教育資金贈与とは、0歳~30歳までの直系卑属(子・孫・ひ孫)に、直系尊属(父母・祖父母・曾祖父母)が信託などによって教育資金を一括贈与することを言います。

受遺者1人あたり最大1,500万円(習い事などは最大500万円)まで非課税となるため、相続税対策としても注目を集めています。

教育資金贈与は2021年3月31日まで2年延長が決定しましたが、2019年4月1日以降は「一部の教育資金贈与は相続税3年内加算の対象になる」と税制改正されました。

この仕組みを知らずに相続税対策として教育資金贈与をした場合、相続税の課税対象になる可能性があるので、課税される対象になる条件などを詳しく知っておきましょう。

税理士が教える相続税の知識
(画像=税理士が教える相続税の知識)

1.教育資金贈与の一部が相続税3年内加算の対象に税制改正

教育資金贈与は当初2019年3月31日で終了予定でしたが、2年延長が決定され、2020年3月31日終了予定となりました。

同時に税制改正も行われ、「2019年4月1日以降の教育資金贈与の一部に相続税が課せられる」という項目が追加されました。

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(画像=国税庁公式パンフレット「祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし(令和元年5月)」)

原文が少し難しいのですが、分かりやすく言うと「教育資金贈与から3年以内に贈与者死亡により相続が発生し、一定の条件を満たさない場合、管理残高は相続税の課税対象になる」です。

教育資金贈与の相続税3年内加算について、詳しくはこの記事内で解説していきます。

今から教育資金贈与をしても、確実に相続税の課税対象とならない受遺者の人物の条件をまとめました。

というのも、裏を返せば「相続発生時に条件さえクリアしていれば相続税3年内加算の対象にはならない」ためです。

これから教育資金贈与を相続税対策に利用しようかと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

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(画像=税理士が教える相続税の知識)

また、2019年4月1日以降の教育資金贈与に関しては、「受遺者の所得1,000万円以下」という所得制限も追加されています。

1-1.教育資金贈与から3年以内に相続発生すれば相続税3年内加算

教育資金贈与から3年以内に相続が発生すれば、管理残高が相続税3年内加算の対象になる…。

言葉だけでは少し分かりづらいので、イラストで見てみましょう。

税理士が教える相続税の知識
(画像=税理士が教える相続税の知識)

このモデルケースの場合…
(A)相続税の課税対象にはならない
(B)管理残高が相続税の課税対象となる

一般的に知られている、「生前贈与加算(相続開始前3年以内の贈与分は相続対象に加算)」と同じ対応となりますね。

これは教育資金贈与による相続税対策の駆け込み需要の防止が目的ですが、条件を満たせば(B)教育資金贈与契約から3年以内に相続が発生した場合でも非課税となります。

2.教育資金贈与が3年内加算の対象でも、条件をクリアすれば非課税

「教育資金贈与から3年以内に贈与者の相続が発生した場合」は、教育資金贈与の残高が相続税3年以内加算の対象となります。

ただし以下の条件を1つでも満たしていれば、相続税3年内加算の対象にはなりません。

教育資金贈与残高が非課税になる条件
贈与者の死亡日に…
1. 受遺者が23歳未満
2. 受遺者が学校などに在学している場合
3. 受遺者が教育訓練給付金の支給対象となる職業訓練を受講している場合

例えば、教育資金贈与から3年以内に、贈与者(祖父)の相続が発生したとしましょう。

贈与者(祖父)の死亡日に、受遺者(孫)が23歳未満であれば相続税3年内加算にはなりません。

逆に、受遺者(孫)が24歳会社員で職業訓練なども受講していない場合、教育資金贈与の管理残高は相続税の課税対象となります。

2-1.教育資金贈与の「管理残高」が相続税3年内加算の対象

教育資金贈与開始から3年以内に贈与者の相続が発生した場合、教育資金贈与した分の「管理残高(使い切れていない金額)」が相続税の課税対象になります。

教育資金贈与の残高を含む遺産総額が、相続税の基礎控除を超えていれば相続税申告を行う義務があります。

あるモデルケースを例に挙げて、シミュレーションしてみましょう。

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(画像=税理士が教える相続税の知識)

