※本連載は日本でまだ翻訳されていない海外のビジネス書を紹介しています、書籍タイトルは著者による翻訳です

書籍概要

How Innovation Works『イノベーションの仕組み:なぜ自由に開花するのか』
マット・リドリー著
出版社:Fourth Estate Ltd
発売日:2020年6月25日
ジャンル:ビジネス書

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本書はベストセラーである『The Rational Optimist』を基に、イノベーションの歴史を年代順にまとめて、イノベーションに関する考え方を変える必要があることを指摘している。

イノベーションは生活水準を劇的に変化させるとともに、社会に対する不安感をもたらした。ドナルド・トランプによる政策やイギリスのEU離脱のような短期間に起きたことは関係なく、良くも悪くも21世紀を形成しているのはイノベーションそのものなのだ。

しかし、政策立案者やビジネスマンにイノベーションはあまり理解されていない。ただ避けられない事象とくらいしか捉えられていないのだ。

著者であるマット・リドリー(Matt Ridley)はイノベーションについての考え方を変える必要があると主張している。「イノベーションは発明とは全く異なる。なぜなら、イノベーションは発明されたものを実用的かつ手頃な価格で、人々が利用できるものに変化させることだからだ。またイノベーションは徐々に進行するもので、実験的で予測不可能なもの。経済学者によってまだモデル化はできていないが、政治家によって簡単に阻止されることもある」と続けている。

マット・リドリーは数多くのイノベーションがどのようにして起こったか、なぜ成功・失敗したのかを本書で解説しており、抽象的な議論でなく
・蒸気エンジン
・ジェットエンジン
・飛行機
・ソーシャルメディア
など、過去から現在にかけて起きたイノベーションに基づき語られている。

この本をおすすめする読者層

イノベーションが現代をどのように形成してきたか、そしてイノベーションのプロセスが現代世界になぜ不可欠なのかについて深く考察された1冊である。イノベーションの仕組みを知ることは、社会と政府の将来的な方向性を考える上で必要になるだろう。

特に大企業と政府の干渉が最小限な場合、イノベーションが頻繁に起きると指摘していることは非常に興味深い。さらに携帯電話が第二次世界大戦後に普及しなかったことや、20世紀最大のイノベーションである原子力が衰退している理由も本書では語られている。

イノベーションの歴史に興味がある方はもちろんのこと、マット・リドリーのイノベーションに対する深い洞察力を知りたい方におすすめだ。

著者について

マット・リドリーはイギリスの貴族であり科学ジャーナリストである。著書は『ゲノムが語る23の物語』『やわらかな遺伝子』『繁栄-明日を切り拓くための人類10万年史』など、世界30カ国で100万部以上の販売実績がある。