国際的な音声やデータ通信のほとんどが国際間の海底ケーブルを通じ伝送されている。

情報量の大幅増加により、大手IT企業のグーグル、フェイスブックやアマゾン等は独自の光ケーブルを海中に敷くようになっている。実に国際通信の99パーセントは海底ケーブルを通じて行われており衛星通信より速度が速いのが特徴だ。例えば、日本とアメリカの距離は約9000キロメートル。通信衛星は地上から3万6000キロ上空にあるし、電波は上って下りてこない届かないため、2つの場所を結ぶ距離は7万2000キロになる。他方で海底ケーブルの場合は、2つの場所を結ぶ距離は約9000キロと衛星に比べてずっと短いため情報が速く届くのである。

原田武夫国際戦略情報研究所
(出典:日本電気(NEC)

その各社独自の海底ケーブルの先にはハイパースケールなデータセンターが存在しており、地球規模でのネットワークを形成している。日本においては日本電気(NEC)が海底ケーブルにおけるリーディングカンパニーである。留意すべきはこの海底ケーブルが切れたりすることが多々あるということである。日本でも漁網や錨がケーブルを傷つけ切断してしまったり、地震によって切れてしまったりしたこともある。具体的には2011年の東日本大震災でも海底ケーブル切断が確認されている。また、通信を遮断しようと画策する

国が意図的に切断するケースも少なからずある。古い例では1914年に第一次世界大戦が勃発した時にはドイツへとつながる海底ケーブルが切断されている。そして、2013年にはエジプト近海の海底ケーブルを切断しようとしたとして3人が逮捕される事件も発生している。

海底ケーブルは米ハワイ、英国、シンガポールや日本など島にとっては必須のものであり、海底ケーブルを仮に失えば情報社会の現代において真っ先に孤立してしまうのである。

他方で、最早我々にとってなくてはならない通信インフラとも言える海底ケーブルであるが、自前のものであればデータセンターの最適化にも寄与することになるし、それによってさらにサービス品質が向上し、通信の高速化とともに高度な自動制御などにも活用することが可能になる。何より、各地の物流・グリッドなどの情報、更には決済情報などからリアルタイムの経済を知ることが可能になる。そうした観点から見ればEQUINIX(エクイニクス)も注目すべき企業であろう。

株式会社原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)
元キャリア外交官である原田武夫が2007年に設立登記(本社:東京・丸の内)。グローバル・マクロ(国際的な資金循環)と地政学リスクの分析をベースとした予測分析シナリオを定量分析と定性分析による独自の手法で作成・公表している。それに基づく調査分析レポートはトムソン・ロイターで配信され、国内外の有力機関投資家等から定評を得ている。「パックス・ジャポニカ」の実現を掲げた独立系シンクタンクとしての活動の他、国内外有力企業に対する経営コンサルティングや社会貢献活動にも積極的に取り組んでいる。

羽富 宏文
中央大学文学部哲学科卒業。2019年まで日本放送協会(NHK)・東京メトロポリタンテレビジョン株式会社(TOKYOMX)・株式会社テレビ神奈川(tvk)に在籍。
各局に在職中は主に報道部門でディレクター・記者としてニュース取材・番組制作に携わる。2014年からはノンフィクション書籍を定期的に出版。2019年11月より現職(グローバル・インテリジェンス・ユニット リサーチャー)。