不動産オーナーが新型コロナ関連の家賃支援制度について熟知していると、家賃滞納リスクが高まったときに入居者やテナントをサポートしやすくなります。ここでは、賃貸住宅の入居者向けの「住居確保給付金」とテナント向けの「特別家賃支援給付金」について、わかりやすく解説します。

対象者:「住居確保給付金=個人」「特別家賃支援給付金=テナント」

家賃支援制度
(画像=H_Ko/stock.adobe.com)

端的に言えば、ここで紹介する給付金はどちらも「家賃を支払うのが厳しい状況にあるとき」に使える制度です。「住居確保給付金」は賃貸住宅の入居者、「特別家賃支援給付金」はテナントが対象です。注意したいのは、「住居確保給付金」は過去の滞納家賃には使えないことです。「今後家賃の支払いが厳しそうだ」というときに、スピーディーに申請することが大切です。

入居者向けの「住居確保給付金」はコロナ以前からあった制度で、離職・廃業から2年以内の住居を失うおそれのある人の家賃相当額を家主に直接支給するというものでした。コロナ後は対象者が広がり、「休業等により収入が減少し、離職・廃業と同程度の状況にある方」も加わっています。

テナント向けの「特別家賃支援給付金」はコロナ後に新設された制度で、2020年度第2次補正予算で成立(6月12日)しました。テナントの中でも中小企業や個人事業主などが対象で、2020年5~12月の売上が以下のどちらかの状態にあるケースが対象となります。

・前年同月比5割以上減少
・連続する3ヵ月で前年同期比3割以上減少

支給期間と額:住居確保給付金は賃料の最長9カ月分、特別家賃支援給付金は賃料の3分の2×6ヵ月分

「住居確保給付金」の支給上限額は、市区町村や世帯の人数によって決まっています。この規定額が原則3ヵ月、最長9ヵ月支給されます。東京23区の上限額は、以下のとおりです。

世帯の人数1人2人3人
支給上限額の月額目安5万3,700円6万4,000円6万9,800円

「特別家賃支援給付金」の支給額は、テナント賃料の3分の2×6ヵ月です。上限額があり、法人は月50万円(6ヵ月で300万円)まで、個人事業主は月に25万円(同150万円)までです。 法人が月額75万円の賃料を支払っているなら、給付金はその3分の2の50万円です。総支給額は50万円×6ヵ月=300万円になります。

複数の店舗などを展開していて前述の上限額を超えている場合、超過分については「テナント賃料の3分の1×6ヵ月」が支給されます。その場合の給付上限額は、法人は月100万円(6ヵ月で600万円)、個人事業主は50万円(同300万円)です。

法人個人事業主
単独テナント上限額300万円上限額150万円
複数テナント上限額600万円上限額300万円

住居確保給付金の手続き:申請手続きは比較的簡単

住居確保給付金の申請手続きは自治体が直営または委託している「生活困窮者自立相談支援機関」を通して行われます。申請に必要な書類はいずれも申請者の手元にあることの多い基本的なものが中心です。

具体的には、本人確認書類(運転免許証やパスポートなど)、申請者や世帯の人の給与明細や年金などの証明書、職に就いていない人は離職票や廃業届など、雇用されている人は勤務状況がわかるシフト表などです。

特別家賃支援給付金の手続き:専用サイトで確定申告書や賃貸借契約書を提出

特別家賃支援給付金の申請手続きは、中小企業や個人事業主に広く利用されている「持続化給付金」の手続きに似ています。専用サイトで基本情報、銀行口座、令和元年の確定申告書、売上の落ちた対象期間の売上台帳の写しなどの情報を入力・アップロードします。

加えて、賃貸借契約書や家賃を支払っていることを確認できる領収書の写しも必要です。申請書類が多いため、手続きは少々煩雑です。

どちらの給付金においても国はスピーディーな支給を目指しているようです。ただし「特別家賃支援給付金」については全国の飲食店などからの申し込みが殺到する可能性が高いため、できる限り早く申請することをおすすめします。とはいえ、添付書類に不備があると再申請となってしまうため、内容をしっかり確認した上で申請するようにしてください。(提供:Wealth Lounge

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