所得動向:賃金・給与、自営業者所得が高い伸び

個人所得の内訳をみると、利息・配当収入が前月比▲0.2%(前月:+0.4%)と前月からマイナスに転じたものの、賃金・給与が+0.5%(前月:+0.2%)と19年10月(+0.5%)以来となった前月から2ヵ月連続で高い伸びを維持した(図表2)。また、自営業者所得も+2.8%(前月:+0.9%)の大幅な伸びとなった。これは、農業部門の所得が前月比+135.9%の大幅な伸びとなったことが大きい。

一方、個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、2月が+0.5%(前月:+0.6%)と前月から小幅ながら伸びが鈍化した(図表3)。さらに、価格変動の影響を除いた実質ベースも+0.4%(前月:+0.5%)と19年8月以来の伸びとなった前月から小幅ながら伸びが鈍化した。

米国,個人所得・消費支出
(画像=ニッセイ基礎研究所)

消費動向:財消費が減少する一方、サービス消費の伸びは加速

2月の名目個人消費(前月比)は、財消費が▲0.3%(前月:+0.3%)と前月からマイナスに転じた一方、サービス消費は+0.4%(前月:+0.2%)と、前月から伸びが加速した(図表4)。

財消費では、耐久財が▲0.5%(前月:+0.6%)となったほか、非耐久財も▲0.2%(前月:+0.1%)となり、いずれも前月からマイナスに転じた。

耐久財では、家具・家電が横ばい(前月:+1.7%)と前月から伸びが鈍化したほか、娯楽財・スポーツカーが▲0.2%(前月:+1.4%)と前月からマイナスに転じた。さらに、自動車・自動車部品が▲0.9%(前月:▲0.5%)と、こちらは3ヵ月連続のマイナスとなった。

非耐久財では、食料・飲料が+0.1%(前月:▲0.1%)と前月からプラスに転じた一方、衣料・靴が▲0.4%(前月:▲0.9%)、ガソリン・エネルギーが▲2.7%(前月:▲0.8%)と2ヵ月連続でマイナスとなった。とくに、ガソリン・エネルギーは前月からのマイナス幅が大幅に拡大した。

サービス消費は、娯楽が▲0.4%(前月:+0.8%)、外食・宿泊が▲0.5%(前月:+0.5%)と前月からマイナスに転じた一方、住宅・公共料金が+1.0%(前月:横ばい)と前月から大幅に伸びが加速し、全体を押し下げた。

米国,個人所得・消費支出
(画像=ニッセイ基礎研究所)

価格指数:エネルギー価格は前年同月比で3ヵ月連続物価を押し上げ

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が▲2.2%(前月:▲0.7%)と2ヵ月連続で物価押し下げとなったほか、押し下げ幅が拡大した(図表6)。一方、食料品価格指数は+0.5%(前月:+0.3%)と前月から伸びが加速した。

前年同月比では、エネルギー価格指数が+2.8%(前月:+5.6%)とこちらは3ヵ月連続でプラスとなった(図表7)。もっとも、前述のとおり原油価格が3月に急落していることから、3月は大幅なマイナスに転じる可能性が高い。一方、食料品価格指数は+0.8%(前月:+0.8%)とこちらは17年7月以来32ヵ月連続のプラスとなった。

米国,個人所得・消費支出
(画像=ニッセイ基礎研究所)

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窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員

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