家族が亡くなって残された人が頭を悩ませることの一つに遺品整理があります。

物を所有していた本人がすでに亡くなっているため、何が必要で何が必要でないかの判断が難しく、整理がなかなか進みません。「必要なものを誤って捨ててしまった」とか、「悪徳業者とトラブルになった」という声も聞かれます。

故人が大量に物をため込んでいた場合や部屋を明け渡す必要がある場合は、遺品整理はより困難になります。

ここでは、故人の遺品整理や片付けを悔いなくスムーズに行うために、遺品整理を始めるタイミングや整理の手順をご紹介します。遺品整理がスムーズにできれば、故人をゆっくり偲ぶことができるでしょう。

遺品整理・片付けを悔いなくスムーズに行うには
(画像=税理士が教える相続税の知識)

1.遺品整理を始めるタイミング

遺品整理は、目の前の物一つ一つについて必要か必要でないかを判断するため、精神的・肉体的な負担が大きくなります。家族を亡くした悲しみが癒えないままでは、遺品整理どころではないでしょう。

冷静な判断ができないで誤って大切なものを捨ててしまったり、反対にほとんど物が捨てられず整理にならなかったりするかもしれません。

遺品整理を始めるタイミングは、遺族の気持ちが落ち着いてからでかまいません。しかし、財産の整理は早めに取りかかるようにしましょう。

財産の整理を急ぐのは、相続税の申告・納税の期限が死亡の10か月後と定められているためです。10か月もあれば余裕があるようにも思えますが、財産を調べて申告書を作成するまで数か月かかることもあります。

遺産の総額が相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下で相続税がかからなければ、財産の整理は当面後回しにしても大丈夫です。しかし、そもそも財産がいくらあるかがわからなければその判断もできません。

財産の整理ができれば、次に故人の身の回りのものを整理します。

身の回りのものの整理に期限はないので、気持ちが落ち着くのを待ってからでもかまいません。ただし、故人が賃貸住宅に一人で住んでいて部屋を明け渡す場合は、できるだけ早く取りかかる必要があります。

遺品整理・片付けを悔いなくスムーズに行うには
(画像=税理士が教える相続税の知識)

2.故人のお金や財産にかかわるものを探す

遺品整理では、最初に故人の遺品からお金や財産にかかわるものを探し出します。

故人が遺言や財産目録を作っていれば、それをもとに通帳や書類を探します。遺言や財産目録がなければ、自宅をくまなく探す必要があります。

お金や財産にかかわるものとしては、次のようなものを探すとよいでしょう。

遺品整理・片付けを悔いなくスムーズに行うには
(画像=税理士が教える相続税の知識)

お金や財産にかかわるものを見つけたら、解約または相続の手続きをします。

3.故人の身の回りのものを整理する

故人のお金や財産にかかわるものを探すことができれば、次に身の回りのものを整理します。

はじめにお伝えしたように、故人が賃貸住宅に一人で住んでいて部屋を明け渡す必要がある場合は、できるだけ早く取りかかる必要があります。

3-1.思い出の品も迷ったら捨てる

故人の身の回りのものを整理するときに困るのが、何が必要で何が必要でないかの判断です。

慌てて価値のあるものや思い出深いものまで捨ててしまえば、後悔することになります。時間が許せばゆっくり整理してもよいでしょう。

ただし、いろいろなものを大切にするあまり、物をほとんど捨てられなければ遺品整理にはなりません。思い出深いものでも「捨てるかどうか迷ったものは捨てる」という割り切りも必要でしょう。

いらなくなった遺品は捨てるだけでなく、引き取ってもらうこともできます。

書籍や音楽ソフト、電化製品などはリサイクルショップへ、ブランド品や趣味の品など価値がありそうなものは専門店に持ちこむなどします。ネットオークションやフリマアプリなどを利用して個人どうしで売却することもできます。

遺品整理を始めるときは、親族にもひと言伝えておくことをおすすめします。一つのものでも、親族によって思い入れが違うこともあり、整理する人だけの考えで必要か不要かの判断をしてしまうとトラブルになる場合があります。

3-2.賃貸住宅は速やかに退去を

故人が賃貸住宅に一人で住んでいた場合は、できるだけ速やかに退去しなければなりません。

心の整理ができなければ遺品整理に取りかかることも難しいですが、何か月も続けて部屋を借りていては支払う家賃もばかになりません。どこかで割り切って遺品整理に取りかかることも必要になってきます。

亡くなったその月か翌月、あるいは四十九日法要が終わる頃には部屋を明け渡すように遺品整理を進めていくとよいでしょう。

3-3.持ち家なら慌てなくてもよい

故人が持ち家に住んでいた場合、あるいは賃貸住宅でも家族が残るのであれば、慌てて遺品整理をする必要はありません。気持ちが落ち着いてからゆっくりすればよいでしょう。

親族や生前親しかった人に遺品を贈る形見分けは、一般には四十九日法要のときにすると言われていますが、こだわらなくてもよいでしょう。遺産相続とは違い、形見分けは特に急ぐ必要はありません。

4.遺品整理業者に依頼することも選択肢に

遺品整理や片付けは遺族がするものと思っている人も多いかもしれませんが、遺品整理業者に依頼することも一つの方法です。

業者に任せたからといって、故人に悪いとか不誠実ということにはなりません。プロに任せて大切な遺品を確実に受け継ぐことができれば、故人もきっと安心するでしょう。

特に次のような場合は、遺品整理業者に依頼することをおすすめします。

  • 賃貸住宅の明け渡しが迫っている場合
  • 故人の自宅が遠方にある場合
  • 故人の残した物が多くゴミ屋敷になっていた場合
  • 遺族が高齢で動きづらい場合
  • 死亡の発見が遅れて遺体が傷んだいわゆる孤独死の場合

なかでも、死亡の発見が遅れて遺体が傷んでしまった場合は特殊清掃が必要で、専門業者に依頼することが不可欠です。

遺品整理を手がける業者はさまざまな業態から参入していて、サービス内容も千差万別です。信頼できる遺品整理業者を選ぶ基準としては、「遺品整理士」が在籍しているかどうかが目安になるでしょう。

遺品整理士は、遺品の取り扱いや遺品整理に関する法規制を習得しているスペシャリストです。特に優れた業者は優良事業所に認定されています。業界をあげて健全化に努めているため、高額請求や不法投棄の心配も少ないでしょう。

5.まとめ

遺品整理は、家族を亡くした悲しみが癒えないまま多くの遺品を片付けなければならないため、心身ともに負担が大きくなります。

できれば、気持ちが落ち着いてから取りかかることをおすすめしますが、相続税の申告の可能性があるため、財産にかかわるものだけは早めに整理しておきましょう。

遺品整理を業者に依頼するときは、料金だけで判断するのではなく、信頼できる業者を探すようにしましょう。(提供:税理士が教える相続税の知識