結果の概要:着工、許可件数ともに前月から大幅下落、許可件数は予想を上回る

米住宅着工、許可件数
(画像=PIXTA)

5月19日、米国センサス局は4月の住宅着工、許可件数を発表した。住宅着工件数(季節調整済、年率)は89.1万件(前月改定値:127.6万件)と121.6万件から上方修正された前月値を大幅に下回り、市場予想の90.0万件(Bloomberg集計の中央値)も下回った(図表1、図表3)。

住宅着工許可件数(季節調整済、年率)は107.4万件(前月改定値:135.6万件)と、135.3万件から小幅に上方修正された前月を大幅に下回ったものの、市場予想の100.0万件は上回った(図表2、図表5)。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

結果の評価:新型コロナの影響で2ヵ月連続大幅下落も、足元で底打ちの兆し

住宅着工件数の伸びは、前月比▲30.2%(前月:▲18.6%)と1959年の統計開始以来最大の落ち込みとなった(図表3)。内訳をみると、戸建てが▲25.4%(前月:▲15.8%)、集合住宅も▲40.5%(前月:▲24.0%)といずれも前月に続いて2桁の大幅な落ち込みとなった(図表4)。

前年同月比では▲29.7%(前月:+6.1%)と19年5月(▲4.9%)以来のマイナスに転じたほか、09年10月(▲31.3%)以来の下落率となった。また、戸建てが▲24.8%(前月:+3.7%)と11年4月(▲26.7%)以来、集合住宅が▲40.2%(前月:+11.6%)と10年2月(▲65.2%)以来の下落率となった。

地域別寄与度(前月比)は、北東部が▲2.7%ポイント(前月:▲2.7%ポイント)、中西部が▲1.8%ポイント(前月:▲2.7%ポイント)、南部が▲14.7%ポイント(前月:▲9.6%ポイント)、西部が▲11.1%ポイント(前月:▲3.5%ポイント)と全ての地域で前月に続きマイナスとなった。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

先行指標である住宅着工許可件数は、前月比▲20.8%(前月:▲5.7%)と3ヵ月連続のマイナスとなったほか、08年7月(▲21.9%)以来の下落率となった(図表5)。戸建てが▲24.3%(前月:▲11.1%)と2ヵ月連続、集合住宅も▲14.2%(前月:+6.3%)とマイナスに転じた(図表6)。

前年同月比は▲19.2%(前月:+2.2%)と09年10月(▲20.8%)以来の下落率となった。戸建てが▲16.4%(前月:+7.3%)と11年3月(▲25.6%)以来、集合住宅が▲23.6%(前月:▲8.4%)と16年6月(▲31.9%)以来の下落率となった。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

一方、全米建設業協会(NAHB)による戸建て新築住宅販売のセンチメントを示す住宅市場指数は、5月が37(前月:30)で前月比+7ポイントと統計開始以来最大の落ち込み(▲42ポイント)となった前月からは小幅ながら反発した(図表7)。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

指数の内訳は販売現況が42(前月:36)、販売見込みが46(前月:36)、客足が21(前月:13)と3指数ともに反発がみられた。

同協会は、新型コロナに関連して国土安全保障省から、建設業が絶対不可欠なインフラ労働者に指定され、自宅待機命令の対象外となり、殆どの建設従業者が仕事を維持できていることが、5月の信頼感回復に繋がったとしている。このため、5月の着工件数は底打ちする可能性もでている。


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窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員

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