20年3月のASEAN主要6カ国の輸出(ドル建て、通関ベース)は前年同月比0.0%減(前月:同11.7%増)と大きく低下し、2ヵ月ぶりに減少した(図表1)。輸出の伸び率は、今年1-2月に中華圏の旧正月の連休時期のずれの影響で大きく変動した後、3月は微減に止まったため、昨年から続く減少傾向に歯止めが掛かりつつあるようにみえる。しかし、足元の輸出は電子製品や非貨幣用金の出荷増が下支えているとはいえ、新型コロナウイルスの感染拡大を背景とする世界的な需要減退やサプライチェーンの混乱、国内外の活動制限措置により急減した国が出始めている。欧米や東南アジア諸国が活動制限措置を取ったのは3月中旬以降であり、4月の輸出は一段の悪化が避けられないだろう。

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ASEAN6カ国の仕向け地別の輸出動向を見ると、3月は北米向け(同11.2%増)二桁増を維持したものの、EU向け(同8.7%減)が再び減少、東南アジア向け(同0.3%増)と東アジア向け(同0.6%増)が鈍化した(図表2)。

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タイの20年3月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比4.2%増(前月:同4.5%減)と上昇した。輸出は昨年減少傾向が続いたが、年末から持ち直しの動きがみられる。3月は新型コロナの世界的流行を背景とした油価下落を受けて石油関連製品が急減したが、非貨幣用金や電子製品の出荷に後押しされて増加した。また輸入額は前年同月比7.3%増(前月:同4.3%減)と3カ月ぶりのプラスとなった結果、貿易収支は15.9億ドルとなり、前月から23.1億ドル悪化した(図表3)。

輸出を品目別に見ると、全体の約8割を占める主要工業製品は同6.4%増(前月:同5.2%減)と上昇して2ヵ月ぶりのプラスとなった(図表4)。工業製品の内訳を見ると、主力の自動車・部品(同21.2%減)が急減、機械・装置(同15.9%減)と石油化学製品(同9.8%減)が低迷したものの、電子機器(同11.9%増)と非貨幣用金(同217.0%増)、金属・鉄鋼(同20.0%増)が大きく増加した。また鉱業・燃料は同19.7%減(前月:同6.6%増)となり、石油製品(同18.6%減)を中心に3カ月ぶりに減少した。また農産物・加工品は同1.1%減(前月:同3.0%減)と低迷した。畜産物(同52.7%増)や果物(同16.5%増)、ゴム製品(同7.8%増)が増加する一方、コメ(同13.2%減)や天然ゴム(同24.7%減)、タピオカ(同19.5%減)が大きく減少するなど、品目毎のバラつきがみられた。

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ベトナムの20年3月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比6.0%増(前月:同50.3%増)と低下した。輸出の伸び率は昨年、概ね好調に推移したが、今年1-2月に旧正月の連休時期のずれとサムスン電子の新型スマホの輸出開始の影響が重なって上下に大きく振れた後、3月は新型コロナ感染拡大の影響があらわれ始め、増勢が鈍化した。また輸入額も前年同月比4.7%増(前月:同26.4%増)と低下した結果、貿易収支は19.8億ドルとなり、2.9億ドル悪化した(図表5)。

輸出を品目別に見ると、まず輸出全体の約2割を占める電話・部品が同1.2%減(前月:同40.9%増)と再び減少したものの、電気製品・同部品が同30.8%増(前月:同54.7%増)と好調だった(図表6)。また繊維関連では、織物・衣類が同7.7%減(前月:同71.2%増)と減少した一方、履物が同6.5%増(前月:同59.7%減)と底堅い伸びを維持した。農林水産物を見ると、コメ(同8.4%減)、コーヒー(同1.0%減)、水産物(同7.7%減)、天然ゴム(同39.1%減)などがそれぞれマイナスに転じた。

輸出を資本別に見ると、全体の7割を占める外資系企業が1.3%増(前月:同42.8%増)と伸び悩んだが、地場企業が同17.8%増(前月:同70.3%増)と好調が続いた。

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マレーシアの20年3月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比9.5%減(前月:同9.5%増)と大きく低下、2ヵ月ぶりに減少した。昨年から続く輸出の減少傾向は昨年末から循環的底入れの動きがみられていたが、3月は新型コロナ感染拡大の影響が顕在化して主力の電気・電子製品や燃料、パーム油を中心に減少した。また輸入額も前年同月比7.7%減(前月:同9.0%増)と減少した結果、貿易収支は28.7億ドルとなり、前月から1.6億ドル悪化した(図表7)。

