※本連載は日本でまだ翻訳されていない海外のビジネス書を紹介しています、書籍タイトルは著者による翻訳です

時代の変化に取り残される、決断が遅い、生産性が低い。組織がこのような状態に陥ってしまう要因は何か。人材か。

実は、このような問題を抱えた組織においても、そこで働く人材は十分に優秀であるというケースは少なくない。

優秀な人材が集まって働いているにも関わらず、鈍化する企業。

その謎に迫る一冊。

Humanocracy『人間主義政治』
ゲイリー・ハメル著
ミケーレ・ザニーニ著
出版社:Harvard Business Review Press
発売日:2020年8月18日
ジャンル:ビジネス書

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書籍概要

優秀な人材が働く、鈍化した組織。そのようなねじれ状態に陥ってしまう要因は、脈々と続いてきた官僚制にあると著者は述べる。

世界中で本当に企業に貢献する仕事をしている人材はたった13%程度で、残りの職員は出社はするものの、クリエイティビティや熱意は自宅に残している…そんな衝撃的な主張さえなされています。

著者は更に踏み込みます。著者の独自の計算によると、官僚制による全世界の経済的損失は毎年9兆ドル以上になるとのこと。

これは、驚くべき数字である。

トップダウン構造、独自のルールが詰まった管理システムといった官僚制の特徴的なシステムは、そこで働く人材のクリエイティビティを破壊し、イニシアチブを台無しにする。

働き始めたタイミングでは優秀であった人材が、働くに連れて鈍化し、自分の頭で考えることをやめていく。

このような仕組みと流れにおいて、多くの組織が犠牲になっていると著者は考えている。

このような官僚制を脱却し、生産性のある組織に作り替えていくためのテキストが、この書籍なのである。

官僚制ではなく、人間主義の原則(所有権、市場、実力主義、コミュニティ、開放性、実験及びバラドックス)を組織のDNAに組み込んでいくこと。これが、組織を救う手立てであると著者は述べている。

官僚制に変わり、組織を健全に導いていく新たなあり方。人間主義を学ぶには、この書籍から始めるべきである。

この本をおすすめする読者層

組織を率いる人材、つまり経営者にとっては、一度は目を通しておくべき書籍と言えよう。中には耳が痛い内容もあるかもしれない、あるいは胸がドキッとする表現に出会う可能性もある。しかし、それは自らの組織から膿を洗い出し、健全な人間主義的組織に作り直すための重要なステップであると言えよう。

また、組織内で働く一人一人の人材にとっても、この書籍は無視することができない。

組織内での自らの貢献度や可能性、そして所属する組織の将来性や健全性を見極め、本当に効果的に貢献できる組織づくりを知ることは、優秀なビジネスパーソンとして欠かすことのできない視点である。

組織に所属し、組織の中で働く人材であれば、キャリアやポジション、役職に関わらず、すべての人材に関わる重要なテキストと言えよう。

著者について

ゲイリー・ハメル氏はアメリカを拠点に活動する経営学者であり、自らも優秀な経営者である。

ミケーレ・ザニーニ氏は共同著者であり、ゲイリー・ハメル氏と並んでManagement Labの共同設立者でもある。