相続にあたり、海外にある資産を相続するという場合もあるでしょう。その場合、納税義務が発生するのはどんな人か、海外不動産の価格はどうやって算定するのか、為替レートはどう影響するかなど、海外資産の相続で気になるポイントをチェックします。

納税義務がある人とは

相続
(画像=4 PM production/Shutterstock.com)

まず、「相続税の納税義務がある人」とはどんな人なのでしょうか。相続人は、以下の2点のどちらか片方にでも当てはまる場合、「無制限納税義務者」に区分され、海外資産を相続する際も納税義務が発生します。

・居住無制限納税義務者
相続発生時に、相続人または被相続人が日本に住んでいるケースにあてはまる人。

・非居住無制限納税義務者
相続発生時に日本に居住していなかったが、過去10年以内に相続人または被相続人が日本に住んでいたケースにあてはまる人。

「無制限納税義務者」は、国内・海外すべての資産に日本の相続税が課税されます。一方、海外移住してから10年以上経過している場合は「制限納税義務者」となり、日本国内の財産のみに課税されることになります。

「外国税額控除」とは何か

ここで、「海外ですでに相続税を支払っている場合、日本で相続税が課されると、二重課税になるのではないか」という疑問が生じます。この問題を解決するのが、「外国税額控除」です。「外国税額控除」とは、海外と国内の二重課税を防ぐために、外国で納めた相続税を日本の相続税から差し引くことができる制度です。

以下の少ないほうの金額を控除できます。
・外国で支払った相続税の額
・日本で納める相続税の額×(海外にある財産の額÷相続人の相続財産の額)

外国で納めた税額が日本で納める税額より多い場合は、それ以上納税する必要はありません。日本で納める税金のほうが多い場合は、その差額を日本で納税することになります。

海外不動産の評価額はどう決まる?

では、海外不動産の評価額はどのように算定するのでしょうか。国税庁の財産評価基本通達5-2「国外財産の評価」では、「土地については、原則として売買実例価額、地価の公示制度に基づく価格及び鑑定評価額等を参酌して評価します」として、以下の3つの方法が提示されています。

・売買実例価額
海外で実際に売買された価額を基に算出します。いわば時価評価にあたります。

・地価の公示制度に基づく価格
路線価や固定資産税評価額といった、国が公示する価格に基づいて算出します。ただし、国によっては路線価の取り決めがない場合があります。

・鑑定評価額
不動産会社や、不動産鑑定士などの専門家に鑑定を依頼して算出します。

海外不動産相続の節税方法2例

為替レートの影響を考える

海外資産を相続する場合、気になるのが為替レートの影響です。海外資産を評価する時や、売却して譲渡所得を得る時は日本円に換算するため、当然ながら為替レートの影響を受けることになります。用いられるレートは、対顧客直物電信売相場(TTS)と対顧客直物電信買相場(TTB)の仲値です。その場合、円高に振れている時のほうがドルの価値が低いので、節税になります。

【計算例】海外不動産価格時価10万ドルの土地を評価する場合
1ドル100円の場合……10万ドル×100=1,000万円
1ドル110円の場合……10万ドル×110=1,100万円

このように、10円円高になると土地の評価額が100万円安くなり、差額の100万円に対する相続税が節税になります。

「小規模宅地等の特例」を利用する

海外不動産の相続においては、「小規模宅地等の特例」が節税に利用できます。これは、相続する宅地が居住用で330平方メートル以下の場合、相続税評価額に対して80%が減額される制度です。この特例は所在地の取り決めがないため、要件を満たしていれば海外不動産にも適用できます。

海外にある不動産も、家族にとっては大切な財産です。少しでも節税になる方法を選択し、有意義な相続にしたいものです。(提供:相続MEMO


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