輸出を品目別に見ると、全体の約4割を占める機械・輸送用機器は同13.2%減(前月:同1.5%減)と、主力の電気・電子製品(同18.3%減)を中心に低下して9カ月ぶりの二桁減となった(図表8)。また鉱物性燃料は同0.7%増(前月:同4.2%増)と鈍化した。石油製品(同37.0%増)こそ大きく増加したものの、天然ガス(同17.8%減)と原油(同9.1%減)の出荷減少が響いた。このほか、動植物性油脂が同7.3%減(前月:同13.0%増)、化学製品が同9.8%減(前月:同8.2%増)となり、それぞれ減少した。

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インドネシアの20年3月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比0.2%減(前月:同12.0%増)と低下した。輸出の伸び率は、昨年から世界的な需要減退と商品価格の下落を背景に主力の資源関連が振るわず低迷しているが、年末頃から循環的底入れの動きがみられる。一方、輸入額は前年同月比0.8%減(前月:同5.5%減)とマイナス幅が縮小した結果、貿易収支は7.4億ドルとなり、前月から17.7億ドル悪化した(図表9)。

全体の9割を占める非石油ガス輸出が同3.4%増(前月:同15.8%増)と鈍化、石油ガス輸出が同40.9%減(前月:同27.5%減)と一段と減少した(図表10)。品目別に見ると、電気機械(同22.0%増)と機械類(同15.3%増)、鉄・鉄鋼製品(同32.2%増)、動植物性油脂(同17.1%増)が大幅増を記録したほか、自動車・同部品(同7.9%増)が増加した。一方、織物類(同14.0%減)や紙製品(同16.8%減)といった軽工業品、鉱産物(同23.7%減)が減少した。

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シンガポールの20年3月の輸出額(石油と再輸出除く、ドル建て、通関ベース)は前年同月比12.4%増(前月:同0.4%増)と上昇した。輸出の伸び率は昨年から電子製品や化学製品といった主力の輸出品が落ち込んで低迷していたが、足元では循環的底入れの動きがみられる。なお、総輸出額は前年同月比5.0%減(前月:同0.2%減)、総輸入額は同4.2%減(前月:同6.6%増)となり、それぞれ低下した。結果として、貿易収支が24.8億ドルとなり、前月から15.0億ドル改善した(図表11)。

輸出(石油と再輸出除く)を品目別に見ると、まず全体の約3割を占める電子製品が同1.1%増(前月:同0.1%減)と小幅のプラスとなった(図表12)。電子製品の内訳を見ると、PC(同37.7%減)が低迷、PC部品(同13.9%減)も減少したものの、主力のIC(同2.0%増)がプラスに転じると共に、通信機器(同8.6%増)が加速した。また電子製品と並び全体の約3割を占める化学は同0.9%減(前月:同2.6%増)と低下して2カ月ぶりのマイナスとなった。化学製品の内訳を見ると、医薬品(同42.0%増)が好調だったものの、石油化学製品(同25.9%減)が大幅に減少した。このほか、その他製造品(同9.2%増)や非貨幣用金の増加が輸出全体を押し上げた。

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フィリピンの20年3月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比24.9%減(前月:同2.8%増)と急減した。輸出の基調は、昨年から電子製品と一次産品の増加を支えに概ねプラス圏の伸びが続いていたが、3月は新型コロナの感染拡大による外部環境の悪化やサプライチェーンの混乱、首都圏のロックダウンの影響により大幅に減少した。また輸入額は前年同月比26.2%減(前月:同11.6%減)と一段と減少した。結果として、貿易収支は23.8億ドルの赤字となり、前月から7.2億ドル悪化した(図表13)。

輸出シェア上位10品目を見ると、まず輸出全体の5割強を占める電子製品は同24.0%減(前月:同3.4%増)と大きく低下、1年ぶりのマイナスとなった(図表14)。電子製品の内訳を見ると、電子データ処理機(同283.3%増)が大幅増となったものの、主力の半導体デバイス(同22.7%減)とオフィス機器(同23.4%減)がそれぞれ急減した。その他9品目のうち、製錬銅(同1.2%増)こそ僅かに増加したが、金属部品(同40.9%減)と機械・輸送用機器(同33.1%減)、イグニッションワイヤーセット(同22.9%減)、ココナッツオイル(同22.0%減)、金(同14.8%減)、生鮮バナナ(同14.3%減)、その他鉱物製品(14.2%減)、その他製造品(同11.7%減)となり、多くの品目が減少した。

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斉藤誠(さいとう まこと)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 准主任研究員

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