8月13日、東京株式市場には朝方から買い注文が殺到、日経平均株価は約2カ月ぶりに心理的節目の2万3000円台を奪回した。

例年、この時期は売買代金の約7割を占める外国人投資家がサマーバケーション入りしていることもあってマーケットのボリュームが激減、「夏枯れ相場」とも揶揄されている。3月以降、日経平均は実体経済とはかけ離れたかたちで上昇しているが、個人投資家は本当に儲かっているのだろうか?

儲かっている投資家、損をしている投資家に話を聞いた。(ZUU online magazine編集長 三枝裕介)

熟練の投資家ほど、売りから入って損失を出している

「新型コロナの影響で企業業績は落ち込み、日米の経済指標では過去最大の落ち込みを見せているものもあります。にもかかわらず、株価は上昇し、実体経済とかけ離れるばかり。現在の株価水準は間違っていると思い、日経平均先物でショート(売り)し続けているのですが、担がれる一方です。こんな相場は初めてです」とは、兜町の自称相場師。

一方で、春先のコロナショックで大きく資産を増やしたのは、資産数十億円を運用する投資家の山下重治氏(仮名)。

「最初は売りで入ったんですけど、なかなか下げずに損切りばかりしていました。途中から、考え方を180度転換して、下げたら買いを続けた結果、過去に例を見ないほど、儲かりました。世界的な金融緩和と財政支出で行き場を失ったマネーが株式市場に流入しているようです。まだまだ株式市場は上昇するのではないでしょうか」

実は、日経平均先物のショートで損失を出している自称相場師は、投資歴25年。上昇相場はもちろん、リーマンショックなどの世界的株安のときも相場一本で稼いできた手練れだ。3月のコロナショック以降の上昇相場では、経験のある投資家に限って、相場の下落を予想し、先物のショートや信用取引を使ったカラ売りで大きな損失を出しているという。

ハイテクやITだけではなく、オールドエコノミーも水準訂正へ

工場
(画像=PIXTA)

このコロナ禍で米国株式市場では、まずはハイテクやIT企業が中心のナスダック総合指数が史上最高値を更新、足元では運輸や銀行セクターなどのオールドエコノミーが中心のNYダウに投資家の資金が流入している。日本株市場でも銀行などバリュー(割安)と言われる銘柄群の水準訂正が始まったばかりだ。

ここで実体経済とカイ離して株式市場が上昇している理由を考えてみたい。まずは、前述の投資家が挙げた金融緩和と財政支出による、いわゆる「過剰流動性相場」。米国では11月に大統領選挙が控えているが、トランプ大統領が再選を果たすためには、経済および株価の安定が不可欠。そのためには、今後もさまざまな経済対策で株価を支えるはずだ。