ファイナンシャル・プランナー(FP)やアドバイザー(FA)に今後必須のプラスα要素として、「ファイナンシャル・セラピー(Financial Therapy)」という分野が米国で注目されている。
ライフプランニングを含むお金のアドバイスに加え、心理療法を用いてお金に関するストレスや悪習慣の改善を測ることで、生きていく上で欠かせない「お金」との上手な付き合い方をサポートするサービスだ。認定を受けたファイナンシャル・セラピスト(FT)や養成講座も存在する。
「お金の悩み」で精神的に病むリスクが3倍高くなる?
「お金で本当の幸せは買えない」というが、必要とするお金がないために悩んだり、仕事や人間関係が上手くいかなかったりすることもある。実際、お金は多くの人にとって「人生における最大の心配事」の一つであり、家族あるいは夫婦間のもめ事の最大の原因であることが、複数の調査結果で明らかになっている。
ストレスや心配事が慢性化すると、いずれ睡眠不足や自信喪失、食欲減退、集中力低下、被害妄想といった身体的影響が現れる。
合計約3.4万人を対象とした65件の研究結果のメタアナリシス(複数の研究結果やデータを統合分析したもの)からは、お金の問題を抱えている人はメンタルヘルスを損なうリスクが、そうでない人より3倍高いことが示唆されている。また、うつ病やアルコール依存症、薬物依存症、自殺のリスクも高くなるという。
「負のサイクル」から抜けだすために重要な要素とは?
お金の悩みと一言にいっても、その内容は失業や収入減による金欠や借金、浪費、教育費や老後資金の懸念、相続問題など多岐にわたる。お金に困っている人は「お金さえあればすべて解決する」と考える傾向があるが、お金がある人にはそれがゆえの心配事がある。つまり所得や資産に関係なく、生きている限りお金の心配は尽きないということだ。
そう考えると「お金の悩みをなくそう」と躍起になる代わりに、「どのように問題と向き合うか」に焦点を置くことで、お金と上手に、そして健全に付き合えるのではないだろうか。
「お金の悩みは家族や友人に相談する」という人が多いが、身近な人間に相談すると感情や甘えが先走り、「とりあえずお金を借りて借金を払う」など、一時的な解決法に甘んじる傾向が強い。
しかしこれでは借金の相手が置き換えられるだけで、何の解決にもならない。特に借金の原因が浪費やギャンブルなど悪習慣である場合、問題の原因を根本から取り除かない限り、再び借金を重ねることになるだろう。こうした悪習慣は、過剰なストレスやコンプレックス、自尊心、孤独感、焦燥感など、精神的なものに起因する場合が多い。
負のサイクルから抜けだすために本当に必要なのは、根本的な問題の解決に役立つ建設的なアドバイスやサポートだ。この役割を果たしてくれるのが、FTである。