要旨
● 新型コロナウイルスの感染拡大により、消費の構造が変化している。総務省の「家計調査」を品目毎に解析し、平時とは大きく異なる動きをした品目を抽出した。
● 平時とは異なる動きをした品目は2月:26品目から3月:98品目に急増。3月の内訳をみると、「食」「移動」「レジャー」「教育」などの分野で新型コロナウイルスの感染拡大に伴う需要の減少やシフトが観察された。緊急事態宣言の発令された4月には、こうした傾向が一層強まるとみられる。
新型コロナで消費が大きく増えた品目、減った品目を抽出
本日公表された3月の総務省の「家計調査」について、品目別の消費支出額で平時とは大きく異なる変動があった品目(各品目毎の前年差が平均±2標準偏差を超える増減を示した品目、2000年~のデータを利用して平均、標準偏差を算出)を抽出した。結果、平時とは異なる動きをした品目は2月:26品目から3月:98品目に急増。抽出された品目を資料にまとめた。抽出された品目から読み取れる特徴として以下が挙げられる。緊急事態宣言発令後の4月にはこうした傾向が一層強まる可能性が高い。
(食)
外食→内食シフトの影響が顕著。「飲酒代」など外食関連は軒並み減少項目として抽出されている。一方で、増加品目の多くには「豚肉」「卵」「牛乳」などの食料品が並ぶ。「カップ麺」「冷凍調理食品」など買いだめ需要とみられる品目も。
(日用品)
「トイレットペーパー」や「浴用・洗顔石けん」が増加。供給不安や衛生対策に対する需要を反映した動き。マスクを含む保健用消耗品は今回の基準では3月に抽出されず、伸び率にも落ち着き(2月:前年比+38.9%→3月:同+19.1%)。需要に落ち着きがみられたか、世界的に感染が広がる中で供給体制が整わずに“買いたくても買えない状態”になっている可能性が考えられる。
(教育)
休校影響で「教科書」が減。「高校補習教育・予備校」が減少する一方で、「幼児・小学校補習教育」は増加品目として抽出。通信教育が普及している幼児・小学生への教育は休校措置などに伴って需要が増加したとみられる一方、高校補習教育は外出を伴う予備校などで需要が減った可能性がある。なお、「幼児教育費用」の減少は昨年10月から開始された幼児教育無償化の影響。
(モビリティ)
人の移動が減少したことから、「鉄道運賃」「航空運賃」「タクシー代」「有料道路料」などが軒並み減少。一方で、自動車整備費が増加項目として抽出。人混みを伴う公共交通機関を避け、自家用車で移動する人が増えていることを映じた動きとみられる。
(娯楽などのサービス)
国内パック旅行、宿泊料が減少。そのほか、映画・演劇などの「入場料」も減少品目として抽出された。「スポーツ月謝」、「理髪料」など外出の伴うサービスも減少品目として抽出。数少ない増加品目がゲームソフト。自宅での娯楽に対する需要の増加を反映している。
(その他)
「贈与金」が大きく減少。外出自粛に伴う交流の減少が影響した可能性がある。「インターネット接続料」が増加。テレワークの広まりに伴って、自宅の通信環境整備が必要となったこと、自宅での娯楽サービス需要拡大に伴うものとみられる。(提供:第一生命経済研究所)
第一生命経済研究所 調査研究本部 経済調査部 副主任エコノミスト 星野 卓也