1-3月期は前期比年率▲3.4%と2四半期連続のマイナス成長

本日(5/18)発表された2020年1-3月期の実質GDP(1次速報値)は、前期比▲0.9%(前期比年率▲3.4%)と2四半期連続のマイナス成長となった(当研究所予測4月30日:前期比▲0.9%、年率▲3.6%)。

新型コロナウィルスの感染拡大を受けた政府の自粛要請の影響で、民間消費(前期比▲0.7%)、住宅投資(同▲4.5%)、設備投資(同▲0.5%)の国内民間需要がいずれも減少したことに加え、インバウンド需要の激減で財貨・サービスの輸出が前期比▲6.0%と大幅に減少し、財貨・サービスの輸入の減少幅(同▲4.9%)を上回ったため、外需(前期比・寄与度▲0.2%)も成長率を押し下げた。

名目GDPは前期比▲0.8%(前期比年率▲3.1%)と2四半期連続の減少となったが、実質の伸びは上回った。GDPデフレーターは前期比0.1%(10-12月期:同0.3%)、前年比0.9%(10-12月期:同1.2%)であった。

2020年1-3月期の1次速報と同時に基礎統計の改定や季節調整のかけ直しなどから過去の成長率も遡及改定され、2019年4-6月期から2019年10-12月期までの実質GDP成長率がいずれも若干下方修正された(4-6月期:前期比年率2.3%→同2.1%、7-9月期:前期比年率0.1%→同0.0%、10-12月期:前期比年率▲7.1%→同▲7.3%)。

この結果、2019年度の実質GDP成長率は▲0.1%(2018年度は0.3%)と5年ぶりのマイナス成長、名目GDP成長率は0.7%(2018年度は0.1%)となった。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

●需要項目別の動き

民間消費は前期比▲0.7%と2四半期連続で減少した。消費は消費税率引き上げ後の大幅な落ち込みから持ち直しつつあったが、新型コロナウィルスの感染拡大に伴う政府の自粛要請を受けて、外食、旅行、娯楽などのサービスを中心として3月に急速に落ち込んだ。

実質家計消費の内訳を形態別にみると、自動車、家電製品などの耐久財(前期比1.6%)、食料品などの非耐久財(同1.1%)は増加したが、外出自粛の影響を強く受けた、被服・履物、家具などの半耐久財(同▲5.7%)、交通、外食、旅行、宿泊などのサービス(前期比▲2.3%)が大幅に減少した。4-6月期の民間消費は、外出自粛や飲食、娯楽施設などの休業要請の影響で減少幅が急拡大する可能性が高い。

住宅投資は前期比▲4.5%と2四半期連続で減少し、10-12月期の同▲2.5%からマイナス幅が拡大した。住宅投資は、消費税率引き上げの影響などから弱い動きが続いている。新設住宅着工戸数(季節調整済・年率換算値)は90万戸台の推移が続いていたが、2019年10-12月期以降は80万戸台へと水準を切り下げている。利用関係別には、減少が続いていた貸家は下げ止まりの動きがみられるが、消費税率引き上げの影響で分譲がこのところ大きく減少している。

先行きについては、外出自粛による悪影響に加え、新型コロナ終息後も雇用所得環境の悪化が下押し要因となるため、住宅投資の低迷は長期化する可能性が高い。

設備投資は前期比▲0.5%と2四半期連続で減少した。設備投資は、高水準の企業収益を背景に、人手不足対応の省力化投資、都市再開発やインバウンド関連の建設投資、研究開発投資を中心に堅調に推移してきた。企業収益は、海外経済の減速や消費税率引き上げの影響ですでに弱い動きとなっていたが、新型コロナウィルスの影響で一段と悪化することは避けられない。設備投資の回復基調は途切れてしまったと判断される。

日銀短観2020年3月調査では、2020年度の当初計画は前年度比1.3%(全規模・全産業、含むソフトウェア投資、除く土地投資額)となり、2019年度の当初計画(同0.2%)を上回った。しかし、2020年度入り後の経済活動の収縮、企業収益の悪化を受けて、投資計画の先送り、中止が相次ぐことが見込まれるため、6月調査以降下方修正される可能性が高い。

公的固定資本形成は前期比▲0.4%と5四半期ぶりに減少した。公的固定資本形成は、2018年12月に閣議決定した「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」に基づく公共事業関係費の積み増しを背景に増加を続けてきたが、1-3月期はそれまでの高い伸びの反動もあり、減少に転じたとみられる。緊急事態宣言を受けて建設業者が一時工事を中断したこともあり、公的固定資本形成は4-6月期も減少することが予想される。

外需寄与度は前期比▲0.2%(前期比年率▲0.8%)と2四半期ぶりのマイナスとなった。財貨・サービスの輸出(前期比▲6.0%)、財貨・サービスの輸入(同▲4.9%)がいずれも大幅に減少したが、輸出の落ち込み幅が大きかったため、外需は成長率の押し下げ要因となった。

世界各国の渡航制限を受けて、サービスの輸出入がいずれも大きく減少したが、出国日本人数の減少を訪日外客数の減少が上回ったため、サービス輸出の減少幅(前期比▲19.1%)がサービス輸入の減少幅(同▲5.4%)を大きく上回った。

●4-6月期はリーマン・ショック後を超えるマイナス成長へ

2020年1-3月期は、新型コロナウィルスの感染拡大の影響で2四半期連続のマイナス成長となった。成長率のマイナス幅は2019年10-12月期から縮小したが、消費税率引き上げの影響で大きく落ち込んだ後であることを踏まえれば、経済の実態は見た目以上に厳しい。日本経済は、消費税率引き上げ後の落ち込みから徐々に持ち直しつつあったが、新型コロナウィルスの感染拡大とそれに伴う自粛要請によって、その流れは完全に途切れてしまった。

4月以降は、緊急事態宣言の発令とそれに伴う商業施設、遊興施設、劇場等の休業要請を受けて民間消費の減少幅が急拡大することに加え、外出自粛の影響で住宅投資、設備投資の大幅減少が不可避とみられることから、経済活動の縮小ペースは一段と加速する可能性が高い。現時点では4-6月期の実質GDPは、リーマン・ショック後の2009年1-3月期(前期比年率▲17.8%)を超える前期比年率▲20%台のマイナス成長になると予想している。


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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長・総合政策研究部兼任

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