景気は全面的な落ち込みに。4-6月期GDPは年率▲20%超も視野に

製造業の本格的な悪化はこれから

コロナ,影響
(画像=PIXTA)

日本ではまだ3月分のハードデータの公表は本格化していないが、景況感を示すソフトデータは3、4月の結果が既に公表されており、軒並み急低下となっている。このソフトデータの悪化の内訳で共通しているのは、サービス業が著しく落ち込んでいることであり、リーマンショック時を超えるスピードでの悪化となっている。2月末以降、外出自粛やイベント中止などが広がった上、4月には緊急事態宣言発令によりこうした動きが一段と強まったことが背景にある。一方、製造業については今のところサービス業と比較すると低下スピードはマイルドであり、リーマンショック時の水準とはまだ距離がある。先日公表された3月の貿易統計でも、日本銀行が試算する実質輸出は季節調整済前月比▲3.4%、1-3 月期は前期比▲1.7%であり、減少はしているものの、まだ急減にまでは至っていない。

今後は製造業でも悪化が加速か
(画像=第一生命経済研究所)
今後は製造業でも悪化が加速か
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もっとも、製造業の悪化度合いが限定的という状況は3月で終わり、今後は製造業でも悪化ペースが急加速していく可能性が高い。既にその兆候は見て取れる。前述の貿易統計では、輸出金額は3月全体でみれば前年比▲11.7%だったが、これを旬別にみると、上中旬は前年比▲5.9%(上旬:▲8.9%、中旬:▲3.1%)、下旬は前年比▲20.8%と、前年よりも下旬の通関日数が一日多いにもかかわらず、月末にかけて減少ペースが加速したことが確認できる。3月中旬以降、欧州のみならず米国でも感染封じ込めの動きが強まり、経済活動が大幅に抑制されたことの影響が出始めているとみられる。4月にはこうした動きが一段と強まったことから考えて、4月以降の輸出は急減が避けられないだろう。こうした海外需要の急減を受け、日本でも主力産業である自動車などで、工場の稼働停止の動きが広がっている。4月以降の生産の落ち込みは著しいものになるとみられ、4-6月期の鉱工業生産指数は前期比で二桁の急減となる可能性が高いだろう。

このように、先行きは製造業でも悪化が急激に進む可能性が高く、「製造業では相対的に落ち込みがマイルド」という状況は過去のものになるだろう。また、サービス業や製造業のほか、建設業においても、緊急事態宣言の発令を受けて工事を中止する動きが広がっている。内外需ともに状況は非常に厳しく、下支え役不在のなか、日本経済は全面的な落ち込みとなる可能性が高い。リーマンショック時の2009年1-3月期実質GDP成長率は前期比年率▲17.8%となっていたが、2020年4-6月期の落ち込みがそれを上回り、前期比年率で▲20%以上の減少となる可能性も十分あるだろう。(提供:第一生命経済研究所

第一生命経済研究所 調査研究本部
経済調査部長・主席エコノミスト 新家 義貴