要旨

● 5月失業率は2.9%と+0.3ポイントの上昇。5月の緊急事態宣言明けとともに職探しを始める人が増え、これが失業者として顕在化した形だ。雇用者数は4月▲105万人の減少(前月差)に続いて、5月も▲27万人と減少。非正規中心に減少している。

● 一方で、自営業主・家族従業者は5月に前月から増加。仕事を失った人がギグワークなどのフリーランス形態で働くようになったことが影響しているものとみられる。これは5月失業率の悪化に一定の歯止めをかけている。

● 4月に急増した休業者数は5月も423万人と高止まり。休業者は将来的に失業に転じる可能性の高い「失業予備軍」に当たる人も多いと考えられる。休業者を失業者にカウントした値((失業者+休業者)/労働力人口)は、5月に10.2%に上り、平時から大きく上方乖離した状態が続いている。

● 緊急事態宣言は明けたものの、多くの業種では経済活動をコロナ前に戻せているわけではない。海外需要の落ち込みから製造業の生産活動への影響が厳しくなっていることも逆風だ。今後も失業者の増加、労働環境の悪化が続く可能性が高いだろう。

数字
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失業率は3か月連続の悪化

本日公表された労働力調査によれば、5月の完全失業率は2.9%と4月から0.3ポイント悪化した。これで3か月連続の悪化になる。労働力調査の調査時期は月末1週間だ。緊急事態宣言解除の遅れた首都圏と北海道でも5月25日には宣言解除がなされている。にもかかわらず、雇用環境の悪化に歯止めがかかる様子はみられない。

季節調整値で内容をみていくと、完全失業者数は197万人と4月から19万人増加。それに概ね対応する形で労働力人口が+21万人増加した。これまで職探しをしておらず、失業者とみなされず非労働力人口としてカウントされていた数が、失業者として顕在化した形だ。緊急事態宣言が解除され、求職活動を再開した人が増えたことが影響したとみられる。

全世代型社会保障改革・第2弾のポイント整理
(画像=第一生命経済研究所)

仕事を失った人がフリーランスなどに転換か

雇用者数は4月▲105万人の減少(前月差)に続いて、5月も▲27万人と減少が続いた。業種別にみると、宿泊業・飲食サービス業のほか生活関連サービス業・娯楽業、卸小売業、製造業などが特に弱い。雇用形態別に確認すると、正規雇用が前年同月差▲1万人、非正規が同▲61万人と非正規の減少幅が大きくなっている。

5月の結果の特徴として、雇用者数が減少しているにも関わらず就業者数は前月差+4万人の増加となったことが挙げられる。これは、雇用でない「自営業主・家族従業者」が増えたためである。公表されている季節調整の差分をとって算出した自営業主・家族従業者の季節調整値は、5月に+31万人増加している。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、仕事を失った人がギグワークなどのフリーランス形態で働くようになったことが影響していると考えられる。これは5月の失業率悪化に一定の歯止めをかけている。

休業者数は高止まり

5月は自営業者の増加が幾分下支えに効いたものの、失業者数の増加は今後も続くだろう。5月の休業者数(原数値)は女性を中心に423万人おり、前年同月から274万人の増加となった。増加幅は4月(同+420万人)から縮小したが、依然として高止まっている。

休業者数は就業者数の内数であり、「仕事を持ちながら調査週間中に少しも仕事をしなかった者のうち、給料・賃金の支払いを受けている者、又は受けることになっている者」(雇用者の場合)を指す。休業者数は就業者数の内数であり、休業しても失業にはカウントされないため、失業率の数字には影響は及ばない。しかし、平時よりも賃金が減っている人が多いと考えられるほか、仕事が無いためにやむを得ず休業しており、将来的に失業に転じる可能性の高い「失業予備軍」に当たる人も多いと考えられる。休業者を失業者にカウントした値((失業者+休業者)/労働力人口)は、5月に10.2%に上り、平時から大きく上方乖離した状態が続いている(資料2)。

緊急事態宣言は明けたものの、多くの業種では経済活動をコロナ前に戻せているわけではない。海外需要の落ち込みから製造業の生産活動への影響が厳しくなっていることも逆風だ。今後も失業者の増加、労働環境の悪化が続く可能性が高いだろう。(提供:第一生命経済研究所

全世代型社会保障改革・第2弾のポイント整理
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第一生命経済研究所 調査研究本部 経済調査部
副主任エコノミスト 星野 卓也