このモデルケースの場合、教育資金贈与の残高1,000万円が相続税3年内加算の対象となり、相続税の課税対象は9,500万円となります。

教育資金贈与の管理残高については、教育資金管理契約を締結している金融機関に問い合わせてください。

CHECK
相続税法第18条では、相続人以外の人への遺贈は「相続税が2割加算」されると定められています。
ここでいう「相続人以外の人(受遺者)」とは、子供が相続人となる場合の孫・ひ孫・子の配偶者・友人・知人などですね。
ただし教育資金贈与では、管理残高が相続税の課税対象となっても、相続税の2割加算は適用されません。

3.教育資金贈与の非課税制度の対象項目やデメリットを解説

教育資金贈与は一部が相続税3年内加算となりますが、相続税対策としてはまだまだ有効です。

国税庁の公式ホームページによると、教育資金贈与の非課税制度の対象は以下の2種類があります。

①学校等に直接支払われる入学金、授業料その他の金銭で一定のもの
②学校等以外の者に、教育に関する役務の提供の対価として直接支払われる金銭その他の教育を受けるために直接支払われる金銭で一定のもの
【引用:国税庁「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税に関するQ&A(令和元年8月)」】

分かりやすく言うと、「①学校などに支払われる資金(最大1,500万円)」と、「②習い事などに支払われる資金(最大500万円)」が非課税になります。

3-1.学校などに支払われる教育資金とは

学校などに支払われる教育資金(最大1,500万円)

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(画像=税理士が教える相続税の知識)

例えば、小学校で利用するランドセルの購入費用は、どうなるのでしょうか?

学校からの書面が出ていてそれに基づいて購入した場合、学校などに支払われる教育資金となるため非課税になります。

学校などに支払われる教育資金の中には自動車学校なども含まれますが、都道府県の認可の有無によって「学校など」なのか「習い事など」なのか対応が異なるので注意してください。

3-2.習い事などに支払われる教育資金とは

習い事などに支払われる教育資金(最大500万円)

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(画像=税理士が教える相続税の知識)

例えば、子供のスイミングスクールの月謝は対象ですが、スイミングスクールで使用する水着の取り扱いは異なります。

指導者を通して水着を購入すれば教育資金の対象となりますが、個人で購入する水着は教育資金の対象とはなりません。

そして2019年の税制改正により、23歳以上の受遺者の「②習い事などに支払われる教育資金」は非課税の対象外となりました。

ただし教育訓練給付対象となる教育訓練の受講費は、23歳以上でも非課税の対象となります。

3-3.教育資金贈与の非課税制度はデメリットもある

教育資金贈与の非課税制度は相続税対策として活用できるものの、「管理手続きが大変」といったデメリットがあります。

というのも、教育資金贈与は金融機関と信託などの契約が必須で、さらに教育資金を使うごとに領収書などを毎年提出しなければなりません。

そして先ほど解説したのでお気づきの方も多いかと思いますが、教育資金として認められるかの判定が難しく、お金を引き出すのに細かいルールを把握しておく必要があります。

そもそも教育資金は、信託などを利用した一括贈与による非課税制度を利用せず、都度贈与をしても贈与税はかかりません。

4.教育資金贈与は一部が相続3年内加算だけど、相続税対策としては有効

教育資金贈与は一部が相続税3年内加算の対象となりますが、逆に言えば教育資金贈与から3年以上経過すれば相続税はかかりません。

2019年4月1日以降は「教育資金贈与から3年以内に相続が発生すれば、残高に対して相続税がかかる」と法改正されたものの、条件さえクリアすれば相続税の節税効果はあります。

記事の冒頭でも紹介しましたが、あなたがこれから教育資金贈与を考えていて、受遺者が以下の条件に当てはまるなら教育資金贈与おすすめと言えるでしょう。

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(画像=税理士が教える相続税の知識)

教育資金贈与を相続税対策として利用するには、複雑な手続きなどのデメリットもあります。

本当にあなたが教育資金贈与を利用すれば相続税対策として有効なのか、まずは専門家に相談をしましょう。(提供:税理士が教える相続税の知識